
水族館は「展示を見るだけ」の施設から脱却し、より魅力的で差別化された体験を提供することが求められています。集客施策としてのイベントやプログラムの企画は、水族館経営において重要性を増していますが、効果的な施策を模索している施設は少なくありません。本記事では、水族館の集客施策における課題からイベントのアイデア、集客施策を成功させるポイント、具体的な事例をご紹介します。
水族館の集客施策における課題
水族館は、教育施設とエンターテイメント施設という、時に相反する要素を持ち、それらのバランスを取りながら運営していく必要があります。近年では、特に以下のような課題に直面しています。
多様化する来場者ニーズ
来場者の期待は急速に多様化しており、単一的な展示だけでは満足を得られない状況になっています。「一度見たから十分」という固定展示によるリピーター離れも課題となっており、常に新鮮な体験を提供し続けることが求められます。現代の消費者は、モノよりも体験を重視する「コト消費」の傾向が強まっており、水族館もこの流れに対応する必要があるでしょう。
コト消費については以下の記事でくわしく解説しています。
>> コト消費とは? モノ消費との違いや注目される理由、主な例を解説 <<
競合施設との差別化
レジャー・文化施設の多様化により、水族館は単独の施設としての魅力だけでなく、テーマパークや複合型エンターテイメント施設との競争環境に置かれています。他施設との明確な差別化ポイントを打ち出せなければ、選択肢のひとつとして埋もれてしまう危険性があります。
インバウンド観光客の取り込み
訪日外国人観光客の増加に伴い、水族館は国内客だけでなく、言語や文化背景の異なる多様な外国人来場者への対応という新たな課題に直面しています。特に、言語の壁や文化的背景の違いがあるなかで、日本の水族館の魅力を効果的に伝え、旅行計画に組み込んでもらうための情報発信が求められます。
水族館の集客に効果的なイベントのアイデア
水族館の集客力を高めるには、来場者の興味を引く魅力的なイベント開催が効果的です。以下に具体的なアイデアを紹介します。
季節に合わせた特別イベント
年間を通じた集客維持には、それぞれの季節の特徴を生かしたプログラムが欠かせません。具体的には、次のようなアイデアがあります。
- 夏のナイトツアー:
閉館後の水族館を特別に開放し、昼間とは異なる生き物たちの姿を観察する体験 - 寒冷地の生き物たちの生態観察ガイド:
ペンギンやアザラシなど寒冷地の生き物たちが活発になる特性を生かした特別ガイドを実施 - イルミネーションと海洋生物のコラボレーション:
水槽とライトを組み合わせた幻想的な空間演出
各季節2〜3カ月限定の企画として打ち出すことで、年間を通じたリピート来館を促進できます。
体験型イベント
水族館の教育機関としての役割を発揮できるイベントは、特にファミリー層の獲得に効果的です。子どもたちが楽しみながら海洋生物や環境保全について学べるイベントには、次のようなものがあります。
- バックヤードツアー:
普段見ることのできない水族館の裏側を案内する特別ツアー - 飼育員体験:
餌やりや水槽掃除など、一日飼育員として働ける体験プログラム
- 宿泊体験:
水槽の前でテント泊体験ができる特別イベント - 海の生き物工作教室:
海の生き物をテーマにした工作ワークショップ
生き物との絆を深めるイベント
生き物たちとの特別な絆を深めるイベントは、来場者の感情的なつながりを強化し、再来場の意欲を高める効果があります。
- 赤ちゃん誕生記念イベント:
新たに生まれた生き物や新規導入種の名前を来場者が命名できる企画 - 成長記録イベント:
人気生物の誕生日や記念日に合わせて実施する、成長を祝う特別セレモニー - 定期観察会:
特定の生き物の生態を専門家と一緒に観察する少人数制プログラム
SNSを活用したイベント
InstagramやYouTubeといったSNSを活用したイベントは、来場者の情報拡散により、低コストで高い広告効果を期待できます。例えば、次のようなイベントのアイデアがあります。
- インスタ映えフォトスポット設置:
撮影するだけでフォトジェニックに仕上がる特別スポット - ハッシュタグキャンペーン:
特定のタグをつけた投稿で割引や特典が得られる企画 - 生き物総選挙:
SNSを使った人気生き物投票イベント
SNSの活用は、国内客だけでなく、インバウンド需要の喚起にも効果的です。訪日前に水族館の魅力を知ってもらうことで、実際の来場につなげることが可能です。
地域・企業との連携イベント
企業や地域との連携イベントは、水族館の魅力拡大と新たな客層の開拓に効果的です。互いの強みを生かして協力することで、単独では提供できない価値を生み出すことができます。
- 地域周遊型のスタンプラリー企画:
地域の複数施設や店舗を回るイベント - 人気キャラクターとのコラボイベント:
アニメやゲームキャラクターの世界観を取り入れた限定展示や体験企画
オンラインイベント
