「安い」という謳い文句は、多くの人にとって魅力的です。実際に弊社の缶バッジも、コスパのよいプロモーション活動を継続する目的で多くの企業に選ばれています。

節約家のなかには、1円でも安く買う思考を持ち続けている方もいるでしょう。ただし、1円でも安いモノを買うためにスーパーを2軒も3軒もはしごするような人は、たった数百円のために時間を浪費していると考えられるようにもなってきました。

時間からお金は生み出せますが、お金から時間は生み出せない。この認識は、世間一般に浸透してきています。



値引きや割引きは大きなオファーですが、それのみで購買意欲が働く層は一定数しかいないのかもしれません。

この数年で、消費者の購買意欲には明らかに大きな変化が起こっています。

特定非営利活動法人「TABLE FOR TWO International」は、2015年から「おにぎりアクション」という社会貢献活動を開始し、2019年には国内外併せて50の企業と自治体がこのプログラムを実施しました。

SNSに寄せられたおにぎりの写真投稿1枚につき、給食5食または10食分が協賛企業から寄付される仕組みは、社会貢献のみならず、企業のブランドイメージの向上に貢献したそうです。



実際に、フォロワー数の増加や商品販売数・売上の上昇といった数字にも、効果が現れたといいます。 

消費者は「企業がどれだけ社会に貢献しようとしているのか」、「この商品は、社会や消費者に寄り添い助けるようなものなのだろうか」という視点を持ちはじめていると言えるでしょう。

企業のCSR活動が、消費者の選択に影響力を持ち始めているのです。



この動きは、パンデミックを経験したポストコロナ時代の今、より顕著になっています。「安いから買ってください」と購買意欲を掻き立てるマーケティング手法は旧態依然としており、もはやそのような時代ではなくなってきているのかもしれません。

現代経営学の父として知られるピーター・ドラッガーは、「マーケティングの理想は販売を不要にすることである」という有名な言葉を残しています。続けて、「こちらが顧客を理解し、モノやサービスを顧客に合わせることで、自然と売れるようにすることこそマーケティングである」と説きました。

消費者の便益と社会への貢献を現実のものとしている事実を発信していくことが、今、自然と売れるようになるための確かな価値を持ち合わせてきています。



企業ブランドが愛されるための取り組みを缶バッジが担う可能性


近年、特に注目を浴びているのがSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)の実践でしょう。

2015年の国連サミットで採択されたSDGsは、国の発展状況を問わず「leave no one behind(誰一人取り残さない)」を誓い、打ち立てられた目標です。17項目の大きな目標と、169個の具体的なターゲット、232個の指標で構成されています。

このSDGsに取り組んでいる企業へ、投資家によるサステナブル投資が始まったのは記憶に新しいところです。最近では、環境保全や社会貢献に繋がる製品を積極的に購入するエシカル消費という言葉も生まれました。

デジタルネイティブの世代であり、「SDGsの申し子」とも呼ばれるZ世代のなかには、社会貢献や地球環境を大切にする企業へ就職をするエシカル就活をおこなう人材も登場しています。



このように、SDGs活動は企業の利益に繋がることが明るみになってきたため、サステナブル経営に取り組む企業が増加してきました。

自社がSDGsに取り組んでいることをアピールするために、ピンバッジや缶バッジを身に着けて仕事をおこなう人もいるほどです。

たとえば、新潟県に本社を置く一正蒲鉾株式会社は、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を目指した取り組みを実施しています。

法令遵守の徹底、環境保全、労働条件の見直しをおこなうと同時に、SDGsの取り組みを描いたTVCMの制作もおこないました。

消費者へのSDGs活動の発信が、蒲鉾の美味しさという機能性を超えた価値の認知活動となっていると言えるでしょう。

値引きや割引きなどのコスパ同様に、機能性だけで差別化するのが困難になる時代に、新たな企業価値を提示しているのです。



コスト戦略や優れた機能訴求ではなく、企業やブランドの魅力そのものを認知し、いわば「愛してもらう」取り組みは、実は新型コロナの流行以前から注目されていました。

少子高齢化問題が提唱されるようになってから約50年。2019年には出生数が統計開始以来90万人を下回り、企業にとって顧客が物理的に減少する事態に直面せざるを得なくなっていたためです。

