観光地の魅力のひとつは、そこでしか見られない、体験できないものであることです。コロナ禍を過ぎ、国内はもちろん国外からも多くの観光客が訪問しているため、観光資源をうまく活用すれば多くの観光客の誘致につながり地域経済発展にも高い効果が期待できるようになるでしょう。そこで今回は観光資源の概要や日本の主な観光資源、活用事例、具体的な活用のポイントをお伝えします。
観光資源とは?
観光資源とは、日本のさまざまな地域にある自然や施設などのなかで観光の対象と認識されているもののことです。日本の観光資源を取りまとめた「美しき日本 全国観光資源台帳」を制作した公益財団法人日本交通公社では、次にように定義しています。
「“感動の源泉”となり得るもの、“人々を誘引する源泉”となり得るもののうち、観光の対象と認識されているものを、私たちは「観光資源」と呼びます。」
観光資源の種類
観光資源は大きく自然資源と人文資源という2つのタイプに分けられ、そのなかでさらに24種類に分類されています。
自然資源の種類
- 山岳
- 高原、湿原、原野
- 湖沼
- 河川、峡谷
- 滝
- 海岸、岬
- 岩石、洞窟
- 動物
- 植物
- 自然現象
人文資源の種類
- 史跡
- 神社、寺院、教会
- 城跡、城郭、宮殿
- 集落、街
- 郷土景観
- 庭園、公園
- 建造物
- 年中行事(祭り、伝統行事)
- 動植物園、水族館
- 博物館、美術館
- テーマ公園、テーマ施設
- 温泉
- 食
- 芸術、興行、イベント
観光資源のランク
全国観光資源台帳のなかでも特に強く心を惹きつける日本を代表する資源として「SA:特A級資源」、「A:A級資源」という2つのランクを選定しています。それぞれの詳細は次のとおりです。
SA:特A級資源
日本を代表する観光資源であり、国内外に対し日本のイメージの基調となる資源です。世界に対し日本のアイデンティティを強く示す資源であり、人生のうちで一度は訪れたい資源を特A級資源としています。
A:A級資源
特A級資源に準ずる観光資源であり、特A級資源同様に日本人の誇りであり、アイデンティティを示す資源で、一度は訪れたい資源をA級資源としています。
また、全国観光資源台帳では、特A級資源、A級資源以外の観光資源を「特別地域観光資源」とランクしていました。都道府県や市町村を代表する資源として、その土地を訪問した際やその土地に住んでいる方であれば一度は訪れたい資源という定義です。
日本の主な観光資源
全国観光資源台帳で紹介されている主な観光資源をいくつか紹介します。
◼︎年中行事(祭り・伝統行事)タイプ × SA:「特A級資源」ランク
『青森のねぶた・ねぷた (青森県青森市)』
毎年7~8月に青森県の各地域40カ所以上で開催される祭りで、あかりを灯した巨大な灯籠(=ねぶた)を山車に乗せて練り歩きます。秋田の竿燈まつり、宮城の仙台七夕まつりとともに東北三大祭りの1つです。
◼︎海岸・岬タイプ × SA:「特A級資源」ランク
『瀬戸内海の多島海景観 (広島県広島市、岡山県倉敷市、愛媛県今治市、香川県直島町、徳島県)』
本州西部、四国、九州に囲まれた日本最大の内海である瀬戸内海は、700以上の島がある多島海で、見る場所によりまったく異なる景観を楽しめます。
◼︎食タイプ × A:「A級資源」ランク
『横浜中華街の中華料理 (神奈川県横浜市)』
横浜にある日本最大のチャイナタウンで、約500m四方の区画のなかに600以上の店がひしめきあう飲食店街です。
◼︎山岳タイプ × A:「A級資源」ランク
『桜島 (鹿児島県鹿児島市)』
約26000年前に噴火して北岳が生まれてから、これまでに17回の大規模噴火を起こしている鹿児島の桜島は、世界的にもっとも活発な幼年期の成層火山です。南岳は現在も活動を続けていて、途絶えることなく黒い噴煙を上げています。
観光資源の活用事例
観光資源をうまく活用することで、観光客の増加や新たな雇用創出などさまざまな成果を上げることも可能です。ここでは、観光資源を効果的に活用している事例を紹介します。
