子育て中のお母さんたちが集まる子育てサロンとして発足したNPO法人ミーサ・インフォメーション・Net。
活動を続ける中で、子どもたちが次第に成長し、参加者のお母さんたちの相談内容が「子どもが学校に行かない」「大学を卒業したけど自立が難しい」といったものに変化したこともあり、現在、同NPO法人は継続就労支援B型事業所として活動しています。
そんなミーサ・インフォメーション・Netでは、缶バッジを活用した取り組みを行っているそうで、今回は同NPO法人の代表、國弘小百合さんに詳しくお話を伺いました。
バッジマンネット:
ミーサ・インフォメーション・Netさんでは、継続就労支援B型事業所の作業の一部に缶バッジを活用されているとお聞きしました。詳しくお話を伺えますか?
國弘:
継続就労支援事業所にはA型とB型があるのですが、まずはその違いからご説明しますね。
A型は、一般就労に近い形で1週間に出勤する日数や就業時間に規定があり、時給でお給料をいただきます。
一方、私たちB型は4時間の集中力がなくても、週4日の出勤が出来なくても、本人の働きたいという気持ちを大切にしながら、頑張りすぎずにその人に合った働き方が出来ます。
バッジマンネット:
ミーサ・インフォメーション・Netさんが缶バッジを活用されているのは、缶バッジとB型事業所との相性が良いと判断したからなのでしょうか?
國弘:
そうした側面もありますね。一般的に、B型の人たちは一般就労が難しいと言われますが、実際に事業所を立ち上げてみると、適切な支援があれば、それぞれの個性に応じた仕事が生み出せると感じています。そのひとつが、缶バッチ製作です。
缶バッジの制作プロセスは、コピー用紙を丸型にくり抜く、プロ仕様の缶バッジマシンで缶バッジを作る、袋詰めをする、バーコードシールを貼るなど、作業を細分化することができるので、利用者さんの個性にあった仕事を割り振ることができるんですよ。
また、すべての工程は単純な作業でもあるので、働くことに自信を無くしている人でも、短時間で完成する缶バッチ製作のお仕事は、ひとりで商品を完成させられたとその方の自信に繋がり、作業所の中でも人気の作業のひとつになっています。
バッジマンネット:
確かに、缶バッジを作るプロセスはいくらでも細分化することができますよね。イラストが描ける卒業生にデザインをお願いしているようですが、どのようなデザインを描くのでしょうか?
國弘:
主に、地元鹿児島の観光地をモチーフにしたデザインを描いてもらっています。独自の視点で切り取った鹿児島の風景を缶バッジにするなど、クオリティの高いデザインに仕上がっています。鹿児島銀行さんなど、地元企業とのコラボレーションも活発に行っています。
バッジマンネット:
実際に缶バッジを発注されるお客様からは、どのような反響を得られていますか?
國弘:
私たちが制作する缶バッジを見て頂ければわかると思うのですが、どの缶バッジもすごくニッチなテーマを取り扱っています。例えば、鹿児島の池田湖に生息していると言われる未確認生物「イッシー」をモチーフにした缶バッジがあるのですが、これは知る人ぞ知るニッチなテーマですよね(笑)
こうしたニッチなテーマは、なかなか大手さんに発注しにくいんです。こうしたニッチな缶バッジは需要はあるものの、月に何百個も売れていくものではありません。そのため、なかなか商品化に漕ぎ着けることができないという課題があります。そうしたニッチな需要の受け皿として、私たちが依頼を受けているのです。
バッジマンネット:
それは興味深いですね。ニッチな需要の受け皿になることで、販路拡大にも繋がりそうですね?
國弘:
そう思います。実は、缶バッジは利用者さんのスキルを披露する「プレゼンテーション」のような役割を担っていると考えています。
残念ながら、B型事業所が作る製品に対して「安かろう、悪かろう」といったイメージがまだまだ根強いのが現実です。そのため、高単価な布製品などの受注はなかなか難しいのです。
しかし、手始めに缶バッジを納品すると、「一般の商品と同じかそれ以上のクオリティですね」と大変驚かれるんです。
お客様の前でパワーポイントを用意してプレゼンするよりも、事業所で制作した缶バッジをお見せすることが「スキルの証明」になると強く実感しています。実際、缶バッジを起点にして「缶バッジが作れるなら、これは作れますか?あれは作れますか?」と話が広がっていくのです。
バッジマンネット:
スキルのプレゼンテーションツールとしての缶バッジとは興味深いですね。確かに、丁寧な説明よりも現物の方が説得力はありますよね。
國弘:
缶バッジは、私たち事業所の信頼感を醸成してくれていると感じています。お客様のところで、レジ横に設置して缶バッジを販売していただいているのですが、1つ100円程度で販売しているので、買い物のついでに手にとってくださる方が思いの外いらっしゃるのです。
トータルの売り上げは、正直なところ大したことはないのですが、販売するショップに立っている人から見れば、すごく売れているような感覚があるそうです。目の前でお客様が缶バッジを手にする光景を目にしているわけですから、ミーサ・インフォメーション・Netの商品はお客様に支持されているというイメージを作ることができるんです。そして、それが私たちの信頼感に繋がると感じています。
バッジマンネット:
スキルを証明するプレゼンテーションツールになったり、信頼感を醸成するツールになったりと、缶バッジは捉え方次第で活用方法は広がるのですね。
すでに缶バッジをフル活用されているミーサ・インフォメーション・Netさんですが、今後の展望についてお聞かせいただけますか?
國弘:
障がいがある方や生き辛さを抱えている方たちのお仕事の幅が、今後もっと広がっていけばいいなと思いながら日々活動しています。障がいがありB型事業所で働いている人たちは、誰かから助けてもらわないといけないだけの人じゃないということを、もっと広く知って頂ければと思っています。
一括りにせず、しっかり技術を持っている人がいる、人並外れた集中力を持つ人がいる、ということをしっかりと知っていただきたいと思っています。そういった部分を知ってもらうためのツールとして、今後缶バッジを活用していきたいと思っています。
実は現在、鹿児島県内43市町村をモチーフにした缶バッジ【さつマグネ】を制作していて、ガチャガチャやレジ横などを通じて販売する計画を立てています。こうした取り組みを起点に、B型事業所やそこで働く人たちのことを広く知ってもらえるよう、今後も活動を続けていきます。