静岡県で、ホームページ制作をメインに事業を展開しているSacreo

Web制作以外にも名刺や缶バッジ、看板、ロゴなどのデザイン制作も請け負っています。

そんなSacreoでは、お客さま同士の口コミによる缶バッジ制作の注文が多くあるのだと言います。

今回はSacreoの代表である吉野史幸さんに、缶バッジを使ったプロモーション活動についてお話を伺いました。



Sacreo代表の吉野さん。緊急事態宣言下での取材となったためZoomにてお話を伺った。

バッジマンネット:
コロナ禍において外出を控えている人も大勢いらっしゃると思いますが、お客さまのプロモーション活動に変化はありましたでしょうか?

吉野:
最近では屋外のイベントが開催されはじめていて、珈琲店やパン屋さんなどが出店するときに「缶バッジがほしい」とたくさんのご依頼をいただいています。

店頭に設置するのぼり旗に付けたり、お客さまへのノベルティとして配布しているエコバッグとセットにしたりして活用されているようです。

缶バッジに関するご依頼の多くは「口コミ」ですね。先日は5周年記念を迎えたカレー店から、缶バッジ1,000個のご依頼がありました。そしてカレー店つながりで、1周年記念のカレー店から缶バッジ300個のご依頼を続けていただきました。



1000個の依頼があったカレー屋さんのバッジ

300個の依頼があったカレー屋さんのバッジ。このイラストは現在GUとコラボしている柳田まさみさんが描いてくれたもの。

バッジマンネット:
それはどういった用途で缶バッジを使うのでしょうか?

吉野:
周年記念のパーティーを開催するため、来店してくださったお客さまにプレゼントするようです。

バッジマンネット:
Sacreoでは、デザインやクリエイティブな部分に力を入れていると思いますが、一番重視しているポイントなどはありますか?

吉野:
お客さまのなかには、すでにロゴをもっている人もいらっしゃいますが、それでもお話を伺って店主の人柄や企業のコンセプトなどを知り、「こういうのはどうですか?」と逆に提案することはよくありますね。

できるだけ、お客さまの想いを汲み取りながらデザインするように心がけています。



英検合格のために作成したキッズイングリッシュのバッジ

バッジマンネット:今までに缶バッジをたくさん作られていると思いますが、「これは面白かった」といったプロモーション事例や思い出はありますでしょうか?

吉野:
もう10年ほど前になるのですが、弊社がなぜバッジマンの機械を購入したのかということからお話させて下さい。

静岡県富士宮市にある朝霧高原で、ボーイスカウトに参加している人が世界中から集まるお祭りである「世界ジャンボリー」が、10日間ほど開催されたんです。

そのお祭りに出店する許可をいただいたのですが、私の会社からは「なにもネタがない、どうしようか」と私ともう1人の仲間の2人で悩んでいました。そのとき、もう1人の仲間が「缶バッジはどうかな?」と提案してくれたんです。

しかし、ただ単にジャンボリーのロゴを作って売っても面白くないため、イベント会場にプリンターとカメラを持ち込んで、世界中から参加しているボーイスカウトたちを写して缶バッジにすることにしました。




たとえば缶バッジの中に5人の顔を写したら、映り込んでいる5人は必ず買いますよね。そこで「友缶(友達の缶バッジの略)」と名付けて、57ミリの大きい缶バッジは500円、32ミリの小さい缶バッジは300円で販売しました。

初日や2日目ぐらいはなんだかみんな素通りなんですよ、友缶の意味がわからなくて。でも買ってくれた人たちが周囲に缶バッジを見せるんですよね。こうして「自分の顔が写っている缶バッジがあそこで買えるよ」といった口コミが広がっていったんです。

最終的には、1つの缶バッジに10人以上入ったと思います。無理やり入ろうとして「お前もっとくっつけ」とか言っているのを聞いて、缶バッジを制作している私たちもすごく面白かったですね。



Facebook交流会の時の参加バッジ

バッジマンネット:最近知った面白い調査のなかで、単純に接触回数を増やすことによってそのブランドやサービスを好きになっていく「単純接触効果」という現象があるようです。そして、バッジや看板なども接触回数を増やす一つのツールだと思います。

そこで、吉野さんが今までに行ってきた活動のなかで、バッジなどの物理的なものによってお客さまとの接触回数が増えて、自然と距離が縮まったような体験はありますでしょうか?

