モーニング発祥の地として知られる愛知県一宮市にある人気店オリーヴの木。
クラシカルで落ち着いた雰囲気の店内には、居心地の良い時間が流れています。
ご両親が喫茶店を経営していたこともあり、自分のお店を持つことが夢だったオーナーの長谷川さんは、25歳で「オリーヴの木」をオープンさせました。
今回は「三岸節子記念美術館」とのコラボ企画での缶バッジ活用法、新たな試みとして始めた「値段のない夜カフェ」についてじっくりとお話をお伺いしています。
「コンセプトがないのがコンセプト」若者からおじいちゃんおばあちゃん、みんなに来てほしい。
バッジマンネット:
こんなにゆっくりと寛げる喫茶店はなかなかないと思います。長谷川さんは、どのような経緯でこのお店をオープンしたのですか?
長谷川:
私の両親は、一宮市がモーニング激戦地になる前から喫茶店を経営していました。両親の働く姿を見て、自分もやってみたいと思ったのがきっかけです。
バッジマンネット:
ご両親は喜ばれたのではないでしょうか?
長谷川:
いいえ、両親は「喫茶店は大変だからやめた方がいいよ」と言っていました。それでも、私は喫茶店をやりたかったので、大学時代には「支留比亜珈琲店」でアルバイト、卒業後は、会社員と平行して休日に友人のお父さんが営む喫茶店と実家の手伝いに励み、経験を積んできました。
3店舗を経て、2020年2月に25歳で居抜き物件を利用して「オリーヴの木」をオープンさせました。
バッジマンネット:
長谷川さんは、25歳で自分のお店を持つなんて凄いですね。お店のコンセプトなどあれば教えてください。
長谷川:
若者の「インスタ映え」や「昔ながら」どちらにも偏らない、20代の若者から100歳のおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなから愛されるお店を目指しています。
オープン前には「ターゲットを絞って推しのメニューを作るべきだ」と仰る方もいました。
でも、私は当時から「ターゲットなんて関係なく、みんなが来ればいいじゃないか」と思っていました。現在も幅広い年代の方に向けたメニュー展開をしています。
目指しているのは、最高に居心地の良い空間作り。お客様が心から寛げる場所を提供したい。
バッジマンネット:
長谷川さんのご両親は、一宮市がモーニング激戦区になる前から喫茶店を経営されていたそうですが、一宮市がモーニング発祥の地と呼ばれている理由について教えてください。
長谷川:
繊維業が盛んだった1950年代、早朝から喫茶店で商談をするお客さんのために朝食をサービスしたのが始まりだといわれています。
その後、繊維業は衰退しましたが「モーニング文化」は継承され、多くの喫茶店が誕生しました。両親が喫茶店を始めた頃には、今ほど多くの喫茶店はなかったそうなので、急激に伸びた印象があります。
バッジマンネット:
実家が喫茶店で、ご自身も喫茶店を経営されているということは、長谷川さんはコーヒーがお好きなのですか?
長谷川:
いいえ、実はコーヒーは好きではないのです。味はもちろん分かりますし、美味しいコーヒーを淹れることはできますが、ジュースの方が好きです。
「喫茶店のオーナーなのにコーヒーが苦手だなんて」と驚かれることも多いのですが、私がやりたいのは「居心地の良い場所作り」。
私は常々「コーヒーは付加価値」と考えています。そのために、学生時代の「支留比亜珈琲店」でのアルバイトなどを通じて快適な空間作りを学んできました。
お客様みんながゆっくりと寛げる場所を提供していきたいです。
オープン2ヶ月後に発令された「緊急事態宣言」。こうしてお店はつぶれてしまうんだなと思う日々だった。
バッジマンネット:
「オリーヴの木」がオープンしたのは2020年2月とお聞きしましたが、コロナ禍でのお店の経営で苦労はありましたか?
