
愛知県一宮市にある洋菓子店シトロンヴェール
店内には、お姫様をイメージした「プリンセスシリーズ」のケーキ、地元一宮産のハチミツをふんだんに使った焼き菓子など、見た目にも可愛く素敵なスイーツが並んでいます。
特に、事前に1時間かけて予算やデザイン、使用してほしいフルーツやクリーム等をお客様から細かくヒアリングして完成する「プレミアムデコレーションケーキ」は大人気。
世界にたった一つのケーキを求めて遠方からも多くのお客様がご来店されます。
今回は、従業員みんながイキイキと輝くお店作りの秘訣や「マ〜ルモーニング」とのコラボレーション企画で使用した缶バッジのお話をじっくりとお伺いしました。
丁寧なヒアリングを経て完成する世界でひとつの特別なケーキ。

バッジマンネット:
シトロンヴェールさんでは、特注のホールケーキを予約する前に、1時間かけてヒアリングをされるとお伺いしています。具体的にどのようなヒアリングをされるのですか?
加藤:
完成したケーキの写真を見て頂くと分かりますが、文字の大きさや色、アイシングクッキーのデザイン、使って欲しい果物、クリームの感じなど細かくご要望をお聞きします。シンプルなホールケーキは約3,000円ですが、お客様のオーダーによっては15,000円になることもあります。
バッジマンネット:
私達が子供の頃に15,000円のケーキなんて想像もつきませんでした。やはり手間がかかるのでしょうか?
加藤:
そうですね。手間だけでなく時間もかかります。アイシングで顔を描くだけでも1〜2時間はかかります。もちろん、特注のケーキを始めた頃は、10,000円を超えると「高額になってしまうけれど大丈夫かな」と私達もドキドキしていました。

でも、Instagramにケーキの写真と共に投稿されたコメントなどを読んでいると、お客様が心から満足している様子が伝わってくるので、それを励みに頑張っています。
バッジマンネット:
お客様はInstagramに投稿することも含めて楽しんでいるのかもしれませんね。特注ケーキの需要があるにも関わらず、シトロンヴェールさんのようなお店をあまり見かけない気がしますが何故でしょうか?
加藤:
お客様から細かくオーダーを伺って作り上げるケーキは時間も手間もかかります。「特注ケーキ」を提供したくても、パティシエが少ないことや労働時間などの問題もあって難しいのではないでしょうか。
私達のお店では、事前にお越しいただいてヒアリングすることが条件でお受けしていますが、車で2時間かかるような遠方からいらっしゃるお客様もいらっしゃるので、仰る通り需要はあると思います。

以前、鬼滅の刃のケーキを販売して著作権違反の疑いで逮捕される事件がありました。その時、「ケーキに15,000円なんて高過ぎる」というコメントをいくつか拝見しましたが、実際に15,000円はかかるものです。
少子化の影響で、お金がかかったとしても、世界にひとつの特別なケーキで子供を喜ばせたいという親御さんが増えているのかもしれませんね。
お客様が欲しいのは「愛する人の笑顔」。お菓子を通じて幸せを提供したい。

バッジマンネット:
シトロンヴェールは、ケーキはもちろんですが、足を踏み入れた瞬間から居心地の良さを感じる素敵なお店だと思います。加藤さんがお店を始めたきっかけなど教えてくだい。
加藤:
私は、工業高校2年の時に父を亡くしています。卒業を前に進路を問われた際に「とにかく生きるためには食べていかなくてはいけない」と考えて、食品関係を志望しました。
最初は大手のパン屋さんを考えていましたが、名古屋の有名なケーキ屋さんを紹介されたのでそこに就職。その後、岐阜、一宮市の洋菓子店を経て21年前にシトロンヴェールをオープンしました。
バッジマンネット:
加藤さんが、お店が変わっても一貫してパティシエの仕事をされている理由があれば教えてください。また、パティシエの仕事で苦労はありましたか?
加藤:
高校を卒業して最初のお店に就職した時に、一生この仕事を続けようと決めました。特別な理由があったわけではなく、仕事を頻繁に変えるのは良くないと考えたからです。
苦労したのはマネジメントです。昔はとにかくマネジメントが苦手でしたが、勉強を積み重ねて少しづつマネジメントが出来るようになってきました。現在は、勤続9年の福田チーフがいてくれるので非常に心強いです。

