缶バッジの表面は下から ①シェル  ②紙  ③フィルム の順番で重ねてプレスします。

そうすることによって、フィルムによる光沢感がプラスされ、とても美しく仕上がるのです。
初めて缶バッジを製作された方は、その完成度の高さに驚いたのではないでしょうか。

もちろん、フィルムを用いる理由は光沢感を出すだけではなく、デザインを保護したり、パーツを上手く巻き込ませるといった役割もあります。

手早く、そして簡単に出来上がる缶バッジは様々な場面で大活躍していますね。

しかし、ここで1つ疑問が生じます。『フィルムは絶対に必要なのか?』ということです。

 

フィルムは絶対に必要?

実際にこういったお問い合わせは非常に多くいただいています。

このお問い合わせに関してその真意を詳しくお伺いすると、『特殊な紙で缶バッジを作りたい』『和紙という郷土の特産品を利用したい』など、『紙の特徴を活かしたい・手にとって感じてもらいたい』といった意見が多いと感じます。

確かに、デザインという視覚に訴えかける部分だけではなく、質感やさわり心地といった触覚まで加わったならば、それはとても素敵なことですし、印象も大きく変わってくることでしょう。

 

しかしながら、弊社のスタンスとしては主に0.1mm~0.13mmの普通紙・コピー用紙などに対して、弊社で販売するフィルムをお使いいただく事を推奨しております。(>>よくある質問)

心苦しいことではありますが、個別の案件に対するサポートの難しさもあり、こうした適正な材料以外での製作保証はしておりませんし、特殊な素材を使用して起こった故障は保障対象外とさせていただいております。(※有償での修理・メンテナンスは可能です。)

 

が、和紙などの特殊な用紙を使った缶バッジに魅力があるということは、大いに理解できる部分ではあります。

 

実際に検証してみました。

上記のようなジレンマもあり、実際にフィルムを使わずに和紙を使った缶バッジが製作できるかを簡単に検証してみます。
素材は岐阜県美濃市の伝統工芸品である【美濃和紙】です。今回は手すきの物を用意しました。

今回使用する美濃和紙ですが、【もみ染紙(先染め) 4匁 楮紙】【雲竜紙 カス入り 4匁 楮紙】というものを使用しました。
このあたりが割と平均的な厚みとのこと。 ( ※匁(もんめ)は和紙の厚みの単位 )

(※和紙には様々な種類や呼び名があり、手すき和紙は職人さんの技量等が大きく影響するとの事ですので、今回の和紙のデータはあくまでも参考程度として下さい。)

 

まずは【もみ染紙(先染め) 4匁 楮紙】で缶バッジを製作してみます。

失敗です。
ご確認いただけるでしょうか? プレス時にシェルによって切断された和紙が外に広がってしまっていますね。
プレス時の引っ張りとシェルの鋭さに耐えられなかったようです。

 


 

次に【雲竜紙 カス入り 4匁 楮紙】で缶バッジを製作します。
先程の和紙に比べてザラザラした手触りで繊維も多く、丈夫そうに見えます。

…こちらも失敗です。
和紙でも様々な種類があるので耐刃性や伸縮性が高いものもあるのかもしれませんが、今回用意した和紙ではフィルムが無いとどうしても摩擦やシェルの鋭さに負けてしまい、缶バッジは完成しませんでした。

 

このままではただの失敗報告になるだけですので、対応策として一般的なコピー用紙を【すて紙】として和紙の下に入れてみます。
紙を1枚はさむ事で、和紙が直接シェルに触れないようにしようという試みです。

見事に出来上がりました!
問題だった巻き込み時の切断もありません。

巻き込み部分には若干の毛羽立ちのようなものが見られましたが、それは和紙の特性上仕方が無いといえるでしょう。

フィルム無しで缶バッジができた事に正直我々もホッとしました。

 

完成した和紙の缶バッジをよく見ると、もみ紙の特徴のシワシワ感もしっかり出ています。
和紙特有の手触りも気持ちがいいです。フィルムを使わなかった分、和紙の持つ魅力をダイレクトに感じる事ができます。

お手持ちの缶バッジマシンのプレス圧が弱いと、薄めの和紙を使った際に上手に巻き込めない場合があります。
そういった場合はこの場限りですが、すて紙を増やして対応して下さい。

 

最後に

缶バッジにはデザインの魅力を簡単に表現できるという利点があります。

今回の検証で缶バッジの魅力に【視覚】だけではなく、【触覚】を追加できたのではないでしょうか。

見ても、触っても素敵な缶バッジ。和紙の缶バッジはまさに日本の伝統工芸の魅力を伝えるのにベストなアイテムになりそうです。

 

※今回の検証は1つの事例として紹介したものであり、製作の可否を約束するものではありません。
使用する和紙によっては同じように製作できない可能性があります。

また、今回の検証の結果にかかわらず、和紙などの特殊な用紙を使った場合の保障が認められないという点は変わりありませんので、大変申し訳ありませんがご理解いただきたく存じます。

その他、なにか気になる点がありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。