皆さんの周りに刺繍(ししゅう)が施された製品はあるでしょうか?

よく目を凝らしてみると、ハンカチ、Tシャツ、バッグなど刺繍は至るところに施されており、私たちが思っている以上に刺繍は身近な存在だと言えます。

そんな刺繍はハンドメイドブームの波に乗って、ここ5年ほどで一気に注目が集まる存在になりつつあるようです。
そこで今回は、弊社の缶バッジを愛用していただいている、手芸・刺繍雑貨ブランドKanzar Koboを主宰する堀内さや乃さんに詳しくお話を伺ってきました。



今回は布を使った缶バッジの例をご紹介させていただいておりますが、本来は非推奨の行為となっております。そのため、布を使ったことによる不具合に対する保証は一切いたしておりませんのであらかじめご了承ください。
(Kanzar Kobo様には事前にすべてご承知の上でご利用いただいております。)




バッジマンネット:
缶バッジに刺繍を取り入れる取り組みに挑戦されているKanzar Koboさんですが、そもそも刺繍と缶バッジを組み合わせようとした理由は何だったのでしょうか?

堀内:
私たちは2014年に創業した小さな工房でして、刺繍製品を主に作っています。刺繍は縁遠いものと思われがちですが、よく周りを見渡してみると刺繍製品は暮らしの至るところで見つけることができます。

そんな刺繍の魅力を伝えたい。その時、缶バッジと組み合わせたら面白いのではないか、そう思ったのです。

バッジマンネット:
刺繍雑貨屋さんが刺繍のPRを目的に缶バッジを活用するという点は興味深いと感じました。「缶バッジ×刺繍」というお話を最初に伺った時は正直驚きましたが(笑)

堀内:
前例がないと仰っていましたもんね(笑)でも、事前に相談させて頂いたおかげで、紆余曲折あったものの、ようやく商品化に漕ぎ着けることができて嬉しく思っています。

刺繍の布地を丸くカットして、あえてフィルムは使わず刺繍の質感を伝えることができてすごく満足しています。




バッジマンネット:
刺繍を缶バッジ化する上で何が一番大変でしたか?

堀内:
やはり布地と缶バッジの組み合わせが一番大変でしたね。缶バッジや缶バッジマシンは「紙の台紙」を使うことを前提に作られていますよね。でも、布地は硬いので既存のカッターではなかなかくり抜けないんですよ。だから、工房にある様々な道具を使ってくり抜き方を模索しました。

バッジマンネット:
確かに、通常のカッターでは布地をくり抜くのは難しいですよね。実際にくり抜いた布地は問題なくプレス加工できましたか?

堀内:
実はそこでも壁にぶち当たりました!缶バッジマシンでプレスする時、布地が引っ張られるので、どうしても刺繍のデザインが歪んで崩れてしまうんですよ。これもチームの皆でアイデアを出し合いながら、なんとかデザインが歪まない方法を見つけ出しました。結局、気づいた時には半年の期間が過ぎていました…(笑)




バッジマンネット:
半年も… ちなみにお客様の反応はいかがでしょうか?どのようなお客様からお問い合わせがありますか?

堀内:
可能な範囲でお伝えすると、某アイドルグループの会員様に向けた個数限定のグッズとして提供したりしていますね。あと、キャラクター物が多い印象です。

実はアイドルグッズやキャラクターグッズの市場はすでに缶バッジが飽和状態なんです。とは言え、缶バッジの需要はまだまだある。そこで、思わず目に留まる「刺繍の缶バッジ」を検討くださる方が増えてきたんです。缶バッジが飽和している業界でも、刺繍の缶バッジであれば勝算はあると思います。




バッジマンネット:
なるほどそれは興味深いお話です。確かに、大規模なイベントで大量に配布するとなると、従来の缶バッジに強みがあるかもしれませんが、個数限定の缶バッジであれば、刺繍を活用した個性的な缶バッジの方が付加価値が出せますよね。

堀内さんは長年、刺繍のお仕事に携わってこられたわけですが、刺繍の強みをどのようにお考えですか?

堀内:
実は私はもともとデザイナーとしてデッサンの仕事を生業としてきた身でして、印刷物を数多く手がけてきました。自分のキャリアを考えた末、途中で刺繍の世界に飛び込んできたのです。

印刷物だとどれも同じように見えますが、刺繍だと光のあたり具合によって陰影ができたり、同じデザインのものでも糸の種類によっては若干の歪みが出たりなど、一つ一つが微妙に違って見えるんですよ。個性的なものが求められる時代に、刺繍に強みを感じています。




バッジマンネット:
缶バッジが様々な業界に活用されていく中で、刺繍缶バッジのような個性的な缶バッジはこれからどんどん求められるような気がします。

堀内:
実際に刺繍缶バッジを制作してみて、すごく競争力がある商品だと感じているんです。

缶バッジは簡単に作れることが売りで、それは言い換えれば参入障壁が低いことを意味すると思います。つまり、普通の缶バッジを作っていたらすぐに人に真似されてしまうんです。

デザイン以外の面でも、普通の缶バッジは大量生産ができるので、あっという間に価格競争にさらされることになってしまいます。でも、我々のように小さな工房では大手企業のように価格で勝負することは難しいです。

しかし、刺繍に関する深い知識と長期間の開発プロセスを要する刺繍缶バッジであれば、我々でも十分に勝負することができる。その意味において、私は刺繍缶バッジに大きな期待を寄せているんです。




バッジマンネット:
仰るように、缶バッジは参入障壁が低い商品です。これは缶バッジの最大の強みであり、最大の「弱み」でもあると思っています。刺繍を活用して缶バッジの弱みを「強み」に転換したKanzar Koboさんの手法は、小規模な缶バッジメーカーにとって参考にすべきモデルケースになりそうです。

最後に刺繍缶バッジの展望についてお聞かせいただけますか?

堀内:
我々は小さな工房なので、まだまだ商品の広告宣伝を行うことができていません。しかし現状、刺繍缶バッジを納品したお客様を通じて「口コミ」の広がりがすごく大きくなってきています。つまり、それだけ商品に強みがあるということなのです。

商品開発はもちろんのこと、今後はもっと多くの人に刺繍缶バッジを知っていただけるよう頑張りたいと思います。もし、刺繍缶バッジに関して気になる点がございましたら、お気兼ねなくご連絡いただけばと思います。