一般財団法人Positive Earth Nature’s School (PENS)は、「すべての人が笑って暮らせるような社会を作る」ことをミッションとし、2010年に設立されました。
さまざまな体験型の環境教育・野外教育プログラムのなかで、自然や仲間との関わりを通じて人生を前向きに生きる人材を育成しています。
今回は、PENS神戸校の中島さんから、自然のなかで活動する子どもたちと、サポートする学生リーダー(通称:Gリーダー)の成長、缶バッジの活用方法についてじっくりとお話をお伺いしてきました。
夏は川でリバートレッキング、冬は六甲山でソリ滑り。季節ならではの貴重な経験。
バッジマンネット:
PENSではどのような活動をされているのですか?
中島:
幼稚園の年中から小学校6年生の子どもたちが、それぞれの年代に応じた野外活動を行なっています。
「ベーシックコース」では、幼稚園の年中から小学校3年生が自由な活動によって感性を育んでいます。
「アドバンスコース」では、小学校3年生から6年生がリバートレッキングやロープクライミングなどの冒険を通じて主体的な行動力を養ってきました。
バッジマンネット:
子どもたちの活動に目的などあれば教えてください。
中島:
ベーシックコースには、大きく3つの活動目的があります。
まず、レイチェルカーソンが提唱する「すべての子どもが生まれながらに持つ感性」である「センス・オブ・ワンダー」を磨くこと。
具体的には、「自然が気持ち良いのはなぜだろう」「空はなぜ青いのだろう」という澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力を失わない大人になってほしいです。
次に、大人の指示を待つのではなく遊びのなかで「こうやったら面白そう」「みんなも誘ってみよう」という主体的な行動力を身に付けること。
最後に、ありのままの自分を受け入れる自己肯定感を育むことです。
アドバンスコースの目的は
「前向き!主体性!チャレンジ!」
活動を通じてさまざまなことにチャレンジすることで、主体的に考える力を養います。
そうすることで前向きに生きていける。人生を楽しめる人を育てていくことができると考えています。
これらの目的を意識しながら活動を企画・運営してきました。
バッジマンネット:
活動場所はいつも同じではなく、その時々によって変わるのですか?
中島:
毎月、さまざまな場所に出かけて、季節ならではの体験をしています。
夏は川でリバートレッキングやイカダ作り、冬は六甲山で雪遊び、火の面白さを感じてもらうための焚火遊びなどを行なってきました。
職員と「Gリーダー(グローバルエデュケーションリーダー)」と呼ばれる学生スタッフが協力して、子どもたちが目標をクリアできるようにプログラムを考案しています。
缶バッジは世界にひとつの「思い出のかけら」刻み込まれた体験は一生の宝物。
バッジマンネット:
PENSでは缶バッジをどのように活用しているのですか?
中島:
イベントごとに缶バッジを用いたキーホルダーを作成し、活動の最後に「思い出のかけら」として子どもたちに渡しています。
思い出は目に見えないけれど、楽しかった時間を記憶に刻むきっかけとして缶バッジを利用してもらえたら嬉しいですね。
バッジマンネット:
PENSのスタッフが缶バッジの作成やデザインをされているのですか?
中島:
缶バッジは、年間を通した活動は、活動をするGリーダーがデザイン。単発のキャンプなどは職員がデザインしています。
缶バッジはカバンに付けてくれる子どもが多いかもしれません。
イベントごとにデザインは変わるので、何年も通っている子どもたちのカバンには数多くの缶バッジが並んでいます。
缶バッジを眺めながら「この時は楽しかったね」「このキャンプにはあの子がいたんだね」と語り合う時間はかけがえのないものです。
習い事に学習塾、多忙な子どもたちの心地よい居場所でありたい。
バッジマンネット:
PENS神戸校に所属している子どもたちは普段どのような生活を送っているのですか?
中島:
PENS神戸校に所属する子どもたちは、集合場所を芦屋・明石・川西から選択できます。
芦屋、西宮、神戸、明石、川西などから参加していますが、どちらかと言えば、都会に住んでいる子どもが多いかもしれません。
幼稚園や小学校から私立に通っている子どもが多く、高学年になると中学受験にむけて忙しくなる傾向があります。
毎日習い事や塾などで予定が詰まっていて、余白の時間が少ない印象があります。
バッジマンネット:
都会育ちの子どもたちにとって、PENSの活動はハードルが高いのではないでしょうか?
