日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳ですが、医療や介護の手を借りず、自分で自立した生活ができるまでの年齢を表す健康寿命は男性が72歳、女性が75歳と、10歳前後の差があります。

つまりは、平均的な日本人は、人生最後の10年間を医療や介護に頼って生活していることになります。

作家のダン・ビュイトナーは、世界の最長寿地域である「ブルー・ゾーン」で、様々な人たちの生活を観察し、適切なライフスタイルを身につければ、病気を事前に予防し、健康で過ごせる期間を10年は伸ばすことができると述べました。

長期的な健康の秘訣は、食事、運動、人間関係、そして、好奇心なのだと言われます。どの部分にウエイトを置くかは、人それぞれですが、常に人生最後の10年の健康状態を想像しながら、独自のライフスタイルを設計していく必要があります。

多くの人は、人生最後の10年を医療や介護に頼って生活をしている。

長野県上伊那郡辰野町の保健福祉課では、巡回型健診の受診を促そうと、町の非公認キャラクター「いっぽくん」の缶バッジを配っています。

缶バッジには、健診(検診)を勧める「KENSHINへ行こう」という文字が書かれ、千個作られた缶バッジは評判がよく、今後量産していく予定なのだと言います。

「いっぽくん」以外にも、「栄養・食生活」や「がん」など、健康なライフスタイルを送る上で意識してほしい11項目の缶バッジも作成し、収集意欲を刺激しながら、健康意識を高めてもらうことが目的なのだそうです。

病気や不調の原因が分からない時こそ、ストレスのせいにしてはいけないと言われます。

医者は病気の専門家であって、健康の専門家ではありません。人生の最後の10年をどれだけ質の高いものにできるかは、日々の小さな意識づけにかかっているのです。

本当に有益な健康情報が向こうから歩み寄ってくることはない。


若い時は、健康資産が余るほどありますが、何もしなければ、健康資産は年に数%ずつ確実に減っていきます。

むしろ、若い時にこそ、資産運用のように「若さ」をしっかりと複利で運用し、生涯健康で困らない身体をつくっていく必要があるのです。

多くの人は、日々テレビなどで、何気なく健康に関する情報を眺めていますが、世の中の健康情報に敏感になりすぎるのもかえって健康によくないのです。

株価が上がった時よりも、株価が下がった時の新聞の方がよく売れると言われるように、人間は不安を煽られると、どうしても敏感に反応してしまいがちです。

若さをしっかりと複利で運用していく。

これは健康に関するニュースも同じことで、「◯◯が足りない」、「◯◯の取り過ぎ」などといった感じで、常に不安を煽るメディアに対して、それをすべて間に受けていたら、健康資産はどんどん奪われていってしまうことでしょう。

定期的な断食は身体のデトックスさせる効果があるため、健康のために良いですが、むしろそれ以上に必要なのは、常に不安を煽るメディアの健康情報から距離を置く「情報の断食」なのかもしれません。

ビジネスにしても、健康にしても同じことですが、本当に有益な情報が向こうから歩みよってくることは滅多にないのでしょう。

医療ゼロ・介護ゼロの身体をつくるためには、自分から色々な情報に触れ、時に失敗しながらも、独自の原理原則を徹底しながら、食事、運動、人間関係、好奇心を少しずつレベルアップさせていくことが大切なのです。

必要なのは身体のデトックスではなくニュースのデトックス。

日々の生活の5割の部分、良い睡眠、良い人間関係、良い食べ物などは、たくさんのお金があったとしても、劇的に良くなるものではないし、かといって、あまりお金が無かったとしても、劇的に悪くなるものでもありません。

食事は、20歳で欧米型の食事から健康的な食事に変更できれば、女性で10. 7年、男性で13年平均余命が伸びる可能性があり、豆類や全粒穀物の摂取量を増やすと効果が大きいのだと言います。

スティーブ・ジョブズは病床で残した最後の言葉の中で、次のように述べています。

「食べ物を薬と思って食べること。でないと薬を食べ物のように摂らなければならなくなる。人生における最高の医師とは、1. 日光、2.休息、3.運動、4.食事、5.自信、6.友人」

運動に関しては、ドコモ・ヘルスケアが発表した興味深いデータがあります。ドコモ・ヘルスケアが発表したデータによれば、年収1000万円以上の人は、平均的な年収の人たちよりも1.16倍速く歩くのだと言います。

また、早歩きの人は、ゆっくり歩いている人よりも体が引き締まっているというデータもあり、早歩きや走ることが苦にならない人の方が、アクティブで前向きに行動できるのだそうです。

食べ物を薬と思って食べること。

将来の健康は、現在のコレステロール値ではなく、日々の人間関係によって決まるという調査もあります。

「友人、親戚、隣人に値段をつける」という経済学の研究によれば、良い社会生活を送るための人間関係から生まれる幸福度には、年間1800万円ほどの価値があるのだと言います。

確かに70歳になって、急に何でも話せる親友をつくれないことを考えれば、良い人間関係にはこれくらいの価値はあるのかもしれません。

健康に関するアプローチは人それぞれで、運動や食事で身体を丈夫にする人もいれば、人間関係を通じて幸福度を高め、健康寿命を伸ばしていく人もいます。

そういった意味で、大切なのは、常に人生最後の10年の姿を意識し続けることなのだろう。

冒頭で紹介した辰野町のように、ユニークな缶バッジをつくって配ることで、無意識の部分で健康を意識するようになります。

無意識の部分で健康を意識するようになれば、受け身の姿勢で常にメディアからの健康情報に振り回されることは無くなることでしょう。

缶バッジをつけるということは、意識が変わったという証なのです。