◼︎福岡県太宰府市の事例
福岡最大の観光地として年間1000万人近い観光客が訪れる太宰府天満宮がある門前町では、宿泊施設がないこともあり、観光客の旅行消費につながっていないことが課題でした。そこで、太宰府天満宮や地元鉄道会社を中心に門前町にある古民家を宿泊や飲食施設に改修し、滞在型観光の実現を目指しています。
◼︎北海道ニセコ地域の事例
オーストラリアのスキー愛好家が北海道のパウダースノーの魅力をネット発信したことで外国人スキー客が急増したニセコ町では、リピーター獲得を目的に観光開発や地域内起業を推進しています。持続可能なリゾート地の確立を目指し、町が積極的に地元ビジネスをサポートしたことで、2003年と2013年比では外国人旅行者の延宿泊数は10.3倍増を実現しました。
◼︎聖地巡礼の事例(ゆるキャン△:山梨県)
アウトドアを楽しむアニメ「ゆるキャン△」の舞台となった山梨県では、登場人物の体験を追体験できるツアーやオリジナルボイスドラマが聴ける地域イベントなども開催して、多くのアニメファンが訪問しています。近年、国内はもとより海外のアニメファンによる聖地巡礼が人気で、今回の事例でも「ゆるキャン△」が観光資源の活用につながっています。
聖地巡礼については、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
聖地巡礼とは?ビジネスとして成功につなげるためのお役立ち情報を紹介
聖地巡礼の経済効果とは? その影響力とビジネスへの展望を解説
観光資源を効果的に活用するポイント
観光資源を活用して地域活性化を実現させるには、いくつかのポイントを押さえることが欠かせません。ここでは、主なポイントを解説します。
◼︎口コミを拡散できる環境を整備する
SNSの普及もあり、好意的な口コミは集客に大きな効果が期待できます。そこで、写真撮影ポイントの紹介、撮影イベントの開催など、訪問した人が積極的にSNSやブログなどで拡散したくなるような企画の検討が欠かせません。
◼︎デジタル技術の活用
旅行客の多くは事前にインターネットを使って訪問先の情報を調べています。そのため、デジタル技術を積極的に取り入れることも重要です。具体的には観光地の混雑回避のための予約管理システム導入、顔認証と周遊eチケットを融合した手ぶら観光の実現、多言語による音声案内などが考えられます。
◼︎多様な意見の収集
地元に住む人は地元の良さに気づきにくいものです。そこで、地元の魅力を他の地域に住む人や観光客、若者などからリサーチし多様な意見を収集します。改めて地元にある観光資源の魅力を見つめ直すきっかけにもなり、新たなアピール方法の発見にもつながるでしょう。
観光資源の活用による地域活性化のポイントについては、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
地域PRの目的と具体的な方法や成功させるためのポイントを事例で解説
観光振興とは? 地域を盛り立てながら収益を拡大するための取り組み例を紹介
そこにしかない観光資源の魅力を引き出し、地域活性化を実現させよう
観光資源とは、日本のさまざまな地域にある自然や施設などのなかで観光の対象と認識されているものを指します。地元にいると気づきにくい観光資源を改めて見つめ直し、外へ向けてアピールすることで、観光客の誘致や新たな雇用の創出にもつながるでしょう。
観光資源を効果的に活用するには、ここにしかない魅力やここだからこその体験を提供することです。ネットやテレビだけでは伝わらない魅力をどう伝えるかが地域活性化の重要なポイントです。
具体的な施策としては、デジタル活用や多様な意見の収集のほか、「限定性」や「話題性」の提供が欠かせません。そこでおすすめなのが観光資源やシンボルを生かしたオリジナル缶バッジの製作です。
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