中島:
毎年参加してくれる子どもと初めての子どもでは全く違います。
初めは何もできなくても、自然と触れ合う体験を積み重ねていくことで、危険を察知しながら主体的な遊びができるようになっていきます。
最近は火の存在自体を知らない子どももいるので、子どもたちの安全管理も考慮しながら、どのような体験が適切かを見極めることが大切ではないでしょうか。
バッジマンネット:
昔の子どもたちと比較して、今の子どもたちは違うと感じることがあれば教えてください。
中島:
初めての体験に対して「やったことがないからできない」という恐怖心や警戒感が今の子どもたちは少し強いかもしれません。
ですから、例えば、焚火をするときには、Gリーダーがマッチで火をするところからお手本を見せて、一緒に手を取って火を付けて「やればできる」という気持ちを育んでいます。
それから、自然のなかで思いっきり遊んだ経験が少ないせいか「これ以上やったら危険」という線引きが上手にできない子どもが増えている気がします。
そういった場合には「やめなさい」と頭ごなしに禁止するのではなく、「どうすれば安全にできるかな」と声をかけて、自分で判断する能力を養うようにしています。
PENSで積み重ねた挑戦の数々があるから自分の決断に自信が持てる。
バッジマンネット:
Gリーダー(グローバルエデュケーションリーダー)について詳しく教えてください。
中島:
PENSでは自然の中で子どもたちと活動し、子どもたちの成長をサポートする学生スタッフをGリーダーと呼びます。
毎週1回の安全管理やコミュニケーションに関する技術や価値観を学ぶ研修に参加し、プログラムの準備などを行なっています。
バッジマンネット:
中島さんは、Gリーダーとともにさまざまな活動を行っていますが、ご自身も自然のなかで経験を積まれてきたのでしょうか?
中島:
私は小学生の頃に他団体でキャンプを経験していたこともあり、その団体で高校から大学までキャンプリーダーを行なってきました。
子どもたちと関わったり、キャンプを企画するのはとても楽しかったです。
その時の経験が今のPENSの活動のもとになっています。
バッジマンネット:
中島さんは幼い頃から自然のなかで活動されていますが、同世代の友人と比較して違うと感じることがあれば教えてください。
中島:
子どもの頃から、自然のなかでさまざまな体験をさせてもらったおかげで、実生活においても「とりあえず挑戦してみよう」という気持ちが強いかもしれません。
就職活動では「とにかく安定した職業に就きたい」と考える友人が大多数でしたが、私は「学校以外にも子どもたちと過ごせる場所がある」「学べることがたくさんある」ことに大きな可能性を見出し、PENSで働くことを決めました。
PENSで積み重ねてきた「最初は難しく感じても、一歩踏み出せば意外とできる」という成功体験は、大きな自信につながっています。
子どもたちにとっても、PENSでの体験は、人生における決断を後押ししてくれるのではないでしょうか。
バッジマンネット:
中島さんは、PENSの体験を通じて子どもたちにどんなことを学んでほしいですか?
中島:
活動目的の一つである「センス・オブ・ワンダー」を肌で感じてくれたら嬉しいです。
例えば、図鑑や本で知識として知っている花や虫も、実際に自然のなかで見ると全く違う感じ方をするでしょう。
「自然の紅葉は想像していた赤とは違う」「土は温かい」そういった体験を通じて、感性を磨いてほしいです。
バッジマンネット:
子どもたちと接する時に気をつけていることがあれば教えてください。
中島:
子どもたちが主体的な行動力を伸ばすために、こちらから一方的に指示を出すのではなく、寄り添い、共感することを重視しています。
「どんな匂いがしたの?」「触ってみてどうだったかな?」という質問を通じて、子どもたちは感じていることを言語化する能力が磨かれてきたのではないでしょうか。
限られた時間ではありますが、自然のなかで黙々と集中して遊ぶ子どもたちの姿は非常に頼もしく感じます。
バッジマンネット:
PENSでやってみたい活動や将来の展望について教えてください。
中島:
2022年から、困難な体験に挑戦する「ディスカバリーコース」が始まります。
「ディスカバリーコース」では、舞洲から五月山を目指すロングハイクなどオーバーナイトハイクやサバイバルキャンプなどを企画しています。
私自身もより冒険的なイベントや長期キャンプなどを行いたいと思っております。
より困難な状況に追い込まれることで、人間は新しい自分を発見することが出来るのではないでしょうか。
子どもたちの新たな可能性や普段の活動では発揮されないような個性や才能に出会えることを楽しみにしています。