東京の女子高生が遊びに行く街といえば渋谷と原宿がこれまでメインでしたが、そこに日本最大のコリアタウン新大久保が加わり、休みの日には女子高生を始めとした若い女性が街に溢れるようになりました。
この背景にあるのは第3次韓流ブーム。
ヨン様で中高年女性に人気を博した第1次ブーム、KARAなどのK-POPによる第2次ブームとこれまでに韓流ブームは幾度となく訪れていますが、今回の第3次ブームがこれまでとは異なるのはSNSによる「ビジュアルマーケティング」が引き金となっている点です。
第3次韓流ブームの下支えとなっている日本の若い女性たちは、韓国文化を深く理解しているわけでも、韓国語を話せるわけでもないにも関わらず、彼女たちが韓国に魅了されるのは言語の壁を超えたビジュアルマーケティングに他なりません。
以前、弊社の缶バッジを使って活動されている大阪在住のデザイナー、キタイシンイチロウさんにお話を伺った際に、缶バッジは単なるノベルティではなく、ビジュアルコミュニケーションツールであるとお話を伺いました。
缶バッジは誰でも簡単に作ることができ、なおかつ基本的にどれも同じような形をしているため、「見せ方」が何よりも重要なノベルティの一つだとキタイさんは指摘します。
そこで今回は、日本の若い女性を虜にする韓流ブームを紐解き、ビジュアルコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
そもそも、なぜ日本の若者が韓国に強い関心を示すのか。その背景にあるのは、韓国から日本に流入してくるプロダクトが徹底的に「SNS映え」を意識して設計されているからに他なりません。
例えば、今では定番となった「チーズハットク」と呼ばれる伸びるチーズが入ったホットドックは、チーズを伸ばして食べる様子を若者たちが自撮りして、それをSNS上にアップすることによって爆発的に流行しました。
食べ物だけではなく、女性向けのコスメやアパレル商品なども徹底したSNS戦略が行われ、いかに見せ方に徹底したこだわりを見せているのが韓国製プロダクトの特徴です。
商品の見せ方よりも商品の「質」にこだわる日本、その一方で、商品の質も大切だけれどそれ以上に「見せ方」にこだわる韓国。その違いは一体どこから生まれたのでしょうか。
実は韓国がここまで徹底的にビジュアルにこだわるのは、韓国ではどこのブランドも東大門市場と呼ばれる市場から商品を仕入れており、商品単体にはそれほど差がないため、見せ方で差別化を図る取り組みが発展したのでした。
それに加えて、韓国がソーシャルメディア大国だったこともビジュアルに力を入れた背景の一つとして挙げられます。
韓国は、国策によってSNSが世界的に流行する10年も前から国産のSNSサービスに触れてきた経緯があり、2000年代の中盤には「インフルエンサービジネス」や「インフルエンサーマーケティング」がすでに存在していました。
その結果、「SNS上で誰かの目に触れる」ことを念頭に商品作りをしなければ競争に負けてしまうという真理が働き、韓国では世界に先駆けて「SNS映え」に対するノウハウが高度に蓄積され、それが現在の韓流ブームに繋がったというわけなのです。
実際、インスタグラムのハッシュタグを覗いてみると「韓国」とつくものは総じて人気が高く、「#韓国ファッション」「#韓国コスメ」「#オルチャン」といった韓国に関するタグは数百万件にものぼります。
このタグから見えてくるのは若者の検索方法の変化です。
これまでは飲食店や美容室を調べる際には、Googleで検索をすることが当たり前でした。しかし今では若い世代を中心に、インスタグラムの検索機能を使って、文字情報ではなく「ビジュアル情報」を元に目当ての店を探すことが当たり前になりつつあります。
そんな時代において、今や情報は「読むもの」から、「見るもの」へと確実に変化しており、そうした時代に適応した韓国製プロダクトが日本の若い世代から圧倒的な支持を集めるのは当然のことなのかもしれません。
現在社会において、私たちが1日に得る情報は、江戸時代の人が一生かかって得ることができる情報量に匹敵すると言われています。
そんな中でお客様が冗長なメッセージなど聞いている余裕などありません。テレビCMの法則にあるように、お客様が黙って売り手側の話を聞ける許容範囲は15秒までとされており、SNS時代にはさらにこの時間が短くなると考えられています。
実際、フェイスブックが独自に行った調査によれば、私たちがコンテンツを見極める際に使う時間はたったの1.7秒で、不要と判断されたコンテンツは1.7秒後にはスワイプされ、画面から消えていくことになるのです。
日本でよく言われる「一度使ってもらえれば(話を聞いてもらえれば)分かってもらえるはず」は、ユーザーの可処分時間の奪い合いの時代においては、もう通用しなくなってきているのかもしれません。
そんな時代において、目に飛び込んできた瞬間にユーザーの心を掴む「ビジュアルコミュニケーション」の重要性はこれまで以上に高まることは間違いありません。
リアルの場だけに止まらず、SNS上での活用も進む缶バッジ。今後の缶バッジ運用の参考になれば幸いです。