長谷川:
オープンした直後に、日本でもコロナが大きなニュースになり、4月には緊急事態宣言が発令。まさに、最悪のタイミングでのオープンだったと思います。
半年で貯金は底をつき、営業してもお客さんは来てくれない。「こんなふうにしてお店はつぶれていくんだな。来月からどうやって生きていこう」と先の見えない日々が続きました。
6月に緊急事態宣言が明けて、お客さんが来て下さった時には「こうやってお店は成り立つんだ」と感動したものです。
バッジマンネット:
今回のコロナ禍では、何十年もお店を経営されてきた方々から「大きな転機になった」という声を聞きますが、長谷川さんは、壮絶な経験をされたのですね。
長谷川:
そうですね。私は「ノーコロナ」時代を知らない駆け出しのオーナーですが、お店を閉めなければいけないところまでいった経験は大きかったかもしれません。
周囲の皆さんの温かさを身にしみて感じました。これからも、みなさんの交流の場であり続けたいと思います。
お揃いの缶バッジで従業員のモチベーションUP!お店全体が楽しい雰囲気に。
バッジマンネット:
一宮市の三岸節子記念美術館とのコラボ企画を通じて、多くの方々からお話をお伺いしてきましたが、仕事に情熱を持った心の温かい方ばかりで素敵な街だと思います。「マ〜ルモーニング」の反響などあれば教えてください。
長谷川:
「マ〜ルモーニング」の缶バッジはとにかく可愛いくて大人気で、土日は缶バッジを求めて多くのお客様が来店されました。
キャンペーン期間中は、従業員も缶バッジをつけて営業しました。従業員同士に一体感が生まれて、仕事へのモチベーションも上がりましたし、参加して良かったと思います。
バッジマンネット:
長谷川さんはどうして「マ〜ルモーニング」に参加しようと思ったのですか?
長谷川:
お店の従業員から紹介されて参加することを決めました。私は、オリーヴの木をオープンさせた頃から「イベントは何でも参加する」という信条を掲げています。
ですから、「マ〜ルモーニング」だけでなく、一宮商工会議所創立100周年記念事業のひとつである「テイクアウトモーニンググランプリ」に参加したり、中京テレビのサスペンスドラマ「あなたは一宮モーニングの謎を解く」ではロケ地の提供も行ってきました。
やはり、何事もやってみなければ分かりませんので、これからも色々なことに挑戦していきたいと思います。
新たな試みは「値段のないカフェ」。予算を気にせず楽しい時間を過ごして欲しい。
バッジマンネット:
それは素晴らしい信条ですね。他にも挑戦されていることや今後の展望などあれば教えてください。
長谷川:
将来的に、店舗数は増やしていきたいと思っています。
最近の新しい試みとしては、お店で働いている大学生の女の子に「間借りカフェ」として金曜日の18時以降、場所を提供しています。
それから、日曜の夜は友人と一緒に「夜カフェ」を始めました。この「夜カフェ」の大きな特徴は、メニュー表に値段がないこと。好きなものを好きなだけ頼んで頂いて値段はお客様に決めてもらっています。
バッジマンネット:
それは面白いですね。収支はどうなっているのですか?
長谷川:
値段は表示していないだけで、一応全て決めているのですが、それと照らし合わせると、今のところ常にプラスです。
例えば「今日はコーヒーだけください」というお客様に「良かったらワッフルもいかがですか?」とサービスした場合「サービスなのでお代は戴かないです」と最初にお伝えしても、召し上がられた分の代金は必ず支払われるものです。
もしかしたら、日本人特有の「義理人情」のような心理が働くのかもしれません。
それから、このシステムでは「今日はこれとこれを頼んで、こんなに楽しかったからこれだけ払おうかな」と最後にお客様が値段を決めます。
サービスを提供する側の私達も「満足して払ってもらうだけの接客をしよう」という高いモチベーションを維持することが出来るので非常に楽しいです。
バッジマンネット:
最近は、望まないサービスや商品には一銭も払いたくないけれども、価値あるもの、満足できるものには幾ら払っても惜しくないという傾向があるように感じます。新しいお店のコンセプト「値段のないカフェ」も良いかもしれませんね。
長谷川:
「値段がない」ことに関しては賛否あって当然だと思いますが、今のところは順調ですし、悪いところがあれば変えていけば良いと考えています。
私が大学生だった頃は、居酒屋さんで「今日はこれだけしかお金がないから、本当はこれも食べたいけれど無理だ」と諦めることが時々ありました。
でも、提供する側になった今、そんなに勿体無いことはないと思います。とにかく、お客様には気になったメニューを全部食べて頂きたい。そして、心から満足してもらえたらこんなに嬉しいことはありません。