福岡県福岡市に拠点を構える福岡大学水工学研究室では、「未来のまちづくり」をテーマに環境と開発の両立を目指した研究が日夜行われています。
そんな 福岡大学 では地域住民や地域の子供たちを巻き込んだアクティビティを数多く企画しており、その中で缶バッジを活用しているそうです。
そこで今回は同研究室の伊豫岡(いよおか)先生に詳しくお話を伺ってきました。
住んで幸せな街をつくるには、開発と環境保全を両立しなければならない
バッジマンネット:
伊豫岡先生はそもそもどういった研究を行っているのでしょうか?
伊豫岡:
簡単にお伝えすると、「私たち人間が幸せになる街」をつくる技術について研究しています。私がいる学科はいわゆる「土木」を学ぶ学科なのですが、私は環境や生物を切り口に環境と開発が両立できる街づくり、特に水に関わる分野を研究テーマとしています。
私たちの暮らしを便利にするためには都市開発はなくてはならない存在ですが、どういった技術があれば環境を保全しつつ安全で豊かな生活を実現することができるのかを研究しています。
バッジマンネット:
そうした研究の中で缶バッジはどのように使われているのでしょうか?
伊豫岡:
缶バッジは子ども向けの環境学習に活用しています。後から学習会で学んだことを思い出しすことができる意味で、自宅に持ち帰ることの出来る缶バッジの効果に期待しています。環境学習で学んだことを子どもたちに缶バッジを使って表現してもらっているのです。
バッジマンネット:
環境学習では具体的にどのようなことを子どもたちに伝えているのでしょうか?
伊豫岡:
私たちは近隣の大学の先生たちと「あまみず社会研究会」という組織で雨水を一時的に貯めたり,地面に浸透させたりして川にゆっくり流す社会システムの研究を行なっています。近年問題となっている都市での水害は、実はこれまでの街づくりのあり方が原因といえます。’
つまり、地面をコンクリートやアスファルトで覆い、降った雨を側溝やマンホールに流すことで雨水が速やかに川にたどり着くまちづくりを行ってきた結果,川を流れる水があっという間に増えて氾濫するケースが出てきました。
特に福岡市のような都市化が進んだ街にそのような問題が表面化しているため都市型水害と呼ばれています。これまでは河川改修や大型の貯水施設を作ることで対応してきていましたが、近年の豪雨の頻発によりこのような整備も追いつかなくなってきています。
このような都市型水害を防ぐためにはどうすればよいか考えると、川に流れ込む水を減らせば良いという事になりますよね。
そのためには、できるだけ多くの家で庭に水をしみこませたり雨水タンクに水を溜めたり、アスファルトではなくて地面に浸透するような舗装をしたり、もともと自然に備わっている機能をインフラとして活用する街にしていくことにたどり着きます。そういったこのような概念を子どもたちに分かりやすく伝えるのが研究会での私の役割の一つです。
缶バッジをみれば、子どもたちの理解度が一目瞭然になる
バッジマンネット:
水とうまく付き合う街づくりの話を子どもたちに伝えると言うことですが、環境学習と缶バッジの相性は良いのでしょうか?
伊豫岡:
相性はとてもいいですね。缶バッジ自体は私が赴任してくる10年以上前から研究室で実施している環境学習に導入されていたのですが、当時はお土産のような形で子どもたちに提供していました。お土産として配布するのも悪くはないのですが、最近は少し意味のある缶バッジ運用を行なっています。
数年前から、子どもたちに環境学習で学んだことをデザインしてもらって、それを缶バッジにして持ち帰ってもらうことにしたんです。デザインを行うことで、学習の内容を楽しく振り返ることもできますし、子どもたちのデザインを見れば我々の考えが伝わっているのか一目瞭然です。
バッジマンネット:
確かに、子どもたちに缶バッジのデザインを任せれば、彼らの理解の度合いを把握できますし、次回以降のイベントの内容もアップデートしやすくなりますよね。
伊豫岡:
はい、その通りです。ただ、私たちは研究の大まかな概念や考え方は伝えるものの、子どもたちに技術を教えるわけではありません。あまみず社会の実現は、もともと自然が持つ機能を活用することから、身近にある自然を大事にする心を育てることがその一歩とも言えます。子供たちにとっては、実際に川に入ってみて自然や生物に触れたりすることが何よりも大事なのかもしれませんね。
子どもたちへの教育が将来の街のあり方に影響を与える
バッジマンネット:
それはどうしてでしょうか?
伊豫岡:
子供のころの経験は大人になった時に持っている価値観にすごく大きな影響を与えるものです。つまり、身近な川で遊んだ経験のある子どもたちであれば、大人になってまちづくりに携わる時「あまみず社会」の価値にきっと気づいてくれることでしょう。そういう子どもたちを増やしていくことが、我々が考えている世界を実現する近道なんだと思います。
バッジマンネット:
研究の概念を伝え、その上で実際に川に入ってみることで環境への理解や関心が深まるということなのですね。
伊豫岡:
それに加えて、最近では戦隊モノを使った「あまみず社会」の概念を伝えるイベントも行なっているんですよ。
「アマミズタメルンジャーZ」と言う戦隊モノなのですが、みんなで力を合わせれば雨から街を守ることができるというメッセージが込められています。庭に水をためたり、木を植えたりして、みんなが少しずつ雨水をためることで豪雨を降らせる「都市型水害マン」から街を守るというストーリーです。
バッジマンネット:
なるほど、「都市型水害マン」をみんなで力を合わせて撃退するというストーリーなのですね。
伊豫岡:
そうですね、でも厳密にはこのストーリーに悪役はいません。雨が全く降らないと困りますから、雨が悪者というわけではないですよね。ただ降りすぎるから困るんです。「アマミズタメルンジャーZ」は「都市型水害マン」と闘うのではなく、いろんな技(技術)を使って、最後には子供たちの力も借りて雨を「受け止める」、戦わない戦隊モノですね。
イベント終了後には、記念撮影を求める子どもたちで溢れ返るなど大盛況でしたよ。もちろん記念品には缶バッジを使わせていただきました。
屋内イベント、屋外イベント、戦隊モノといろいろなことにチャレンジしてきましたが、子供たちには私の理想とする街づくりを実現する仲間になってほしいと思っています。そのツールとして缶バッジには大きく貢献してもらっています。これからも新しい取り組みに挑戦したいですね。