大阪府大阪市の印刷会社である有限会社サンクラールは、「できない」を「できる!」に変える会社を理念に掲げ、今日もありとあらゆる印刷ニーズに応えています。
そんな有限会社サンクラールは、他に類を見ない美しさを誇る特殊箔印刷技術「Sプリズムプリント®」を展開し、印刷技術とアートの融合を実現しました。
この印刷技術を広く発信していく目的で、有限会社サンクラールでは缶バッジも活用しているそうです。
そこで今回は、同社代表取締役の矢田幸史さんに詳しくお話を伺いました。
アートの域に達する特殊箔印刷技術「Sプリズムプリント®」の突出した美しさ
バッジマンネット:
サンクラールさんは、ありとあらゆる印刷のニーズに対応される会社と聞いています。事業では、どのように缶バッジを活用しているのでしょうか?
矢田幸史:
イラストレーターの方とコラボして缶バッジを制作し、Webショップで販売する他、印刷加工のサンプルとして配っています。
本来サンプルとして作り始めたのですが、作ったのであれば売っていこうと考えるようになりました。今は自社製品として、百貨店の催事やアートイベントに出展もしています。
もともとカレンダーやポストカードを作っていたのですが、イベント出展をするうちに種類を増やしたいと思うようになり、ステッカーや缶バッジも作るようになりました。
東京のおもちゃ専門店では缶バッジなどの商品を常設していますが、担当者の方には「ここまで技術が詰まったものはない」と高く評価していただいています。
バッジマンネット:
カレンダーや缶バッジには、どのような印刷技術が使われているのでしょうか。
矢田幸史:
私たちが行っている特殊印刷技術「Sプリズムプリント®」は、他社には真似できない美しい印刷物を、たった2工程でできる技術です。
普通の箔押し加工は、印刷をした後に箔を1色ずつ乗せていきます。そのため、使用する色の数だけ工程が増えていきます。たとえば金箔、銀箔、青箔、赤箔をいれるのであれば、ここだけで工程が4回かかります。
一方、「Sプリズムプリント®」であれば、箔の上に印刷で色を付けるため、1回の印刷と1回の箔押しの2工程で済むのです。
どんな色も再現可能な上、箔へ細かい凹凸を入れる「エッチングデザイン」を施し、光を設計するため、誰にも真似できない唯一無二の印刷物が仕上がります。
もともと箔の加工業者さんが行っていた技術に感銘を受け、共にやっていくことになりました。
自分で言うのもなんですが、「僕らの技術はすごいなあ」と思えるほどの美しさです(笑)
缶バッジは着実な認知から結果へ繋ぐ地道な広報活動ツールのひとつ
バッジマンネット:
「Sプリズムプリント®」の技術を始めたのはいつ頃からなのでしょうか?
矢田幸史:
4年くらい前からです。缶バッジなどの自社商品を作り始めたのは3年程前になります。
そもそも自社商品も、販売目的で作り始めたのではありません。この「Sプリズムプリント®」という技術を広めないことには始まらない、と考えたためです。
しかし、どんなに「素晴らしい印刷技術なんですよ」と話しても、なかなか受注には繋がりません。
話だけですと、実際の仕上がりがわからないまま制作に取り組むことになってしまいます。それだと信頼性が薄く、どうしても「やってみよう」という段階まで到達しないのです。
例えて言うなら、いい食材はあるものの料理人がいないため、どのように料理したらいいかわからない、と思われるようなものですね。
それならば”食材の調理”まで弊社で行い、「これを食べてみませんか?」と提案するようなイメージで、缶バッジを始めとした自社商品を作っているんです。
バッジマンネット:
缶バッジも含め、品はWebショップでも販売されていますね。そちらの売れ行きや反応はいかがですか?
矢田幸史:
このWebショップも、もともと売る目的ではないんです。私たちがクリエイターさんとコラボして作った商品を「いいですね」と言われた際に、「ここで買えますよ」と言えるような場所として作っています。Webにある倉庫のような感覚です。
このWebショップでは、本来は無料で配るフリーペーパー『アートマガジン』も販売しています。今は新型コロナの影響もあり、店舗に置けないこともあるため、Webショップに置き、登録できる限りの最低価格に設定しました。
内容はクリエイターさんやインクメーカーさんとコラボしたもので、額装できるマガジンとして、7色もの色を使って印刷しました。印刷サンプルとして見ていただけるよう、弊社やインクメーカーさんの広告ページも含まれています。
バッジマンネット:
このフリーペーパーをきっかけに、問い合わせや受注はありましたか?
矢田幸史:
実は、ここから受注に繋がることはほとんどありません。以前、”デザイナーさんのバイブル”とも呼ばれるほどの有名雑誌へ、弊社の技術を掲載したことがあります。その際も直接発注されるような動きはありませんでした。
そういった経験を通して、基本的には瞬発的に大きな成果や効果が現れるような施策はほぼ無いと考えています。
結局は、何をするにしても地道な広報活動が大切です。スタート時はほとんど成果がないような状況ですが、少しずつ認知が増えていきますから。
活動を続けていくにつれ、いずれ「あれは素晴らしい」、「うちもやりたい」、「作りたい」といった声が生まれ、結果に繋がるのではないかと考えています。
実際に弊社は、世界的に人気なキャラクターグッズやアーティストグッズを制作するという実績にも繋がってきました。
「待っているだけでは駄目」従来のビジネスモデルに留まらない姿勢で危機を乗り越えていく
バッジマンネット:
印刷業は一般的に受注生産サービスのため、従来の仕事を継続していくようなイメージを持っていました。そのような業界で新しく自社商品の制作を始めると決めた際は、危機感のような思いがあったのでしょうか。
矢田幸史:
やはり危機感はあります。デジタル化が進んでいる昨今、印刷の需要は減少していくでしょう。そのため、「待っているだけでは駄目だろう」という気持ちを常々持ち合わせてきました。
だからこそ、従来のビジネスモデルのみに留まらない姿勢は必要だと考えています。私自身に印刷マニアのような気質があり、作ることが面白いという側面もありますが。
最終的には、ギフト需要やインテリア需要に応えるような、印刷物そのものにプレミアが付く製品を作るような会社になりたいというのが今後の事業展望にあります。
最近は、絵本の全ページを特殊印刷技術で仕立てて美しい装丁にする「プレミアム絵本」という市場を開拓できないか、とも考えているんですよ。
缶バッジも、このような新しい取り組みの普及活動を、地道にやっていくためのツールのひとつです。
「Sプリズムプリント®」の素晴らしさが実感として伝われば、お客様との繋がりは生まれます。そのための営業や広報のツールとして缶バッジも活用し、発信していきたいと考えています。