平成11年1月11日11時11分に、20世紀最後の鉄道というキャッピコピーで新生した井原鉄道。

もともと国鉄時代の1966年に建設が始まったものの、国鉄再建法によって建設が凍結された井原線を地元が引き受ける形で生まれたのが井原鉄道です。

今年で創業から21年を迎える井原鉄道は、岡山県総社市の総社駅と広島県福山市の神辺駅を結ぶ全長41.7kmの路線を展開しており、路線の8割が高架を走行することから、車窓からの眺めを求めて沿線外からの観光客に人気を集めています。
そんな井原鉄道ではプロモーションの一環として缶バッジを活用しているそうで、今回は同社営業企画課課長(兼)井原駅長の鳥越肇さんに缶バッジの活用方法と、今後の運用計画についてディスカッションをしました。




バッジマンネット:
井原鉄道さんのホームページを拝見したところ、車窓からの絶景が印象的でした。

鳥越:
弊社の鉄道は高梁川という一級河川に設置された鉄橋の上にありまして、普通鉄橋と言うと直線なのですが、弊社のものは曲線で長さが750mもあるんですよ。また、運転席のすぐ横まで来ることができるので、圧倒的な風景を目や写真に収めて楽しんでいただけることが特徴です。

バッジマンネット:
多くの観光客の方が足を運ばれるそうですが、観光客と地元利用客との割合はどれくらいなのでしょうか?
鳥越:割合としては、生活利用が全体の6割、残り4割が観光客等の方のご利用となっています。




バッジマンネット:
コロナの影響で利用者の割合に変化はあったでしょうか?

鳥越:
井原鉄道はローカルなので生活の通勤通学のお客様などは沿線学校の休校の影響を除けば通常通りご利用いただいています。田舎なので都市部のようにテレワークが進まず通勤利用者はあまり減っていないのです。一方、観光のお客様は現在はほぼゼロに近い状態です。

バッジマンネット:
厳しい状態が続く中でも社会インフラである鉄道会社は簡単に事業縮小などはできないですよね。井原鉄道さんではプロモーションの一環として缶バッジを運用されているそうですが、具体的にはどのように缶バッジを活用しているのでしょうか?

鳥越:
それぞれ季節ごとのイベントの缶バッジを社内で作成して、販売したり配布したりしていますが、反響が大きかったのは平成30年の西日本豪雨での復興イベントで作成した缶バッジです。

復興に際して、井原鉄道では「頑張ろう岡山」、頑張ろう西日本」のスローガンを掲げたヘッドマークを車両に設置しました。地域を支えるローカル鉄道として、このヘッドマークと同じデザインの缶バッジを作って、井原鉄道の沿線で復興イベントが開催された際には先着50名の方に缶バッジをプレゼントすると言う試みを行いました。

バッジマンネット:
配布した缶バッジの数は50個と、数はあまり多くないですが、反響はいかがでしたか?

鳥越:
確かに配布数は少なかったのですが、こうした缶バッジを作って配布することでメディアに取り上げられ、話題になったんですよ。




バッジマンネット:
それは興味深いお話です。確かに「形があるもの」であれば、メディアが扱いやすいですよね。配布する缶バッジの数が少なくても、メディアに取り上げられればレバレッジを効かせて露出を増やすことができるというわけですね。

鳥越:
ありがとうございます。缶バッジ自体は販売も行っているのですが、物販で見込まれる売り上げというのはそんなに大きくありません。そのため、弊社では「PRのツール」としての側面が大きいと思います。社会のトレンドに合わせて「旬な缶バッジ」を企画することも、メディアに取り上げられる上で重要な戦略かと思います。

バッジマンネット:
ちなみに井原鉄道さんでは、これらの缶バッジは自社で作成しているのでしょうか?

鳥越:
はい、基本的に弊社の女性社員たちが率先して制作に携わってくれています。社内でデザインしたものや、公募で集めたデザインを弊社の社員が缶バッジにするという形になります。

バッジマンネット:
これまでなかった「缶バッジを作る」という業務が社内に生まれたことで、社内や社員さんの間で何か変化はあったのでしょうか?

鳥越:
実は缶バッジを扱い始めてから、社内での提案が増えるようになったのです。例えば、先ほどのヘッドマークの話も、最初は缶バッジを作る予定ではなくて、社内で「せっかくプロ仕様缶バッジマシンがあるのだから、何かやりましょうよ!」と声が上がったんです。

従来だったらそこで終わったものが、缶バッジがあることで一歩踏み込んだ取り組みをすることができるようになりました。その結果、メディアにも取り上げられるようになったので、数値では測れない価値を生み出してくれていると思います。




バッジマンネット:
社員さんから声を引き出し、そのアイデアや提案を具現化するツールとして缶バッジが機能しているのですね。それはすごくありがたいことです。

これまで広報ツールとして、あるいは社員さんの声を引き出すツールとして活躍してきた缶バッジですが、コロナによって状況は一変しましたよね。社会情勢の変化に伴って、缶バッジの運用方法も少しずつ変化を加える必要があると思います。井原鉄道さんでは今後どのような缶バッジ運用を計画しているのでしょうか?お話しできる範囲でお聞かせいただけますか?

鳥越:
実は岡山県はデニムの名産地で、中でも井原市はデニム生地の一大産地なのです。あまり知られていないことですが、イタリアのある高級ブランドの生地もここ井原で作られていて、世界屈指の生地生産地なんですよ。しかし、そうした情報は普段なかなか外に伝わらない。

地域の鉄道として、地域の広報役になりたいと思い、こうしたデニム生地を使った変わった缶バッジを作って地元のPRを行っていきたいとも考えているんです。デニム生地で作られた缶バッジは存在しないと思うので。




バッジマンネット:
実は弊社のお客様の中に、刺繍生地を使った缶バッジの制作された方がいらっしゃるんです。

基本的に缶バッジは台紙に紙を使うことを前提にしているので、布製品を缶バッジに応用するとなると、布が寄れてしまってデザインが崩れたりするなど思いのほか商品開発に手間取るんです。実際、そのお客様は刺繍の缶バッジの開発に半年もかかりました。刺繍を専門とするお客様にも関わらずです。



ですので、デニムを使った缶バッジも同様に商品開発に困難が伴うかと思いますが、同時に開発に手間がかかるものは簡単には真似できない参入障壁が高いものになるので、もしデニムを使った缶バッジの制作を検討されるようでしたら、お気軽にご相談くださいね。

鳥越:
それは心強いです。ありがとうございます。これからも缶バッジを活用した取り組みを続けていきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。