人口が減りつつあるにも関わらず、消費者は爆発的な量の情報に身をさらされている点にも注目しなければなりません。

ここ20年で人を取り巻く情報量は6000倍以上にも増えたといわれ、自ら喜んで使ってくれる消費者に商品を見つけてもらうこと自体が困難になっています。

そのような中でも、企業からのメッセージを受け取り、長く消費活動を続けてくれる存在として注目されてきたのが「熱量の高いファン」です。



新規顧客の獲得が年々難しくなるにつれ、熱量の高いファンを獲得するために企業やブランドを愛してもらう取り組みが注目され始めました。

見せかけではない本当のファンは、購買に至るだけではありません。自発的に商品の良さをPRしたり、見込み層や潜在層にまでアプローチすることもあります。

コロナ禍で苦境に立たされた企業や個人事業主が、本物のファンの助けにより売上やクラウドファンディングで助けられた例もあります。

逆境のときの友こそ真の友であるという格言がありますが、まさに熱量の高い既存顧客が企業を助けるのです。

熱量の高い本当のファンに出会うためには、安さや機能性を超えた企業価値を発信し、狭く、深くユーザーとコミュニケーションを取らなければなりません。

愛される取り組みによってこそ、見せかけではない本当のファンは顔を出し始めます。



安さや機能性を超えた企業価値の認知を缶バッジで促す


熱量の高いファンを生み出す方法のひとつに、単純接触効果を使う方法があります。

音楽や映像等の刺激に触れれば触れるほど、そのもの自体を好きになっていく現象を耳にしたことがありませんか。ほかにも、同じインターネット広告が何度も現れるうちに気になってきて購入してしまったという体験も、単純接触効果によるものです。

単純接触効果は人の嗜好に関係なく、脳が物事を効率よく処理するようになっていくため、認知の回数を重ねることで企業やブランドを好きになっていく可能性も秘めています。

認知を重ねて興味や好感度を上げられれば、検討や購入の足がかりができるといっても過言ではありません。

単純接触効果を活用するには様々なツールや手法があり、デザインによってはチラシや広告の役割も持ち得る缶バッジも、消費者との接触回数を増やすのに向いています。



実際、ファンを増やすPR活動を可視化するために、缶バッジを会員証にして活用している団体もあります。

ひと目で企業やブランド、団体を特定できるデザインの缶バッジは、熱量の高いファンにとって、好きなアニメの特典グッズのように嬉しいアイテムともなり得るでしょう。

熱量の高いファンを可視化するだけでなく、ファンの熱量をさらに上げるツールにもなりそうです。

ただし、単純接触効果を狙う際は露出が多すぎても嫌われるため、相手に配慮した接触回数に留める必要もあります。

その点でも、人が身に着けるだけでさりげなく主張し、大勢が身に着けていると見る人の熱量を上げる缶バッジの距離感は程よく、最適だといえるでしょう。



価格や機能性だけではモノやサービスが売れなくなっている今、企業やブランドそのものが購買意欲の鍵を担っています。

真のファンに愛される企業となるためには、貢献活動やブランドビジョン、顧客との良好な関係、社会へ提供する価値等のメッセージを強化し、明確に打ち出していかなければなりません。

このような企業の戦略的メッセージを、ブランドの父と呼ばれるデイビッド・アーカー氏は「シグネチャーストーリー」と名づけました。



人口が減り、情報が溢れ、ニューノーマルが常態化した今に求められているものこそ、偽りのないシグネチャーストーリーです。

缶バッジは、その大きなストーリーを背負う力を確かに持っています。

たとえば、大好きなインフルエンサーがブランドの缶バッジを付け、SNSに写真を投稿する。それを何度も見たファンが、そのブランドごと好きになる。

このような、缶バッジを使ったシグネチャーストーリー作りは、大型看板や広告よりも身近に感じられ、周囲の人と共有できるだけでなく、インターネットを介しても再現性があります。

本当のシグネチャーストーリーを作る戦術やその発信方法に迷った際は、缶バッジというツールも思い出していただけると幸いです。