「推し活」は、推しを応援する活動を指す言葉として、2021年に流行語大賞にノミネートされるほど社会に広まりました。あまり積極的にお金を使わないといわれる若い世代が中心となりながら、推し活の市場は年々拡大傾向にあります。
推し活マーケティングは「推し」を支える消費に着目したマーケティング手法です。今回は推し活マーケティングが注目されている理由や参入のメリット、推し活を成功させるポイントについて事例を交えながら紹介します。
推し活マーケティングとは?
まず「推し活」と、推し活マーケティングの概要を解説します。
推し活とは?
「推し活」とは、個人が好きな人やモノを強く支持し、推薦する行動です。「推し」とは個人が応援したい人や対象を指します。推薦、イチオシといった言葉からわかるように、単に個人的に愛でるだけではなく、広く伝えたいという意味が含まれるのが特徴です。
推し活は、自分の推しに対してサポートとなる活動全般が対象です。例えば、推し関連のグッズの購入、ライブやイベントへの参加、オンラインコンテンツの視聴などのほか、手作りグッズを作る、レビューや映像、SNSへの投稿によって発信するといった「自分発」の行動も含まれます。
推し活に関連するグッズについては、「推し活グッズには何がある? ブームの実情とビジネスへのヒントを解説」をご覧ください。
推し活マーケティングとは何か
推し活マーケティングは、「推し消費」を活用して自社の商品・サービスの販促につなげるマーケティング手法です。
SNS上でのキャンペーンやゲーム、イベント、グッズ販売など、「推し」として人気のあるキャラクターや人、場所などを活用し、認知の拡大や訴求効果につなげます。
例えば、「推し」人気の高いキャラクターとのコラボ商品の展開や、アイドルと直接会話ができるキャンペーン企画などがあります。「好き」という気持ちと、それをみんなに伝えて広めたいというニーズに応え、活用しながら自社の商品やサービスの訴求に結びつけるのが、推し活マーケティングの取り組みといえるでしょう。
推し活がビジネスで注目される理由
なぜ今、推し活が注目されているのかを解説します。
推し活の状況と市場規模
推し活ブームの背景となるのが、個人的に好きなモノに関する行動についての価値観の高まりです。「推し」を持つことで、人生が豊かになる、幸せな時間が増えると考える人が増えてきています。
この傾向は若年層ほど多く見られ、株式会社モニタスの全国の15~69歳、1,200名を対象に実施した「推し活に関する意識調査」によると、10代では53.0%、20代では44.0%が推し活をしているという結果でした。また15~69歳の全体では27.3%と、年齢に関係なく推し活をしている様子もうかがわれます。
推し活の経済的効果も高く、株式会社矢野経済研究所による「オタク」市場調査では、2021年度のアニメ市場の規模は2,650億円、アイドル市場の規模は1,500億円です。
上記調査に含まれていない分野の、音楽バンド・グループ、K-POPや、2.5次元(2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツ)といったジャンルも併せるとさらに市場が拡大すると見られます。
コロナ禍でイベントの中止が相次ぎ一時的に低下したジャンルもありますが、社会が落ち着くにつれて回復が見られ、個人の好みにお金や時間をつぎ込む傾向は各年代層でも広がっています。
モノ消費からコト消費、体験重視へと消費者の価値観が変化するなかで、今後も推し活による消費は継続、拡大すると予測されています。
推し活マーケティングのメリット
企業が推し活マーケティングに取り組むメリットとしては、以下のようなものがあります。
- ジャンルが幅広く自社の得意分野と合わせやすい
推し活は、個々人の好みによる活動です。そのため、マス的な人気者に関するものだけではなく、非常にニッチな市場もあります。ジャンルが多岐にわたるため、自社の得意分野から推し活マーケティングにつながる要素を探し出せる可能性があります。 - 「推し」のファンからの共感を得られる
推し活をしている人は、その対象に強い愛着があります。推し活マーケティングはそうした消費者の心をとらえる機会となり、自社に対しても共感を得られやすいというメリットがあります。 - 口コミ効果・拡散効果が高い
推し活は従来のオタク的活動よりもさらに「広めたい」というニーズが強いため、口コミ効果や拡散効果が期待できます。 - マーケティングコストを抑えやすい
