「人生の大半の時間を費やしてることは何か」と問われれば、仕事と答える人もいれば、学校と答える人もいるかもしれませんが、いずれに共通することは「集まる」ということではないでしょうか。
よく考えてみれば、職場、学校、町内会、誕生日、そして同窓会など、何らかの価値を生み出している時間の大半は「集まる」という行為に集約されるといっても過言ではありません。
近年は「集まる」行為に着目してイベント等を主体としたマーケティングが注目されるようになりました。子ども向け職業体験型テーマパーク「キッザニア」の創業者であるハビエル・ロペス氏によれば、「人は読んだことの10%しか覚えていないが、体験したことの90%は忘れない」のだそうです。
ロペス氏はワールドマーケティングサミット2016に登壇した際、イベントなど体験を伴う行為は文字のバナー広告の9倍の価値があると話し、エクペリエンスピラミッドと呼ばれる統計を紹介していました。
◆人が覚えている確率
文字を読む行為 10% (新聞、雑誌、メール)
言葉を聞く行為 20% (ラジオ)
視覚で見る行為 30% (テレビCM)
聞くと見る両方 50% (テレビプログラム)
話したり聞くこと 70% (インターネット)
体験すること 90% (体験、イベント)
【出典:「人は読んだことの10%しか覚えてないが、体験したことの90%は忘れない」(宣伝会議、2016)】
小さな靴屋にすぎなかったVansを世界的ブランドに変えたイベントマーケティング
こうした背景もあって、近年は経験や体験を重視したマーケティング手法に重心を移している企業が増加傾向にあるようです。
例えば、スニーカーブランドのニューバランスはサッカー大会「ニューバランスカップ」を開催して消費者と交流を深め、『キティちゃん』で有名なサンリオも間限定のキャラクターカフェをオープンするなど、イベントを活用したマーケティングが活発化しています。
多くの企業がリアル空間におけるマーケティングを強化する中、特に注目すべきなのが、スニーカーの王様「Vans」です。
サーファーやスケードボーダーが愛用するVansは、今ではファッションブランドとしての側面も持つなどその人気は圧倒的ですが、こうした地位を確立した背景にあるのは、彼らが長年取り組んできたイベントマーケティングだったのです。
Vansはスポーツの文化的な支援者として、アスリートたちがやりたいことや表現したいことを実現するための場を長年提供し、世界各国で開催される「House of Vans」やスケートボード競技大会「Vans Park Series」など積極的にイベントを企画してきました。
実はこうしたイベントは、広告代理店を使ったり、スポンサーとして協賛しているわけではなく、あくまでもVans自らが企画運営しているのです。
Vansが自社でイベントを開催するのは、Vansの考え方を顧客に効果的に届けることはもちろんのこと、それが「顧客理解」に繋がるからなのです。
House of VansではVansの顧客層が好む、アート、音楽、スケボー、そしてファッションに関するイベントを企画しており、そうしたイベントを定期的に開催することで、Vansは顧客の嗜好の変化や生の声を拾い上げて自社製品やサービスの向上に繋げてきたのです。
100万部の大ヒット絵本を「缶バッジ×イベント」でプロモーションした白泉社
イベントを活用したマーケティングは缶バッジと相性が良いかもしれません。そこで今回は弊社の缶バッジをご利用の「白泉社」様の事例をご紹介したいと思います。
白泉社は『夏目友人帳』や『フルーツバスケット』など人気マンガを数多く手がけてきた出版社ですが、近年は絵本『ノラネコぐんだん』シリーズという他社の絵本とはテイストの異なる絵本に力を入れているそうです。
従来の絵本は教育を目的として作られているため道徳的な側面が強調されがちですが、同社の絵本はこれまでのマンガ作りで培ってきた「面白さ」を強調していると言います。
そうした特異点をアピールするため、同社がプロモーション手段として選んだのが、缶バッジを駆使したイベントマーケティングでした。
専用のぬりえ台紙に描かれたノラネコのイラストに好きな色を塗って、オリジナル缶バッジを作るワークショップを開催したところ、なんと100人以上の参加者を集めることができ、今では白泉社で一番人気のワークショップになっているそうです。
しかし『ノラネコぐんだん』の魅力にいち早く気づいたのは意外にも書店員さんで、これが後に大きな成果をもたらすことになりました。
と言うのは、一般的に書店に並ぶ本は書店員さんのチョイスによるもので、読者を獲得する上で「書店員さんに本のファンになってもらうこと」が何よりも重要なのです。
イベントを通じて書店員さんに「面白い絵本」という強い印象を与えたことによって、書店に並ぶ『ノラネコぐんだん』シリーズの数が増え、書店での露出が増えたことによって売り上げに繋がる結果となりました。
白泉社では缶バッジキットを用意し全国の書店で気軽にイベントが開催されるよう工夫をしており、そうしたイベントマーケティングが『ノラネコぐんだん』シリーズ100万部達成の下支えとなったのかもしれません。
冒頭で「体験はテキストの9倍の価値がある」というロペス氏の言葉を紹介しましたが、この言葉はあながち大げさではないのかもしれません。
と言うのも、自社のストーリーを「語る」企業が増えた結果、イベントを通じてストーリーを「実践」する企業の価値が相対的に高まっているからです。
ストーリーを語る時代から、実践する時代へ。そんな時代を支える手段の一つとして缶バッジが選ばれれば幸いです。