先日、写真集を出版した峯岸みなみさんが、その中の一枚を「遺影にしたいくらい気に入っています」と述べ、他にも、中川翔子さんが自分のお気に入りの中野ブロードウェイで撮った写真をやはり「遺影にしたい」と話していました。
“遺影” についての意識は時代とともに徐々に移り変わり、その人がまだ元気でイキイキしていた頃の写真を持ち歩ける、しまえるサイズでつくってほしいという発注も増えているそうです。
そもそも遺影を葬儀のために用意したり、仏壇や居間の鴨居に飾ったりするようになったのは、それほど昔の頃ではなく、第二次世界大戦後、遺族が戦場で亡くなった人の戦地に赴く前に撮っておいた写真を遺影として飾るようになったことが、全国的に急速に広まっていったのだといいます。
それが近年、仏壇のない洋風な家に合うものや、本のように二つ折りにして戸棚にしまえるもの、あるいは気軽に飾る場所を変えたり持ち運びできるものなど、よりカジュアルな様式へと変わってきています。
写真がプリントされた缶バッジを飾るのも定番化している時代ですから、これからの世代には、亡き人や若い頃の思い出の写真を缶バッジにして飾ったり持ち運んだりする習慣も取り入れられていくかもしれません。
例えば最近では、たけし軍団がそれぞれの若かりし頃の写真を缶バッジにして販売するということで、当時のたけし軍団をテレビで見ていた人々から「懐かしい」「これは欲しい!」と、注目が集まっています。
SNSのアイコンのように、一番いい写真を缶バッジにする
そもそもデジタルでは、人の写真や人とのコミュニケーションが亡くなった後でも長く残り続けます。
デジタル社会での過去の情報が劣化することがないという当たり前の認識が、人々の昔の写真に対する考え方に少なからず影響を与えているのかもしれません。
実際、遺影には、最近のものではなく、その人らしい、その人の日常が思い起こされるような比較的若い時の写真が増え、その人の一番の思い出の場所で遺影を撮るサービスを専門に扱うカメラマンも出てきており、昨年はそういった内容を扱った「おもいで写眞」という映画も公開されました。
遺影はだんだんと、遺族や仲間にとっても、その人がまるで今も生きているように話しかけたり、一緒に出かけやすい様式へと変わってきています。
日本中のサッカーファンが感動に沸いた、サッカーW杯の「日本-ドイツ戦」の際にも、俳優の勝村政信さんが、2018年に亡くなった無二のサッカー友達 大杉漣さんの写真とともに現地に赴き観戦している様子をリアルタイムでツイートしていました。
スタジアムだけでなく、飛行機の座席や食事のテーブル、ホテルのシャワー室など様々な場面で大杉さんの写真を写り込ませ、「れんくんもたのしそ」と投稿するその様子は、1泊4日のW杯弾丸ツアーを二人で楽しんでいるようにしか見えませんでした。
こうして遺影を「持ち歩くもの」として考えると、缶バッジはこれから思い出を共有してきた人を写し出すものとして、ますます活用されていくのではないかと思います。
いつでもともに。ペットロスを和らげる缶バッジ
実際、ペットの業界では一足先に、メモリアルグッズとして亡くなった猫や犬、インコなど様々なペットの写真を缶バッジにするサービスが好評です。
長く一緒に暮らした大事な家族のペットが亡くなったことによる深い喪失感は、ペットロスとして広く認知されており、ペットを亡くして意気消沈している高齢の親を少しでも元気づけたいと、若い世代からの注文もあるようです。
スマートフォンに収めてあるデジタルの写真もいいですが、ペットの写真を缶バッジにして身につけていることで寂しさが和らぐこともあるでしょう。
あるいは、缶バッジをカバンや帽子につけてペットと散歩に通った同じ道を歩くのも、あたたかい気持ちを呼び起こすものです。
缶バッジは、その素材や付属品によって、立てかけて飾ったり、首から下げたり、あるいは雨の降る日でもバッグにつけて出かけられるような便利なものへとみるみる進化しています。
例えば、弊社の缶バッジのパーツとして提供している「クリアスタンドパーツ」は、
『スタンドで写真立てのように飾る』
『メダルのように首からかける』
『ストラップにする』
『画びょうでコルクに留める』
など、缶バッジの用途を大きく広げることができるパーツです。
フォトスタンドのスタンド部分を最大まで開くとリボンを通すことも可能ですし、丸穴にストラップや画びょうを通して使うことができるので、部屋に飾る方法をいろいろ工夫する楽しみも広がります。
缶バッジの用途の拡大に伴って、亡くなったペットのメモリアルグッズの製作を行うサービスも充実しています。
こうした缶バッジやストラップ、マグカップ、クッションなど、亡くなったペットのグッズは「メモリアルグッズ」と記念品のように呼ばれているものの、実際は生きている頃のようにそばに感じたり、今をペットと一緒に過ごすような気持ちで用いられているようです。
お墓など供養をするためのサービスもいろいろありますが、亡くなってからも日々の暮らしを続けていかなければならない人のためにも、缶バッジが少しでも力になれれば嬉しいと思います。
缶バッジになって、残された人の心を支えてくれる
安全ピンで身につけるだけでなく、缶バッジの「飾る」「持ち運ぶ」のさまざまな使い方を実現するパーツが開発され、缶バッジは活用の幅を広げています。
これからは、その人と過ごした懐かしい日常を身近に感じるのに適したツールとして、思い出の缶バッジが次世代の遺影のようにして用いられるようになっていくのかもしれません。
そして、缶バッジによって大切な人やペットを失ってからも日々の暮らしや出かける楽しみを取り戻し、日常のささやかな心の支えとして、缶バッジが代わりに側に居続ける存在になれたらいいと思います。
参考資料:
■ 牛窪 恵「男女1100人の『キズナ系親孝行、始めました。』 —平成親子の“つながり”術」河出書房新社、2012年
■ 熊澤尚人「おもいで写眞」幻冬舎、2020年