かつてモノを所有・消費することに価値を見出していたモノ消費の時代から、体験や経験に価値を見出すコト消費の時代へと人々の消費行動は変化しています。もちろん、現在でもモノを所有することに価値がなくなったわけではありません。
しかし、多くの業種で市場が成熟し、必要なものはすでにそろっている現代において、体験や経験に対する価値が高まっているのは事実です。そこで今回は、モノ消費からコト消費、そして近年新たに注目を集めているトキ消費へと変遷を遂げる消費行動のなかで、企業がどう向き合っていくべきかについて解説します。
モノ消費とコト消費
人々の消費行動の変化を見るうえで、まずはモノ消費とコト消費の概要について解説します。
モノ消費とは?
モノ消費とは、一般的に形あるモノを所有もしくは消費することを重視する消費行動です。具体的にはテレビを購入する、レストランで食事をするといった行動を指します。
日本では、戦後から経済成長期に至るまで、生活に必要なモノを購入するのがモノ消費でした。しかし、生活に必要なモノがすべてそろうようになってからは、精神的な満足感を得るためのモノを購入するモノ消費へと変遷しています。具体的には、ゲーム機を買う、大型テレビを買う、キャンピングカーを買うなどです。
コト消費とは?
コト消費とは購入もしくは消費を通じて得られる経験や体験などを重視する消費行動です。具体的には、プロジェクターを購入してキャンプ場で動画を楽しむ、釣った魚を調理してくれるレストランで食事する、映画館で応援上映に参加するなどを指します。
顧客の消費行動の変化
モノ消費からコト消費への消費行動の変化は、すでに数年前から起こっています。ここでは、その具体的な理由について解説します。
人々の消費行動がモノ消費からコト消費へと変化している理由
- 形あるモノがすでに飽和状態になっている
モノ消費の変化のなかで、生活に必要なモノはもちろん、余暇を楽しむためのモノもすでに飽和状態になりつつあります。そのため、多くの人が物質的な欲求は満たされ、経験や体験を得られるコト消費への欲求が強まっています。 - 多くのモノがコモディティ化(一般化)している
インターネットの普及や技術の進化により、ほとんどの製品やサービスがコモディティ化してしまい、製品やサービスを購入するだけでは他者との差別化は困難です。その結果、経験や体験により、他社とは違うモノを得たいと考える人が増えています。 - 消費者のライフスタイルが変化している
たとえば、形あるものを購入することで荷物が増えることを好まないミニマルライフという考え方を持つ人が増えています。また、地球環境に配慮したSDG’sといった考え方が普及した結果、モノを所有することからシェアする、体験や経験にお金を使うライフスタイルに変化しつつあります。
さらにはコト消費からトキ消費への変化
モノ消費からコト消費への変化はすでに数年前から起きている潮流ですが、近年の消費行動はさらにトキ消費へと変わりつつあります。ここでは、コト消費とトキ消費の違いやトキ消費の具体例などを解説します。
- トキ消費とは?
トキ消費とは、博報堂生活総合研究所が使い始めた言葉で、その場、その時でしか体験、経験できないことを重視する消費行動のことです。具体的にはオリンピックやサッカーのワールドカップのように、毎回、開催地や参加者が異なるイベントに参加する、バンドやアイドルのデビューから継続的に応援するなどが挙げられます。 - コト消費とトキ消費の違い
コト消費もトキ消費も経験や体験を重視する消費行動である点は変わりません。異なるのは再現性の高さです。たとえば、映画館の応援上映は、上映期間中であれば何度でも体験できます。また、釣った魚を調理してくれるレストランも何度でも同じ体験が可能です。
これに対し、オリンピックやワールドカップの観覧や、バンドやアイドルの成長を楽しむ場合では、今を逃してしまうと二度と同じ体験はできません。より再現性の高い消費行動がコト消費であり、非再現性を求めるのがトキ消費です。 - コト消費からトキ消費へと変化する理由
非再現性や参加性、貢献性を重視する消費行動であるトキ消費へと変化しつつある理由は、コト消費が定着し、何度も体験できることには興味を持ちづらくなった点が挙げられます。インターネットの普及により、さまざまな体験を共有できるようになったことも理由の一つでしょう。
また、トキ消費はたった一度しか体験できない、限られた回数しか経験できないのが最大の特徴です。そのため、何度でも体験できるコト消費に比べ、高い満足度を得られるのもトキ消費が注目されるようになった理由といえます。
消費行動の変化に企業はどう対応すべきか
人々の消費行動がモノからコト、そしてトキへと変化していくなかで、企業はどのように対応していくべきなのでしょう。ここでは、主なポイントをいくつか紹介します。
モノやコトへの参加者意識を感じられるコンテンツを作成する
製品やサービスの裏側を知ってもらい、消費者もその製品やサービスを育てる一員として参加者意識を持てるようなコンテンツを作成します。たとえば、任天堂では、開発者のインタビューを掲載するコンテンツ「開発者に訊きました」の制作や、クラウドファンディングの開催などを行っています。
体験型のイベントを開催する
飲食業界なら新商品の試食会、ゲーム業界ならオンラインでの大会、玩具業界なら親子で楽しめるイベントなど、体験し、モノに触れることができるイベントを開催するのもよいでしょう。
たとえば、登山やアウトドアに関する書籍・雑誌を出版している山と溪谷社では、登山が好きな人はもちろん、まだ興味がない人でも気軽に参加できるイベントを開催しています。
イベント会場では、アウトドアメーカーによるブースの出店やボルダリングなどのアクティビティ、缶バッジのワークショップなど、その場でしかできない体験を提供することでファンの獲得を目指しています。
詳しくは、「山と溪谷社「刊行物を手にとってもらうための入り口として、屋外イベントを主催する」」をご覧ください。
コト消費やトキ消費に対応するには今しかできない体験の提供が重要
多くの業種で市場が成熟し、製品やサービスのコモディティ化が進むなか、人々の消費行動はモノ消費から、経験や体験に価値を見出すコト消費に変わりつつあります。さらに、現在では非再現性や参加性、貢献性を重視するトキ消費への動きも見られます。
人々の欲求や願望は消費行動に大きな変化を与えていますが、これから重要になるのは、人々の感情を動かし、自ら参加したいと思わせ、貢献したいと思ってもらえるかような体験の場を提供することです。良い製品を作るだけでなく、体験できる機会をつくり出すことが求められます。
そこでおすすめなのが、体験型イベントの開催例として紹介した屋外イベントのように、共通の趣味を持つ人が参加でき、さらにコンテンツとして思い出の品を作れる機会の提供です。なかでも、缶バッジであれば簡単に作れるうえ、小さくかさばらないため、思い出として持ち帰るのに最適なグッズといえます。
親子やその場所で知り合った人同士でデザインを考え作る缶バッジは、まさに非再現性の高いトキ消費です。
バッジマンネットでは、さまざまなイベントで気軽にご利用いただける缶バッジキットを提供しています。缶バッジ製作に必要なパーツも豊富にそろえ、素早い発送も可能です。コト消費、トキ消費への対応を検討されている際は、ぜひお気軽にご相談ください。