2023年、世界経済フォーラムが、男女平等の度合いを数値化したレポートによれば、日本は国別で146カ国中125位と過去最低の結果となりました。
日本の男女平等は先進国の中では当然最下位ですが、東アジア・太平洋地域のエリアでも、フィジー、ミャンマーと並ぶ最下位に位置し、現在の進捗率では、この地域の男女平等が達成されるのには、189年かかると報告されています。
もちろん、男女平等に対して、政府や企業が掲げる大きな目標も大切です。
しかし、本当の意味で、どれだけ男女平等を達成できるかは、もっとミクロの小さい部分で、個人がどれだけアクションを起こせるかという部分なのでしょう。
小さな部分で、個人がどれだけアクションを起こせるか。
一般社団法人「痴漢抑止活動センター」では、電車やバス内で痴漢加害者から身を守るツールとして、誰もが付けやすい缶バッジを作成しています。
また、この一般社団法人では、毎年、学生を対象に缶バッジのデザインコンテストを開始し、缶バッジのデザインを通じて、痴漢犯罪について考える機会を提供しています。
実際、このコンテストの参加者の3〜4割は男性なのだと言い、このバッジデザインコンテストを通じて、保護者をはじめとする大人達にも、痴漢に対する問題意識が広がっていっているのだと言います。
加えて、「静岡県作業所連合会・わ 浜松地区会」では、3月8日の「国際女性デー」を周知するために、シンボルフラワーのミモザをデザインした缶バッジを販売しています。
イタリアでは、男性が家族や同僚に対して、日頃の感謝を伝えるために、ミモザの花を贈る文化があります。
日本では、コロナ禍でリモートワークが普及して、仕事がメンバーシップ型の組織文化からジョブ型の組織文化にシフトし、仕事の中での男女平等が進むと考えられていましたが、現実的にはあまり大きな変化はありませんでした。
マッキンゼーの調査によれば、男女の多様性がある企業は、全米の業界の平均を15%上回る業績を上げているのだと言います。
男女平等を訴える缶バッジを作ったり、付けたりすることは、本気で物事にコミットするという決意の現れのようなものなのでしょう。
ただ何となく「男女平等って大事だよねと思っている人」と、「本気でやるとコミットしている人」とでは、そこに生まれるエネルギーのようなものが全然違います。
海外では、その国のリーダーが⚪️⚪️を⚪️⚪️までに実現することを「declare(表明した)」という形で、メディアがニュースを伝えます。
そういった意味での缶バッジは、本気のエネルギーを生むためのツールになっていくのかもしれません。
2030年には男性よりも女性の方が豊かになる。
世界的に見ても、女性は男性の2倍働いて、ようやく男性の半分の価値を認められると言われるように、社会的に女性がまだまだ弱い立場であることは間違いありません。
2030年には、男性よりも女性の方が豊かになるのではないかという予測もあります。
ケンブリッジ大学の学部長を務めるマウロ・ギレン氏が書いた「2030」によれば、2000年時点では、世界の富を女性が持つ割合は15%程度だったのに対し、2030年にはこの割合が55%になるのだと言います。
その理由は、女性の方が男性よりも寿命が長く、男性から相続を受ける確率が高いからなのだと言います。
富が男性から女性に移ることで、企業も女性の消費のニーズに答えられるように変化していく必要があり、当然、企業の中で働く人の比率も女性が増えていくことでしょう。
欧州中央銀行総裁であるクリスティーヌ・ラガルドが「リーマン・ブラザーズではなく、リーマン・シスターズであったならば、金融危機は起こらなかったかもしれない。」と述べたように、男性よりも女性の方が、長期で物事を考えることを得意としています。
投資、教育、食などは、男性よりも、女性の方が興味を持っている業界であり、世の中での女性の地位が上がることによって、これまで短期的利益を求めるがあまり、光が当たってこなかった業界にもスポットライトが当たることが期待されます。
また、世界のある価値観の調査するレポートによれば、「戦争が起きた時に国のために戦いますか」という問いで、「はい」と答えた割合は、日本は15%だったのに対し、男女平等のランキングで世界3位のフィンランドでは、その割合が80%でした。
もちろん、国によって様々な歴史的背景があるため、日本とフィンランドを単純には比較できません。
しかし、男女が平等に働けて暮らせるという環境があるからこそ、いま日本人が必死で追い求めている「愛国心」や「幸福度」などと言ったものが生まれてくるのでしょう。
人口の半分を占める女性の立場が改善されないままで、その人の幸福度や愛国心などが上がっていくわけがありません。
結局、国や大企業が言う男女平等とは、あくまで一つのムーブメントに過ぎず、本当の意味で、世の中を良い方向に持っていこうと思えば、一人一人がどんなに小さな行動でもいいから、動き出すしかないのでしょう。
ビジネスにしても、机の上で勉強しているのと、自分のお金を使って、実際にやってみるのとでは学べることが全然違います。
これと同じように、世の中の動きに合わせてただ「男女の平等って大事だよね」と言っている人と、実際に何かをdeclare(表明)し、小さな行動に繋げている人では、何か大きなチャンスを手に入れられる可能性が大きく変わってくることでしょう。
コミュニケーションや目立つ行動が苦手であっても、缶バッジを身に付けることが、立派なdeclareになっていきます。
まずは何かをdeclareすることが、行動を生み出す第一歩なのです。