物理的な来館だけでなく、オンラインの接点も重要度を増しています。例えば、次のようなアイデアがあります。
- ライブ配信飼育員トーク:
生き物の習性や裏話、質問への回答など、専門家ならではの視点を交えたトークイベント - バーチャル水族館ツアー:
専門知識を持つガイドが案内役となり、ライブ映像を通して水族館内を案内
イベント集客のアイデアついては、以下の記事でもくわしく解説しています。
>> イベント集客のアイデア5選!成功させるための事前準備やコツを紹介 <<
水族館の集客施策を成功させるポイント
ターゲット層の明確化
ターゲット層を明確に設定することで、その層の興味・関心に合致した魅力的なイベント企画が可能になります。例えば、ファミリーには体験型の学びの要素、若年層にはSNS映えする視覚的要素、シニア層には解説を充実させた知的好奇心を満たすコンテンツなど、ターゲットに響く内容を提供することが重要です。
また、イベント情報をターゲット層に効果的に届けるチャネル選定も重要です。SNSやWeb広告、オフライン媒体など、ターゲットの情報収集行動に合わせたチャネルを選びましょう。効率的に情報が届けられ、来場促進につながります。
イベント開催時期の戦略的な設定
閑散期に効果的なイベントを配置することで、年間を通じた来場者数の平準化が可能になります。一般的に、水族館の来場者は夏場に集中し、冬場は減少する傾向があります。そのため、冬季にはイルミネーションや暖かい室内でのイベント、バレンタインデー企画など季節性を生かしたイベントを戦略的に配置するといいでしょう。
ファン化を促す仕組みづくり
新規顧客の獲得だけでなく、来場者をリピーターから熱心なファンへと育てる仕組みづくりは、持続的な集客に欠かせません。年間パスポートや会員制度を充実させ、会員限定イベントや特典を提供することで施設への帰属意識を高め、ファンを育成できます。熱心なファンの情報発信や口コミは、新規顧客の獲得につながります。
また、水族館の生き物をモチーフにしたグッズ展開は、来場の記念になるだけでなく、特定の生き物への愛着を深める効果があります。近年の「推し活(特定のキャラクターやアイドルなどを応援する活動)」文化とも親和性が高く、ファンの関心を継続的に引きつけます。
こうした取り組みは、「ファンマーケティング」と呼ばれ、水族館の長期的な集客戦略として有効です。
推し活やファンマーケティングについては、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 推し活の市場規模は?最新動向から基礎知識、グッズビジネスに役立つ情報も <<
>> 推し活マーケティングとは? 注目の理由と高い効果を得るためのポイント <<
>> ファンマーケティングとは?基礎知識や実践のポイント、成功事例を解説 <<
水族館が実施した集客イベントの事例
京都水族館の事例
京都水族館では、2020年から継続的に期間限定イベント「くらげのあかりたち」を開催しています。約60個のクラゲ型ランプが創り出す幻想的な光の空間と、実際のクラゲ展示を組み合わせた特別な展示が特徴です。館内ではクラゲの成長や生態を学べるワークショップや特別授業、限定スイーツの販売など、クラゲに特化したさまざまな関連イベントも実施され、さまざまな層の関心を引く内容としています。
参考:幻想的なクラゲランプで冬をあたたかくともす 「くらげのあかりたち」11月30日(土)から開催 | 梅小路京都西駅からすぐ「京都水族館」【公式サイト】
上越市立水族博物館の事例
上越市立水族博物館「うみがたり」では、2025年1月から期間限定で「通ってちょうだい!ブロマイド2025」と題したスタンプラリー企画を実施しました。来館者が館内でさまざまな体験をするとスタンプがもらえ、一定数集めると「生きものブロマイド風ポストカード」がプレゼントされるという仕組みです。スタンプ獲得条件にミュージアムショップ・レストランの利用、有料ツアーへの参加といった要素もあり、館内での消費を促進する効果的な集客施策となっています。
参考:通ってちょうだい!ブロマイド|上越市立水族博物館 うみがたり
emoji_objects イベントの集客力向上にはポイントを押さえた取り組みが必要
水族館の集客施策としてのイベント企画は、施設の魅力を高め、来場の動機付けとなります。季節に合わせた特別イベントや体験型プログラム、SNS活用など多様な手法がありますが、イベントを成功させるためには明確なターゲット設定とそれに合わせた企画・情報発信方法の検討が必要です。
さらに、一度きりの来場者をファンへと育てる継続的な取り組みも欠かせません。缶バッジをはじめとするオリジナルグッズの展開は、ファン化を促進する効果的な方法のひとつです。バッジマンネットでは、各種缶バッジ製作マシンやパーツを取り揃え、詳細な製作方法も紹介しています。ぜひご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。