推し活はSNSやオンライン上のキャンペーンと親和性が高いため、マスメディアを利用するマーケティング手法とくらべてコストを抑えやすくなります。
推し活マーケティング成功のポイント
推し活マーケティングを成功させるポイントや注意点を解説します。
ファン層の分析を綿密に行う
対象となる「推し」のファン層を分析し、どのような属性がファンとなっているのか傾向をまとめます。マーケティングの対象としての効果を図りながら、自社の商材のターゲット層としてふさわしいのか、提供する商品やサービスがニーズと一致するのかを見極める必要があります。
推しへの愛情が強いだけに、マーケティング施策についての満足度が低いと逆効果になる可能性も考えられます。ファン層を理解していないとニーズをうまくキャッチできず、企画倒れ、イベントの不満、集客の失敗など逆効果になりかねません。
商材と推しキャラクターの親和性を検討する
推しと商品・サービスとの関連性に納得感がないと、単に「利用した」とファンからの反感を買いかねません。
推しを活用するにあたってはファンの心理に配慮し、なぜ自社が採用しているのか理解されやすい伝え方をする必要があります。
推し活の根本を理解する
推し活は好きなものに対してサポートしながら広めたいという気持ちが根底にあります。そのため、推し活マーケティングの施策を考えるにあたっては、誰かと共有したくなるしかけや工夫が重要です。
購入後の使い方が多様であることや新奇性があるものなど、「推し」が単なる広告媒体とならないよう注意する必要があります。
推し活マーケティングの成功事例
推し活マーケティングの具体的な事例を紹介します。
株式会社サンリオ「#推しのいる生活」
多彩なキャラクターを通じてさまざまな商品を提供するサンリオは、公式オンラインショップで「#推しのいる生活」をテーマに、「推しキャラ」や「推し色」に基づく商品を展示しています。
この施策を通じ、2021年5月までに220万個以上の商品を出荷し、16億円以上の出荷上代を上げることに成功しました。
さらに、2021年の「サンリオキャラクター大賞」では、ウェブやサンリオの店舗での投票によってランキングを決定し、ファンが自身の「推しキャラ」のキャラクターグッズを身につけた写真をInstagramに投稿する「サンリオ推しキャラコーデ Instagram投稿キャンペーン」を開催し多くの反響を集めました。
また、無料でダウンロードできる『eBook』
にもお役立ち情報が多数ございます。缶バッジの製作、販売にご興味がある方は、ぜひご覧ください。
エスビー食品株式会社「キミの推しスパは!?」
同社の人気商品「まぜるだけのスパゲッティソース」シリーズの広告戦略として、グローバルボーイズグループ「INI」を中心に据えた「キミの推しスパは!?」キャンペーンを展開しました。このキャンペーンでは、INIの11人のメンバーがそれぞれの好きなパスタソースを紹介し、テレビCM、ブランドサイト、X(旧:Twitter)キャンペーン、コラボパッケージ商品の販売など多くの施策を実施しています。
このコラボレーションに関連するハッシュタグ「#エスビーまぜスパ」や「#アンバサダーはINI」は、X(旧:Twitter)キャンペーンの前からトレンド入りし、熱狂的なファンの支持を集めて話題となりました。
ロクシタンジャポン株式会社「#おそ松タンキャンペーン」
Snow Man主演の映画「おそ松さん」とのコラボ企画として、自然派アイテムとして人気の高い“シア”シリーズのカスタマイズ製品“マイシア”で6つ子の兄弟にちなんだ特別版デザインを提供しました。「推し色」と限定メッセージで推し活に特別感を与え、ファンの心をつかむのに成功しています。
推し活マーケティングは「推す心」への理解が必要
推し活マーケティングを成功させるためには、「推す側」の気持ちの理解と、対象となるキャラクターと自社商品の親和性が重要なポイントです。推し活をする人の支持をうまく集められなければ、推し活マーケティングの意味が失われます。
推しとなるのは、人やキャラクターだけではなく、水族館やテーマパーク、電車、モニュメントなどさまざまです。多くの注目を集めているものにこだわらず、自社との相性が良い、ニッチな市場を探ってみるのも一つの方法といえるでしょう。
推し活マーケティングの一環としてグッズを作成するのであれば、手に取りやすく、いつもそばに置いておける缶バッジがおすすめです。愛着のある推しグッズとして、コレクションにも最適です。
推す心を満たせる美しい仕上がりを実現するのであれば、高性能な缶バッジマシンと高品質な素材がそろうバッジマンネットをぜひご利用ください。