「挨拶」の「挨」には、押す、近づくという意味が、「拶」には迫る、引き出すという意味があると言われており、挨拶を習慣とし、信頼できる人間関係をしっかりと構築している人が、社会的に成功しているというのは十分納得できる話です。
大谷翔平選手は、高校生の時からマンダラチャートという方法を使って、自身の目標を管理していたことはよく知られています。
大谷選手の凄いところは、野球に関しての目標だけではなく「運」や「人間性」を高めるために「挨拶」や「応援される人間になる」などといった野球以外の行動指標もしっかりと管理し、実践し続けたことでしょう。
京都府京丹波町曽根の丹波ひかり小学校では、児童に元気な挨拶を呼びかけるためにオリジナルの缶バッジを制作し、全校児童に配布しました。
お笑いタレントのコロッケさんは「人生は挨拶に始まり挨拶に終わる」と述べており、厳しい芸能界で生き残っている人の中で、挨拶を疎かにする人はいないのだと言います。
SNSがどれだけ普及しようと、本当に大変な時や、緊急時に助けてくれる人達は、仮に挨拶程度の関係だけだったとしても、しっかりと関係を維持し続けている人達なのでしょう。
挨拶が減っている日本では、「世間」と「社会」が壊れ始めている。
劇作家の鴻上尚史さんと、評論家の佐藤直樹さんは、共著「同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか」という本の中で、日本には「世間」は存在するが「社会」というものは存在しないのだと言います。
「世間」とは、自分に関係がある人たちだけで形成される世界のことで、学校や会社などといった身近な人達によってつくられた世界のことです。
「社会」とは、現在及び将来において、自分とは全く関係のない人達で形成された世界のことで、例えば、カフェで隣になった人や同じ電車に乗り合わせた人達などで形成された世界のことを指します。
欧米などでは、全く知らない人でも、ホテルの廊下ですれ違ったり、エレベーターで一緒になったりすると、よく挨拶をします。
自分とは全く関係のない人達がお互い挨拶をすることで社会が形成され、その頻度がどんどん多くなっていくと、徐々にそれが世間に変わっていくのでしょう。
むしろ、現在の日本の問題は、挨拶などがどんどん減ってきていることで、欧米のような「社会」を形成するどころか、日本のセーフティーネットとして機能していた「世間」という人間関係までもが壊れ始めていることなのかもしれません。
「世間」を維持するにしても、新しい「社会」を形成していくにしても、まずは人間関係の基礎である挨拶を習慣にしなければ、世間や社会は機能していかないのです。
ビジネスにおいて日本は歴史的に、お中元やお歳暮を贈る習慣があり、年に数回短い挨拶をすることで、取引先や顧客との関係を保ってきたため、マーケティング部門を持たない企業も多くありました。
現在では、BtoBの取引であっても、様々な方法でマーケティングをするのが当たり前になりましたが、マーケティングも言ってみれば、世の中への企業の挨拶なのだと言えます。
世の中の挨拶を「おはようございます」にするのか、「オッス」にするのか、「おっはー」にするのかを考えるのが広告クリエイターの仕事で、定期的に気持ちの良い挨拶をしてくれる企業の商品やサービスを私たちは購入しているのでしょう。
製造業などの現場でも、日々の挨拶を習慣づけることで、問題に気づいた時や気になったことを伝えようとするコミュニケーションが増え、製品の品質向上に繋がっていくのだと言います。
高倉健さんや吉永小百合さんなどの一流俳優の方は、エキストラや裏方のスタッフの方にも必ず挨拶をすると言います。
恐らくこういった日々の小さな挨拶こそが、トラブルを事前に知らせるキッカケになったり、危機を最小限に止める効力を発揮していくのでしょう。
ヨーロッパのカフェなどでは、しっかりとお互いが挨拶をし、ものが運ばれてくれば「ありがとう!」、帰る時も「美味しかったです。また来ます」といった感じでしっかりと挨拶をします。
しかし、日本では店員とお客といった、いわばお金を通じた一方的な関係しか存在していないため、挨拶というものを自然と行うことができないのでしょう。
「一期一会」は「一語一笑」とも言われます。知らない人も、笑顔で挨拶して、もう一言何かを会話して一緒に笑うことで、そこに小さな人間関係が生まれていきます。
京都の小学校では、挨拶を増やすためにオリジナルの缶バッジを作成しましたが、むしろ、オリジナルの缶バッジをつくって、挨拶のコミュニケーションを増やさなければならないのは大人の方なのかもしれません。
恐らく、挨拶を習慣づけ、周りの人達と人間関係を築くことができれば、将来の不安や生きづらさのようなものの半分近くは解消されるのではないでしょうか?
何事においても、「挨拶に始まり挨拶に終わる」というのは人間関係の基本であることは間違いなさそうです。