音楽ビジネスの中心に「CDの売上げ」が位置していた数年前までと比べ、動画配信サービスやSNSなどと音楽の楽しみ方が多様化するにつれて、業界を目指す人々の活躍の場も広がるようになりました。

しかし、無料のコンテンツと有料のコンテンツが入り混じるなど、音楽ビジネスそのものが複雑化してきているため、歌唱力や演技力などのアーティストとしての技量だけでは成功するのが難しくなってきていると言うことができるかもしれません。

そうした状況に対し、アーティストをサポートするためのマネジメント能力や企画力などを兼ね備え、変化する業界に対応できる人材を輩出しているのが、音楽や芸能、楽器の専門学校である、 専門学校ESPエンタテインメント東京 です。

取り組みの一環では缶バッジも活躍しているそうで、今回は音楽芸能スタッフ科 ファンクラブ/デザインコースの皆さんにお話を伺います。



音楽芸能スタッフ科 ファンクラブ/デザインコース2年生の皆さん。左から順に浦部莉衣(うらべ りえ)さん。木村茜(きむら あかね)さん。河角美優(かわすみ みゆ)さん。鈴木美帆(すずき みほ)さん。

マネタイズのポイントが、ライブ・グッズ販売・ファンクラブ運営へと変化する音楽ビジネス

オーダーメイド・ギターメーカーである(株)ESPが、1983年に日本ギター製作学院というギター職人を育成する学校からスタートした、専門学校ESPエンタテインメント東京。

楽器の製造や修理に携わる人材だけではなく、アーティストなどの表舞台で活躍する人材や、音楽ビジネスを支える「裏方」の人材の育成にも力を入れている点が特徴的で、4つに分かれた学科と細分化した33のコースで、専門分野に特化した知識を提供しています。

お話を伺うと、音楽ビジネスの収益構造が変化していることにより、ライブの企画力やバンドのマネジメント能力などの「裏方」の人々の持つスキルの重要性が近年徐々に高まり始めていると、以下のように教えてくださいました。



専門学校ESPエンタテインメント東京、本館。表舞台に立つ人材を育成する「音楽アーティスト科」と「芸能タレント科」に加え、音楽ビジネスの裏方を担う人材を育成する「音楽芸能スタッフ科」と、楽器の製造や修理に携わる人材を育成する「楽器技術科」の4つの学科に分かれている。

「モノが売れない時代なので、CDの市場は小さくなっているんですけど、その一方で『何かを体験すること』にお金を払う人が増えているんです。最近だと、ライブの動員数というのは年々増えているんですね」

「例えば私たちも、普段バンドの何に対してお金を使っているかと言えば、ライブやグッズ、ファンクラブに使うことが多いんです。ペンライトやタオル、ラバーバンドなどは、バンドを応援する上で必需品のようになってきているんです」

「だからビジネス的にも、ライブやグッズ販売に力を入れ始めている傾向があって、音楽ビジネスの形も少しずつ、そっちの方向にシフトしてきていると思います」




「それに加えて最近だと、ライブのチケットがQRコードになったり、バンドの会報誌がウェブ版になったりして、音楽業界でも電子化が進んでいるんですね」

「でも、チケットとかを記念として手元に残しておきたいという方もたくさんいらっしゃいます。なので、電子化すると便利な反面、何かを集めたいっていう方には向いていないと感じる時もあるんです」

「そんな中でも、物販に並べられるグッズはデジタル化することがありません。だから、手元に何か残したいって思った時にグッズを買ってくれる人はこれからも多いと思うんです」



企画から制作まで、全て学生が担うことで、実践的なマネジメントスキルを得ることができる

手に持っているのは、一から自分たちで制作しているバンドの会報誌。MV撮影の様子や、普段は明かされないバンドの裏側のエピソードなど、マネジメントしているバンドについての詳細な情報が盛り込まれている。

このように、物販などのマネジメント能力の重要性が高まっている現在、「音楽芸能スタッフ科」でまさにそれらの専門知識を勉強している皆さんは、実践的なスキルを身につけることが専門学校ESPエンタテインメント東京の特徴だと語ります。

「私たちはファンクラブ/デザインコースなので、バンドグッズや会報誌、ファンクラブ運営などの面からバンドのサポート方法を学ぶんですけど、学校のルールに従いながら、企画から発注、制作までを自分たちで実際に行いながら勉強していくんです」

「例えば現在だと、『abysmal flock(アビスモルフロック)』というバンドのマネジメントを実際に私たちが行っています。その一環で、音楽関連に特化したウェブサイトを運用しているんですけど、そのサイトが特徴的なのが、記事を見るたびにポイントが溜まるという仕組みになっているんですね」

「そのサイトには、バンドのライブ情報やメンバーのブログなどが掲載されているので、そのサイトのポイントが溜まる仕組みを活用して、ポイントごとにオリジナルの特典を作ろうと考えたんです。その時にちょうど良かったのが缶バッジでした」



abysmal flockでVo./Gt.を務める、河崎駿平さん。

「abysmal flock がターゲット層に捉えているのが10代後半〜20代前半の私たちと同じくらいの年代の方ということもあって、バンドが好きな若い子たちには缶バッジが良いだろうなという考えがもともとありました」

「でも、普通の缶バッジだと、ちょっと普通すぎるという意見もあったんです。それに、コレクションみたいにして、家に置きっぱなしにされてしまう可能性もあるかなと考えました」

「そこで、『自分たちが貰ったらどうかな』って改めて考え直したら、缶ミラーっていうアイデアが浮かんだんですね。私たちくらいの若い世代って鏡を持ち歩く人が多いので、缶ミラーの方が普段使いしてもらえるんじゃないかと思ったんです」

「それに、周りの人たちからは表面のデザインが目に入るので、『それなんのミラー?』という会話から始まって、『abysmal flock っていうバンドのミラーだよ』っていう会話まで繋がるんじゃないかなって、そこまで考えて缶ミラーを作ろうという話になったんです」



実際に作っている缶ミラー。裏面が鏡になっていて、表面にはバンドメンバーのイラストがプリントされている。

このように、企画の段階から試行錯誤を繰り返し、実践を通してマネジメント能力を身につけていく専門学校ESPエンタテインメント東京の学生の皆さん。

音楽ビジネスのこれからを担う、感度の高い若い方々にも缶バッジが役立っていると知ることができ、缶バッジの今後にも明るい未来を感じます。