吉野:
弊社では缶バッジ以外にも、看板のデザインなども手がけています。以前、和菓子店の『たこまん』さまから掛川森林果樹公園の隣にレストランとカフェの店舗を建てたいとご相談をいただきました。

看板やロゴ、お菓子のパッケージなど、すべてのデザインをご依頼いただいたのですが、予約しないと入店できないほど繁盛して大成功でした。

看板やお菓子のパッケージのデザインがお客さまの目にとまり、結果的に接触回数が増えたのも『たこまん』さまが成功した一つの要因だと思います。また名刺のデザインも担当させていただきましたので、看板やロゴと合わせてブランディングにつなげました。



富士宮市の光月堂(ケーキ屋)さんからの依頼。デザインはこちらからご提案。

バッジマンネット:コロナ禍で不景気が影響して、ハイクオリティでローコストなプロモーション活動をやっていきたいと考えるお客さまも増えてきている気がします。

缶バッジはローコストで取り組めるプロモーション活動の一つだと思いますが、缶バッジ制作を展開している会社側から見て、低予算でできる販促活動などの提案はありますでしょうか?

吉野:
アフターコロナでは、各地でイベントがたくさん開催されると思います。そうしたイベントに出店したいお店へ向けて、プロモーション活動のパッケージプランのようなものを提案していこうと考えています。

たとえばコーヒーショップがフェスに出店する場合、のぼり旗・ロゴデザイン・缶バッジ・フライヤーなどの物理的なアイテムから、簡単にWebショップが開設できる「BASE(ベース)」や「STORES(ストアーズ)」を使ってネットショップを作るところまで、すべてを込みにしたパッケージプランです。

もちろん、そのサービスが何十万円と高額になってしまうと意味がありませんので、定額制サービスで運用していこうかと考えているところです。



ロックバンドのシンプルなデザインのバッジ

ホームページを1から作り上げるのは非常にコストや時間がかかるため、ベースやストアーズを使い倒して、テーマを選んだりデザインをちょっと変更したりします。これによって、一定のクオリティが保たれながらコストを落とせるんですよね。

販売ツールを提案するだけではなく、そのなかで売るモノ自体(物販)も提案できる点が大きなメリットです。

バッジマンネット:ホームページは重要ですよね。しかしホームページを作ったはいいけれど、放置していて運用していない企業やお店も多く見かけます。このあたりは今後かなりテコ入れしていかなければならないところかなと思います。

吉野:
そうなんです(笑)ホームページの必要性は感じているけどパソコンが苦手という人が多くて、せっかく作ったページを放置してしまうんですよね。もったいないことだと思います。

バッジマンネット:
Sacreoで今後展開していきたいこと、計画していることなどはありますでしょうか?

吉野:
先ほども触れましたが、販促ツール品のサブスクができればいいなと考えています。たとえば「2ヶ月に1回、缶バッジを50個注文可能」とすれば、缶バッジを配布する目的の人だけではなく、販売目的の人にも利用してもらえるかもしれません。



ロックバンドの缶バッジ

バッジマンネット:
個人か法人かによっても、その月で支払える金額は変わると思いますが、どれくらいの料金をお考えでしょうか?

吉野:
イベントもシーズンがありますし、月に2〜3回程度しか販売できないと考えると、月額数千円くらいだと思っています。

バッジマンネット:
多くの人がサブスクによって気軽に利用できれば、プロモーションという意味でも可能性がどんどん広がっていきますよね。

Google広告はオンライン広告の代表格ですが、缶バッジやTシャツなどは「オフラインの広告」ですよね。先にも話が出ましたが、缶バッジのようなオリジナルグッズは「動く広告塔」として単純接触効果を得られるので、非常に面白い施策だと思います。

話はちょっと変わりますが、Sacreoのホームページに掲載されている制作事例のなかにお寺がありますが、お寺からもホームページ制作の依頼があるのでしょうか?

吉野:
はい、お寺からのご依頼もありますね。40代前半くらいのお若い住職なのですが、現代の若者は墓を持ちたくないと考えている人が多く、墓じまいをする高齢者も増えていて寺離れが起きてきているようです。

そこで、お寺の存在をアピールするために、ホームページ制作のご依頼を承りました。制作したホームページに「墓地のココが空いていますよ」とわかりやすい地図を載せたら、問い合わせが増えて8〜9割は埋まったようです。



富士市吉原の杉山フルーツさんのバッジ

バッジマンネット:
すごい、それは大成功だったんですね。それでは最後に、缶バッジのデザインをするうえで、なにかコツがあったら教えていただけますでしょうか?

吉野:
とにかく遊びながら楽しんでデザインすることですね。缶バッジは、あの小さなスペースのなかにデザインしていかなければならないため、その枠のなかでいかにパフォーマンスを発揮できるかを考えています。

バッジマンネット:
私がこれまでに聞いたことがある事例としては、たとえば地方で販売する缶バッジに方言を書き込んだ「方言缶バッジ」が意外にも売れたと聞いたことがあります。

思いもよらないデザインがヒットすることもあるため、もしかすると吉野さんがおっしゃったように遊んで生み出したデザインのほうがよいのかもしれませんね。