前半では缶バッジを扱う弊社のスタンスや価値観の部分をご紹介しましたが、後半では缶バッジが持つポテンシャルについてお話できればと思います。
東京オリンピックの誘致で使われた缶バッジ「数値化できない『雰囲気』をコントロールする缶バッジ」
缶バッジの強みは目に見えない「雰囲気」をコントロールする力に長けている点です。
実際に東京オリンピックの誘致や大阪万博の誘致の際にも弊社の缶バッジパーツが大量に使われました。
オリンピックや万博に限らず、イベントを街に誘致し成功させるためには、地元民の迎え入れ体制を整えておく必要があります。「何そのイベント?」といった空気感ではまずいわけです。
イベント誘致の気分醸成をはかるために野外ブースなどで缶バッジを配布する際、缶バッジの主な貰い手はお子さんたちですが、一緒にいる親御さんに対して「へえ!来年◯◯のイベントやるんだ」という意識づけを行うことができるのです。
実は東京オリンピック誘致の際には、こうした目に見えない空気感や雰囲気が選考における鍵になりました。
2020年夏季オリンピックの選考の際には最終候補地に、マドリード、イスタンブール、そして東京の3都市が候補に残りましたよね。しかし最終選考にあたって、それぞれの都市は課題を抱えていました。
マドリードやスタンブールの場合は政治的あるいは治安的不安要素があり、東京の場合はそうした不安要素はなかったものの、唯一の不安要素として地元民の受け入れの姿勢が挙げられました。と言うのも、地元民からオリンピック誘致の支持をなかなか得られなかったのです。
そこでその支持率をあげるために缶バッジを活用した気分醸成キャンペーンが行われたことによって、少しずつ誘致に対する理解が得られ、最終的に東京が開催地として決定しました。
デジタルが発展すればするほど、アナログの強みが増していく
最近ではビジネスを行う上でSNSを始めとしたデジタルマーケティングばかりが注目されますが、オリンピックの誘致に缶バッジが使われるなど、アナログなマーケティングツールにはまだまだ強みがあるのではないでしょうか。
むしろデジタルばかりが注目される時代だからこそアナログなマーケティングツールの強みが際立つ時代だと言えるのかもしれません。
以前、缶バッジのデザイン面が液晶ディスプレイになっていて、スマホで編集した画像やGIFアニメを表示させるという商品がありました。これは印刷も必要なく、デザインも自由に何度も変更できることから、画期的なアイデアだと称賛されたものの普及しなかったんです。
これはデジタルフォトフレーム(写真のスライドショーが流れるデジタル写真立て)と同じ理屈かもしれません。デジタルフォトフレームは斬新なアイデアですが、皆さんのお知り合いで実際に購入した人はほとんどいないのではないでしょうか。
いざ思い出を振り返ろうとしたとき、やはりデジタルフォトフレームは写真やアルバムに負けてしまう。世の中がデジタルに傾けば傾くほど、その反動としてアナログの価値が上がるという側面は必ずあると思うんです。
移動手段が充実して体を動かす必要がなくなればなるほどジム通いをする人が増え、自動運転が普及すればするほど自分でマニュアルの車を運転することが楽しくなるように。
おそらく私たちは「アナログとデジタル」「便利と不便」の間で、どちらか一方が過剰になると、上手にバランスを取ろうとするのだと思います。
その意味で、これだけデジタル技術が普及した現在だからこそ、アナログな缶バッジでマーケティング施策を打つことが新鮮味を感じるのだと思います。
印刷業社が次の時代の活路を見出したのは缶バッジ業界
缶バッジがアナログなマーケティングツールとして再評価を受ける中、缶バッジ業界に新規参入が相次いでおり、中でも印刷業を始めとした企業様が次の時代における活路を缶バッジに見出そうとしています。
と言うのは、印刷業社様は他業種にはない高い印刷技術を持ち合わせているため、缶バッジ業界に参入してすぐに高品質の缶バッジを制作し、市場で高い優位性を確立することができるのです。
こうした異業種からの参入によって品質の高い缶バッジが市場に多く出回るようになったことで、業界全体のレベルが底上げされ、業界が熱を帯びるようになりました。
今後さらなる新規参入が予想されるため、弊社としてもパーツやノウハウの提供によって異業種からの新規参入をサポートできればと思っています。
限りある倉庫スペースを最適化するためにパーツの国産化を進める
缶バッジの市場規模が拡大するに伴って、お客様から求められるパーツの種類や納期など、プラットフォームとして弊社も変化が求められています。
そこで我々が現在取り組んでいるのが、パーツの国産化です。
日本製のパーツは品質は高いものの単価が高いため、アメリカや中国で生産されるパーツが一般的には使われています。しかしパーツを海外から仕入れると、我々の場合、発注から入荷までに約半年のタイムラグがどうしても発生してしまいます。
弊社では57mmのパーツ注文が最も多いため、大量に同じサイズのパーツを仕入れるのですが、そうすると本社倉庫のスペースを圧迫してしまい、他サイズのパーツを保管するスペースがなくなってしまうのです。
そうなると、お客様が望むパーツを提供できない可能性が出てきます。缶バッジ業界のプラットフォーム的存在として、こうした事態は避けなければなりません。
そこで現在は国内の信頼できるパートナー企業様と共同で缶バッジの国産化を目指しており、近い将来、日本産の缶バッジのパーツを提供できる日がくるかと思います。
国産化したパーツは、安定した品質で途切れさせることなく販売が可能になり、そうでないパーツも空いたスペースを活用してもっと多くの在庫を保有することができるようになります。
繰り返しになりますが、弊社は今後も缶バッジ業界のプラットフォームとしてハードとソフトの両方を提供することで、「缶バッジに関わる人」を増やしていくことをミッションとしています。
市場の限られたパイを奪い合うのではなく、業界全体で協力して、缶バッジ業界を大きくしていく。我々が行っていることは、言い換えれば、缶バッジ市場を一緒に大きくしていく仲間づくりなのです。
今後もお客様と共に、缶バッジビジネスを作り上げていきたいと考えている次第でございます。