マンガや小説本など、同人誌作家の活動に関する事業を手広く展開しており、初心者からプロフェッショナルまで、高品質で安心の同人誌印刷を機会を提供しているサンライズパブリケーション

小ロットかつ短納期で印刷を依頼できるオンデマンド印刷が強みの同社では、同人誌関連グッズの一つとして缶バッジを取り扱っているそうです。

今回は同社の小杉さんに同人誌と缶バッジに関して詳しくお話を伺ってきました。




バッジマンネット:
サンライズパブリケーションさんは主に同人誌の印刷業を営まれているとのことですが、一般の書籍と同人誌とでは何が違うのでしょうか?まずは同人誌の説明からお願いできますか?

小杉:
書店に並ぶ書籍は出版社経由で発行されていて、一冊の本が完成するまでに、作家、編集者、表紙のデザイナー、出版社の責任者と、書籍の内容を精査する方が多く関わってきます。

一方の同人誌は、全部自分でやりますから、自分の好きなものを好きなように出すという形になります。ただ、一般書籍のように書店に並ぶことはあまりないので、それぞれの作家さんが売り方もご自身で考えられています。




バッジマンネット:
内容を精査する人が不在で、なおかつ自分が好きなものを好きなように描けるということは、同人誌はかなり趣味性が強い出版物になりますね。ちなみに、作家さんたちはどのようにご自身の作品を販売されているのでしょうか?

小杉:
最近はSNS等でも活動ができるようになりましたが、やはりコミックマーケット(以下、コミケ)に参加される方が多いですね。コミケには毎年50万人もの同人誌ファンが国内外から集まり、クリエイターにとってもファンにとっても重要なイベントです。

バッジマンネット:
それだけ大勢の方が集まるとなれば、作家さんたちにとってコミケは一大イベントですね。ちなみに、缶バッジはコミケで活用されているのでしょうか?

小杉:
作品のオマケに缶バッジを作る方もいらっしゃいますが、缶バッジが強みを発揮するのはやはりコミケだと思います。

同人誌はニッチなファン層で成り立っている産業なので、その作品のことを相当気に入ってないと同人誌を買うということはありません。なので、同人誌のキャラクターをあしらった缶バッジなどをお配りするとすごく喜ばれるようです。

キャラクターのみならず、「サークル名」をデザインした缶バッジもすごく人気です。作家さんの中には同人誌のチームのようなものに所属している方がいらして、自分が所属しているサークル名を缶バッジにデザインして販売・配布される方もいらっしゃいますね。特定のサークルのファンの方もいらっしゃるのでそうした方々には人気のようです。




バッジマンネット:
そこまでニッチな世界になると、分かる人にしか分からない缶バッジですね(笑)コミケで缶バッジを運用してみて、反響などありましたでしょうか?

小杉:
自分と同じものが好きな「仲間」を見つけるツールとして缶バッジが機能しているようです。先ほどもお伝えしたように、コミケは50万人が集まる大規模イベントです。国内外から大勢の同人誌ファンたちが集まり、みんなでワイワイしながら「その作品いいよね」といった会話が行われます。最近は会場で知り合ったファン同士がツイッターで繋がる機会も増えてきました。つまり、コミケは一つの大きなコミュニティなんです。

ただ、会場は大勢の人でごった返しているので、自分の好きな作家さんのブースや、同じ作品が好きなファンがどこにいるのか分かりにくい。その時、缶バッジがあると一目瞭然なんです。

作家さんが作った缶バッジをカバンや服につけて来場される方もいらっしゃるのですが、自分が好きな作家さんの缶バッジを身につけている人について行ったら自分と趣味が会う人たちのコミュニティにたどり着けると言う方も中にはいらっしゃるようです(笑)




バッジマンネット:
なるほど、缶バッジはコミケの中でコンパスのような役割も果たしているのですね(笑)2020年以降、コロナ禍の影響でイベント等が開催しにくい事態となっていますが、缶バッジ事業に影響はありませんでしたか?

小杉:
やはり同人誌は即売会などイベント会場でやりとりをすることがメインになってくるので、イベント開催が難しい今、同人誌の出版は減ってしまっています。それに伴い、オマケ要素が強かった缶バッジに関してはほとんど受注がなくなっている状態です。

バッジマンネット:
確かにイベントが開催されないとなると缶バッジの登場するシーンは減ってしまいますよね… サンライズパブリケーションさんでは、コロナ禍においてどのような取り組みを行っているのでしょうか?

小杉:
弊社が現在力を入れているのは、とにかくクリエイターさんたちのモチベーションを維持することです。同人誌作家さんの9割が副業として同人誌を描いており、イベント出展が大きなモチベーションになっているのです。イベントが開催できない状況が続くと、どうしてもモチベーションを維持することが難しくなってきます。




小杉:
そこで弊社では、イベントが開催できない今だからこそできる取り組みとして「試し刷り」のキャンペーンをはじめました。同人誌は編集者やデザイナーがいないので、本が完成してから失敗や改善点が発覚することがよくあります。

だからこそ、イベントがないこの時期に試し刷りをしてみて、作品のクオリティを一段階上げる提案をしました。

バッジマンネット:
なるほど、事態が収束するのをただ待つのではなく、むしろこの時期を利用して作品のクオリティを上げる方へシフトしたという点は興味深いです。最後に今後の展望についてお聞かせ頂けますか?

小杉:
今はクリエイターの皆さんがしゅんとなっている時期ですので、皆さんの創作意欲を沸かせる取り組みを継続して行っていきたいと思っています。こうした時期だからこそ、缶バッジの活用方法も改めて見直すことができるはずですので、同人誌と合わせて考えを巡らせたいと考えています。