中国のACG(アニメ、コミック、ゲーム)文化が目覚ましい発展を遂げています。かつてはマニア層の趣味とされていたこの分野が、今や若者を中心とした幅広い層に支持され、その市場規模は着実に拡大を続けています。本記事では、ACGの基礎知識から、中国で発展した経緯、最新の消費トレンド、そしてACG関連ビジネスでおさえるべきポイントまで、幅広く解説します。
ACGとは
ACGとは、アニメ(Anime)、コミック(Comic)、ゲーム(Game)の頭文字を取った略語です。この用語は1990年代半ばに台湾で誕生し、その後中国本土や香港などの中華圏、さらには東南アジアの一部地域へと広がりました。近年では、ライトノベルなどの短編小説の人気も高まり、小説(Novel)を加えた「ACGN」という用語も使われるようになりました。
中国におけるACG文化の発展
中国では、ACG文化が急速に普及し、オタク文化の中核を成すまでに発展しました。この背景には、2000年代からのインターネット普及によるACGコンテンツへのアクセス向上や、政府による文化産業への規制緩和があります。また、経済発展に伴う若者の可処分所得の増加と余暇時間の拡大も、ACG文化の浸透を後押ししました。
現在の中国のACG文化は、単なる娯楽の枠を超え、コスプレ、同人活動、グッズ収集など、幅広い趣味や活動を包括しています。さらに、中国独自のアニメやウェブ小説が台頭し、国内外で注目を集めるようになり、グローバル市場でも存在感を増しつつあります。
中国のオタク文化については、以下の記事でも解説しています。
>> 中国で広がるオタク文化とは?特徴や人気ジャンルを紹介 <<
中国におけるACG文化の概要
中国のACG文化における、アニメ、コミック、ゲームのトレンドや特徴について、分野別に紹介します
アニメ(Anime)
中国のアニメ市場は急速に拡大しています。ジェトロの「中国のアニメに関する市場調査 2022年度更新版」によると、中国のアニメ・漫画の市場規模は2021年に2,400億元を超える規模を突破しています。政府主導のアニメ産業振興策により、国産アニメの質と量が年々向上しています。中国製アニメの海外進出も活発化しています。
日本アニメの中国市場での人気は依然として高く維持されています。ただし、近年では政府当局による海外アニメの審査・許可取得の厳格化が進んでおり、市場動向に影響を与えています。
参考:中国のアニメに関する市場調査 2022年度更新版・ジェトロ
コミック(Comic)
中国のコミック市場では、従来の紙媒体の漫画雑誌や単行本から、スマートフォンで手軽に読めるWebコミック(Web漫画)へのシフトが顕著です。若者に人気のプラットフォームでは、プロの作家だけでなく、アマチュア作家も作品を発表できるため、多様な作品が生み出されています。中国の伝統的な物語や神話をモダンにアレンジした作品や、現代社会を反映したリアリティのある作品など、中国独自のコミック文化が形成されつつあります。人気漫画のアニメ化やゲーム化も頻繁に行われ、メディアミックス展開も活発です。
ゲーム(Game)
中国のゲーム市場は、モバイルゲームを中心に急成長を遂げています。「原神」や「荒野行動」といった中国発のゲームが世界的なヒットを記録し、中国ゲーム産業の国際競争力の高さを示しています。特に注目すべきは、eスポーツの急速な発展です。プロリーグや国際大会が盛んに開催されており、若者のキャリア選択肢の一つとしても認知されつつあります。また、VRやAR技術を活用した次世代ゲームの開発も活発化しており、中国企業がグローバル市場でイノベーションをリードする場面も増えています。
中国ACGファンの消費動向
ACG関連消費の中心世代
ジェトロの「海外発トレンドレポート」によると、中国におけるACG関連の消費は主にZ世代と呼ばれる若年層がけん引しているとされています。中国のZ世代は「95後」(1995年以降生まれ)と「00後」(2000年以降生まれ)といわれています。これらの世代は、デジタルネイティブとして育ち、ACGコンテンツへの親和性が非常に高いのが特徴です。
参考:アニメ・映画等のIP商品、消費の主役はZ世代(中国・上海発) | 海外発トレンドレポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
ACGファンの消費カテゴリー
ACGファンの消費カテゴリーは多岐にわたります。
デジタルコンテンツの利用
- 動画配信サービス
