一般的に、英語を習得するために必要な時間は約2000〜3000時間と言われています。
しかし、日本の学校教育で英語を勉強する時間は1000時間にも満たないため、ある程度のレベルで英語を使いこなそうと思ったら、学校以外の部分で、継続的に勉強し続ける努力が必要になってきます。
中国である教育グループの理事長を務める李光字さんは「中国の子供たちは1年間英語を学ぶために204個の宇宙船を打ち上げることができる」とユーモアを交えて語っています。
これは、中国の小学生、中学生、高校生の一人あたりの英語学習費を計算すると、年間1637億元を消費しているのに対し、中国の有人宇宙船「神船」の打ち上げ費用が8億元で、英語を学ぶ費用の方が204倍も多いというところからきています。
グローバル企業の転職を支援しているヒューマン・グローバル・タレントの調査によれば、英語力による収入差は50代男性で1.5倍、50代女性で2.2倍とも言われます。
また、英語をネイティブ並みに話すことができれば、生涯年収は2億円ほど違うといった調査もあります。
東京都葛飾区にある修徳中学校・高等学校では、英語の勉強のモチベーションを上げるために、英検に合格した生徒全員に学校オリジナルの缶バッジをプレゼントしています。
恐らく、これからの時代は「英語が単なる外国語である」という考えを超越した時代になっていくのでしょう。
第二言語として英語を話す人も含めれば、世界で英語を話す人は20億人を超え、書籍やインターネット上にある情報の恐らく半分以上は英語で書かれています。
翻訳される前にリアルタイムで、最新の情報に触れられることは大きなアドバンテージになることでしょうし、情報を得られる人と、そうでない人の差は、今後どんどん広がっていくことでしょう。
英語を学べばマルチタスクに強くなり、身体はより健康になっていく
使える英語を習得してバイリンガルになることは、最新の情報にアクセスしたり、外国人とコミュニケーションを取れるということ以外にも、様々なポジティブ効果を生み出します。
2012年のニューヨークタイムズの記事によれば、複数の言語を話せる人は、認知能力が高くなる傾向にあるのだと言います。
複数の言語を話す人の方が、問題解決力、創造力、記憶力などに優れており、結果的に学業の成績も良くなっていきます。
さらに、学業の成績が良ければ、職業選択の自由度も高く、年収も必然と高くなっていくのです。
また、語学を学ぶことによって、複数のことを同時にこなすマルチタスクに強くなるという調査もあります。
カナダのヨーク大学では、英語以外の言語を一つ使える子供と、英語しか使えない子供を集め、マルチタスクの能力を調べました。
様々な映像を見せ、その映像にあったボタンを押してもらうという実験で、結果はバイリンガルの子供の方が、反応速度が速かったのです。
加えて、複数の言語を身につけると、物事に対しても、複数の見方をできるようになって思考が柔軟になったり、他人の気持ちを読み取る能力が高くなる傾向があるのだそうです。
19世紀の帝国主義において、自国以外の言語を話すことは、あまり良いこととされなかったため、イギリスを中心としたヨーロッパやアメリカでは、子供をバイリンガルに育てることは、健康や社会に悪影響を与えると考えられていました。
しかし、近年では、2カ国語を話すことが脳に良いという様々な研究が発表されており、さらに興味深い点は、バイリンガルの効果は、高齢になっても発揮されるという点です。
ヨーク大学の調査によれば、病気の進行具合が同じでも、2カ国語を話す人は、1カ国語しか話さない人よりも、症状が現れる時期が4〜5年遅いのだと言います。
この理由は、バイリンガルの人は、灰白質が発達しているため、脳がダメージを受けても、それを補い、別の経路をつくることが可能であるためだと考えられています。
何か新しい言語を身につけようとする時、何も英語一つにこだわる必要はありません。
エコノミストのカイ・L・チャン博士は「地理」「経済」「コミュニケーション」「知識とメディア」「外交」の5つの観点から2050年に影響力を持つであろう言語をランクづけしています。
2050年でも、英語が世界で一番影響力を持つ言語として君臨していますが、2位の中国語、3位のスペイン語、4位のフランス語、5位のアラビア語など、それぞれの言語には、それぞれ異なった影響力があります。
日本の外国語の教育も、その時の時代背景によって、少しずつ変化し続けています。
鎖国を解いて洋学がオランダ語から英語に移り変わった明治維新以前から始まり、戦後は英語教育が義務化されました。
2003年には、英語を日本人の第二言語として定める方向性が固まり、2020年から小学校で英語教育が始まるなど、最近では、学問ではなく本当の意味で使える英語が求められるようになってきました。
2050年でも英語は世界の共通言語であり続ける。
英語圏で生まれれば誰でも英語を話すことができることを考えれば、英語が上手くなれるかどうかは、どれだけモチベーションを維持して、英語の勉強を歯を磨くような習慣にできるかにかかっているのだと言えるでしょう。
何気ない缶バッジのようなものであっても、自分の努力が何かしらの形として残るのは嬉しいものです。
英語の勉強方法というよりも、どれだけ勉強を続けられる仕組みづくりを構築できるかが、使える英語を身につけるための一番の近道なのでしょう。