スポーツの世界では、ビッグデータの普及によって、様々なデータを収集して分析し、選手のパフォーマンスを向上させるという試みが日々行われています。

特に、アメリカの大リーグなどでは、選手の状態やパフォーマンスはすべてテクノロジーによるデータで管理され、AIが最適な提案をしてくれるため、チームを指揮する監督は本当に必要なのかという存在意義が問われている部分もあるのです。

しかし、スポーツ界では、ビッグデータの普及とともに、もう一つ全く逆の概念が注目されています。

それは、スポーツの世界における「祈り」や「目に見えない精神的な力」の存在です。

選手自身が試合前にコート上で祈りを捧げたり、十字架を切ったりして自身の精神的な力を高める宗教的プラシーボ(信仰の力)と呼ばれるものもありますが、選手を応援するサポーターが選手やチームに捧げる祈りや目に見えない精神的な力も重要なことは間違いありません。

2023年8月に行われたバスケットボールW杯では、空席問題が話題になりました。

神社などに行くと、明らかに場の雰囲気が違うことが分かりますが、会場のサポーターの祈りや精神的な力は、その場の周波数を変化させ、選手に見えない力のようなものを与えていくのでしょう。

サッカーのJ2リーグに関して、様々な解説をしている「J2バスターズ」という集まりでは、サポーターが持つチームの缶バッジをお守りのようなものだと表現しました。

お守りとは、仮にその場にいなくても、精神的な世界と現実の世界を繋げる役割を果たしているのだろう。

見かけは全く同じでも、神主さんがお祓いしたお守りと、そうでないお守りでは全く別物であるのと同じように、応援するチームのことを思ってデザインした缶バッジにも見えない精神的な何かが宿っていくのでしょう。

ITやAIによって、様々なものが見える化されている今の時代だからこそ、目に見えない精神的なものが力を発揮していくのかもしれません。

自身の内部要因が85%の幸福度を決めていく。


奇跡、あの世、占い、そして、お守りなどといった精神的な世界を信じる人たちは高齢者よりも、若者に多い傾向にあるのだと言う。

ある調査によれば、外部要因に関する幸福度の違いは8〜15%しかないのだと言います。

つまりは、自分がお金持ちであろうとなかろうと、経済的に繁栄した国に住んでいようとそうでなかろうと、仕事のスキルが高かろうと低かろうと、幸福に関して決定的な影響を与えるのは、自身の内部要因だと言うことです。

誰かに感謝したり、精神的な祈りを捧げたり、常に楽観的な気持ちでいるなどといった要素が幸福の85%を占めてくるのでしょう。

確かに、外部要因が幸福に直結するのであれば、もっと幸せなお金持ちがたくさんいてもいいはずですし、世界第3位の経済大国である日本も、もっと幸福度が高くてもよいはずです。

昔の人々は、目に見えない気配、エネルギーなどを感じ取る力が強かったはずです。恐らく、祈りや精神的な繋がりを通じて、自然や宇宙の力を循環させることで、自身の心を調整することができたのでしょう。

5000年前の古代エジプトで、癒しのスペシャリストとして知られていたのは、宝石を研究していた人たちで、彼らは自然科学や天文学にも精通しており、「錬金術師(アルケミスト)」と呼ばれていました。

幸福を調査している研究者達が用いる指標に「Uインデックス」というものがあります。

Uインデックスとは、Unhappy(不幸)、Unpleasant(不快)、Undersirable(望ましくない)などといった幸せな時間よりも憂うつな気分の方が上回っている時間の量のことで、仕事、通勤、家事などを行っている時、不快な気分を感じている人が多いことでしょう。

逆に、神社で祈りを捧げている時、周りの観衆と一体感を感じている時、もしくは誰かのことを思って缶バッジなどの創作物をつくっている時などは、めったに不快感を感じることはありません。

つまり、幸福に近づくための第一歩は、このUインデックスを改善させるためにお金を使うということです。

満員電車の通勤に不快を感じているのであれば、職場の近くに引っ越したり、自転車を購入して、不快な通勤の時間を楽しい運動の時間に変えてみる。

周囲との精神的な繋がりを感じられないのであれば、地元のスポーツチームのシーズンチケットを買って、サポーター同士の交流を持ってみる。

もしくは、時々、家事代行サービスを使ってみるなど、Uインデックスを改善することにお金を使っていくことが幸福度をアップさせていきます。

過去50年、日本人のライフスタイルは大きく変化しましたが、幸福に直結する根本的な要因は、そこまで大きく変化していないのかもしれません。

リモートワーク、二拠点生活、地方移住。缶バッジは離れていても、繋がりが生み出せるツール


カリフォルニア大学の心臓学教授だったランドルフ・ビルド博士の調査によれば、祈りに距離は関係ないのだと言います。

心臓病の入院患者を対象に、離れた場所から祈ってもらうグループと祈ってもらわないグループに別けて実験を行ったところ「他人に祈られた患者」に祈ってもらったグループの方が、人工呼吸器・抗生物質・透析の使用率が低いことが分かりました。

日本のお守りとは、手に触れることができる祈りの精神的な物質の塊のようなものなのでしょう。

日本ではどこへ行っても多く選ばれるお守りは「家内安全」や「世界平和」などですが、仮に米国にお守りというものがあったとして、個人主義の強い米国では「家内安全」や「世界平和」のお守りが選ばれるかは少し疑問です。

そういった意味では、缶バッジを何か精神的な繋がりを生み出すお守りのように考えることができるのは、もしかすると日本特有のものなのかもしれません。

リモートワーク、二拠点生活、地方移住が当たり前の時代だからこそ、離れていても繋がりが生み出せるツールのようなものが必要なのでしょう。

缶バッジもそういった物の一つになっていくのではないでしょうか。