ご存知のように2025年に大阪にて万博が開催されることになります。

オールジャパンで取り組んだ誘致活動は厳しい道のりだった事は想像に易いです。

万博の誘致活動には2つの基本方針がありました。
1つは『海外誘致活動』です。
より多くの国が大阪を支持してくれるよう、国・自治体・経済界のチャンネルを活用し、国際的な場で魅力を発信し支持を得るというものです。
そしてもう1つが『国内機運醸成』(ムード作り)です。
これは日本が他の立候補地に比べ、最も有力な候補地としてのムードが醸成されている事を目指しました。

なぜ機運醸成を図るのか?

海外での支持を得るための活動は候補地の選出方法が各国からの投票方式であることから重要なのは理解できます。しかしなぜ機運醸成つまり候補地としてのムード作りが重要だったのでしょうか?

その答えは簡単です。
それは博覧会主催国の選出、博覧会開催の監督を行う博覧会国際事務局(BIE)への『候補地として盛り上がっていますよ』というアピールです。

なぜ機運醸成が重要なのか、東京オリンピックを参考にして説明します。

当時、オリンピックの候補地として名乗りを上げていたスペインのマドリードとトルコのイスタンブールは政治経済情勢の不安定が最大の懸念事項とされていました。

その反面、東京は政治経済の不安定要素はないものの、国内におけるオリンピック開催支持率が50%を切るという点が大きな問題だったのです。
(※この時、イスタンブール:73%、マドリード:78%)

自国内の開催支持率が低ければオリンピック誘致はモチロン、開催運営能力を疑われるのは必定です。
国内支持率を盛り上げる為に、各種パンフレットの作成やオリンピックグッズの配布。経済界での支持獲得活動や国・地方議員による各種の広報活動など地道なPR活動を続けた結果、国内支持率は70%の最低ラインを確保。
最大懸念を払拭し誘致成功へと弾みをつけたのです。

大阪万博誘致での機運醸成

大阪万博の誘致過程でも『誘致に向けてさらなる機運醸成を図る』というフレーズは、テレビや新聞、雑誌などでよく見聞きしたはずです。
では、大阪府が行った機運醸成への具体的取り組みは何か?
大阪にお住まいの方ならお分かりですね。

街のいたるところに万博誘致のポスターや横断幕。市バス・鉄道には万博専用ステッカーが貼られ、大小関わらずイベントでのアピールや、民間企業の協力によるPRなど。大阪は万博誘致のロゴや文言で溢れ、すでに万博が近く開催されるかのような盛り上がりを演出してきました。

また『ダウンタウン』『片岡愛之助』『本田圭佑』などの著名人による万博誘致のPRなどにより国内の誘致ムードを牽引させたりと、あの手この手と万策を期していました。

PR・告知の活動にはグッズの作成・配布・販売も用いられています。
今回の誘致活動にはピンバッジ、チラシ、ポロシャツなどがありました。
もちろん缶バッジもあります。
(参考:【2025年国際博覧会の大阪誘致に向けた取組みについて:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/30196/00266750/siryou1.pdf)

これらは販売・配布はもちろん、職員が着用する事で職員自らの誘致への一体感を作り出し、庁舎に訪れる人へのアピールとなりました。

やはり万博を迎え入れる歓迎ムードは非常に重要でした。
今回はこうした歓迎ムードを可能な限り数値化して、国内外にアピールしていました。
国内の機運醸成値ともいえる明確な数値をもって、BIEへのPRとしたのです。
また、候補地としてのムードを演出する事は、府民への周知としても重要だったのです。

PRグッズが活用される理由

こうして機運醸成を図るには、長期間・継続的な活動が肝心です。
今回の誘致活動にPRグッズが誘致成功の一役を担った事は言うまでもありません。

ポスターや横断幕は長期間人々の目に触れ、PRグッズの販売・配布は一時的ではなく、継続的かつ長期間に渡って人々に強い印象を与える事を目的とします。

万博誘致PRグッズの多くは、低予算で大量の発注が可能なものばかりです。
タオル、シャツ、ボールペン、バッジなどなど。
これらは一見よくありがちなPRグッズだと感じるものの、やはりその期待値は高く、実際にこうして機運醸成を図る為に活用されてきた実績があります。

もちろんグッズ以外のPRの方法もありますが、大阪万博公式サイトにある『2025 日本万国博覧会誘致委員会 2017 年度決算収支計算書』によると、国内機運醸成費の内訳ではもっとも費用がかかった企画及び支援業務委託以外では『PRグッズ作成』が最も多く、その重要度と期待値の高さが伺えます。
何れにせよ機運醸成を図る為のPRグッズが功を奏したでしょう。

(参考:【2025 日本万国博覧会誘致委員会 2017 年度決算収支計算書)

企業は商品を売り出すにキャンペーン・企画を打ちますが、そのほとんどの場合にPRグッズが付帯されます。
それは単に商品を手に取ってもらいやすくする為ではなく、『この商品が一押しです』『これが噂の商品です』という企業側からのムード作りを演出する事で、商品が消費者に受け入れられる為の足場を固める重要な手順ともいえます。

この世に存在する多くのアイテムには、企業名や団体・事業などのPRがされているのが当たり前になっています。
あなたのデスクにもそうしたモノがあるはずです。
『何気なくペンを手に取った時、企業名がチラッと見える』
『通りすがりの人の服についてた缶バッジに何か書いてあった。』
PRグッズとは小さくその程度であるものの、確実に人々の記憶に残る存在となるのです。