バッジマンネット:
加藤さんがマネジメントに対する苦手意識を払拭するきっかけになった出来事などがあれば教えてください。
加藤:
お店をオープンして2〜3年目の頃、「1店舗で5億円を売り上げる洋菓子店」の社長が開催する講演会に参加しました。1店舗で5億円は驚異的な売上げです。
講演後の質問タイムで「男性のパティシエを集める方法を教えてください」と訊ねた参加者がいたのですが、その時に閃いたことが現在のマネジメントの基礎になっています。
バッジマンネット:
そのような質問が出るということは、男性パティシエの採用に関して悩んでいる洋菓子店が多いということですか?
加藤:
そうですね。一般的に、男性はパティシエになるなら、街の洋菓子店ではなく労働環境が整備されたホテルなどを選択する傾向があります。
でも、仮にそうであるならば「男性が一生働いて自分の夢を実現出来る、将来を描ける可能性のあるお店」にしようと思いました。
それから、シトロンヴェールが売っているのはお菓子やケーキではありません。お客様が欲しいのは「愛する人の笑顔」。私達はお菓子を通じて幸せを提供しているのです。
そういったお店の理念を若い社員やパートさんにみんなで共有して、やりがいと楽しさを感じるお店を作っていきたいと考えるようになりました。
従業員それぞれが才能を開花させて、楽しく働いてくれたら最高に嬉しい。

バッジマンネット:
どのような仕事もそうですが、やりがいや楽しさを感じられることは大切ですね。シトロンヴェールさんは従業員の方がみんなイキイキしていて良い気が流れているのが分かります。何か工夫をされていることはありますか?
加藤:
私が他店舗のパティシエだった頃は、長時間の労働に加えて、上司からの要求は厳しく過酷な毎日でした。でも、高い技術を習得するという目標があったからこそ頑張ることができました。
しかし、パートさんの場合、最も大切にすべきなのは家庭で、その次が仕事。パートさんの仕事は家庭を潤す手段のひとつです。だからこそ、パートさんにとって楽しくやりがいのある職場でありたいと考えています。

例えば、現在、店内のポップ全てを担当しているのも、ディスプレイ全般をお任せしているのも、全てパートさんです。見て頂けると分かりますが、みなさん一流の素晴らしい技術をお持ちです。パートさんそれぞれが才能を開花されて、イキイキと働いて頂けたらこんなに嬉しいことはありません。
みんなの気持ちがひとつになった「マ〜ルモーニング」の缶バッジ

バッジマンネット:
それぞれが才能を活かして働ける職場は素晴らしいと思います。シトロンヴェールさんではどのように缶バッジを活用しているのですか?
加藤:
一宮市による「オバケのマ〜ルモーニング」の企画で、ケーキを注文された方に缶バッジをプレゼントしていました。マ~ルシリーズを手がける絵本作家の方や缶バッジを集めているお客様にもお越し頂いています。
それから、マ~ルの缶バッジがとっても可愛かったので「せっかくだからみんなで付けよう!」ということで従業員みんなで付けてみたところ、気持ちが一つになり、団結力がアップしました。かれこれ3〜4ヶ月は付けているでしょうか。一宮市が盛り上がるのは良いことだと思います。
私達のお店でもオリジナル缶バッジを作ってみたいのですが、どのような使い道があるのか模索中で、何か良いアイディアがあれば教えて頂きたいです。

バッジマンネット:
イベントなどで活用する話はよくお聞きしますが、飲食店での利用についてはあまり例がないので調査しておきます。シトロンヴェールさんの今後の展望などあれば教えてください。
加藤:
コロナ禍の巣ごもり需要でスイーツ業界全体の景気は良くなっています。ただ、コンビニや百貨店のスイーツが年々進化を続けているので、街の洋菓子店にとっては厳しい状況です。
そんな時代に「わざわざ足を運ぶ意味があるケーキ屋さん」でなければ生き残れません。そのために、注力すべきは「商品」ではなく「働く人」。
例えば、シトロンヴェールでは凄いケーキを作る若いパティシエがいますが、採用当初は何も出来なくて驚いたものです。でも、みんなで良いところを褒めているうちに、どんどん才能を開花させて輝き始めました。

もし、彼女の出来ないことばかりを指摘して、歯車の一つとして扱っていたら、ここまで凄いパティシエになれなかったのではないでしょうか。「働く人」が良くなれば、自ずと商品も良くなっていく。私はそう信じています。
これからも、従業員と気持ちをひとつにして、みんなの意見を聞きながら、お客様に笑顔を届けられるお店を作っていきたいです。