アニメ視聴では。中国版YouTubeとも呼ばれる「bilibili(ビリビリ)」が特に有名。無料動画も視聴できるが、有料会員向けにVIP専用のアニメ視聴、高画質視聴などのサービスもある - Webコミック
「快看漫画」といったアプリを通じた利用が一般的 - モバイルゲームなど
bilibiliは、もともとACGコンテンツに特化したプラットフォームとして2009年に設立され、現在では中国のACGファンにとって欠かせない存在となっています。ファンが自ら制作した動画やイラストなども数多く投稿されており、ACG文化の発信・交流の場としても機能しています。
グッズ購入
- アパレル
Tシャツ、パーカーなど - グッズ
フィギュア、ぬいぐるみ、プラモデルなど - 雑貨・小物
キーホルダー、缶バッジ、文具など - ブラインドボックス
中身が見えない状態で販売されるフィギュアやグッズのこと。どのキャラクターやデザインが出るかわからない「ガチャガチャ」的な要素が若者の間で大ヒットしている - コスプレ衣装
人気アニメ・ゲームキャラクターの衣装が中心
イベントへの参加
bilibiliが開催する大規模イベント「Bilibili World」は特に有名です。最新のアニメやゲームの展示、声優によるトークショーやミニライブ、大規模なコスプレ大会などが行われています。
声優イベントも人気があり、ファンミーティングやトークインベントも開催されています。
中国のACGビジネスで押さえるべきポイント
中国でACG関連のビジネスを展開する際には、以下の3つのポイントが重要です。
知的財産権の適切な管理
中国市場では知的財産権の保護と適切なライセンス取得が非常に重要です。自社のIPでの事業を検討している場合には、キャラクターや作品名、ロゴなどを早期に商標登録が不可欠です。他社のIPを使用する場合は、必ず正規のライセンス契約を結ぶ必要があります。また、模倣品対策として、オンラインプラットフォームと協力し、定期的な市場監視と迅速な対応を行うことが重要です。近年、中国政府も知的財産権保護に力を入れていますが、ビジネス展開時には常に最新の法規制を確認しましょう。
IPビジネスについては、以下の記事でくわしく解説しています。
>> IPビジネスにおけるキャラクター活用とは?成功事例やポイントを解説 <<
>> IPビジネスにアニメ業界が注目!基本から成功へのポイントまでを解説 <<
中国独自のデジタル環境への理解
中国のデジタル環境は独特であり、その効果的な活用が成功の鍵となります。例えば、前述のbilibili以外にも、多機能メッセージアプリWeChat(微信)や大手ECサイトTmall(天猫)などは、主要プラットフォームとして把握しておく必要があります。各プラットフォームの特性を理解し、自社のビジネスモデルや目標に合わせて適切に活用することで、効果的なマーケティングや販売戦略を展開できるでしょう。
また、中国のインターネット利用者の大多数がモバイルユーザーです。モバイルファーストでのUI/UX設計や決済システムの導入が不可欠です。
政府によるコンテンツ規制
中国政府によるコンテンツ規制が強化されるなか、国産ACGコンテンツの制作・消費が活発化しています。これにより、中国独自のACG文化が形成されつつあり、「国産IP」の人気が高まっています。同時に、海外コンテンツの輸入や配信に制限がかかることもあるため、政府当局の動向は常に注視する必要があります。政府当局の検閲を通らなければ、コンテンツ自体が配信されないため、ファン層が広がらず、関連グッズの販売やライセンスビジネスの展開も難しくなるでしょう。
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中国ACG文化の動向に今後も注目しよう
中国のACG文化は、もはやサブカルチャーの枠を超え、強い経済的影響力を持つ産業へと進化しています。独自の発展を遂げるこの市場は、デジタルコンテンツからリアルグッズまで多岐にわたり、若年層の旺盛な消費意欲に支えられてさらなる拡大が期待できるでしょう。今後は市場トレンドと規制環境の変化に注意を払いつつ、中国ACG文化の動向を注視していくことが重要です。
ACGの関連消費のなかでも、グッズは、ファンの強い購買意欲に支えられ、今後も成長が期待されています。特に缶バッジは、手軽さと親しみやすさから、人気の高いアイテムの一つです。「バッジマンネット」でマシンやパーツをそろえれば、自社で魅力的な缶バッジの製造も可能です。