かつて「聖地巡礼」と言えば、宗教に関連する用語として知られてきましたが、近年はより身近な言葉となっています。アニメや漫画などの熱心なファンが、作品に関連する場所を「聖地」として訪問するのが、今ビジネスチャンスとしても注目される聖地巡礼です。
聖地巡礼は知名度の低かった地域にもスポットが当たる機会であり、その活用は地方活性化の一手段としても期待されています。今回は聖地巡礼の経済効果に着目しながら、具体的な効果や成功事例を紹介します。
聖地巡礼とは?
「聖地巡礼」とは、もともとは信者が自分のあがめる宗教上の聖地・霊場、重要な場所などを参拝して回ることを意味します。
そこから、現代の俗語ではアニメ、漫画、小説、ドラマ、映画などの舞台となった土地を訪れて世界観に浸ることを指す言葉として使われるようになりました。漫画やアニメなどの熱心なファンが、作品の舞台や縁のある土地を「聖地」と呼び、その地を訪ね歩くという意味合いです。
似たような言葉として、コンテンツツーリズム、アニメツーリズムがありますが、これらには上記を目的とした観光という意味のほかに、観光客誘致のために企業や自治体が行う観光マーケティングという側面もあります。
コンテンツツーリズムは、映画、テレビドラマ、アニメ、ゲーム、音楽、漫画、雑誌、書籍、小説などの作品の舞台を訪れる観光です。コンテンツツーリズム学会では“地域に「コンテンツを通じて醸成された地域固有のイメージ」としての「物語性」「テーマ性」を付加し、その物語性を観光資源として活用すること”と定義しています。
一方、アニメツーリズムは、アニメや漫画の作品の舞台となった土地や建物などを訪れる観光です。聖地巡礼は、アニメツーリズムとほぼ同義ととらえてよいでしょう。
ここで注目したいのが、漫画やアニメに関連すれば無条件に「聖地」となるわけではなく、ファンから「聖地」として認められる必要があるという点です。
聖地巡礼については、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
聖地巡礼による経済効果
聖地巡礼ブームによる観光客の増加や経済効果について解説します。
観光客(国内外)の増加
『らき☆すた』のアニメのモデルとなった神社では、放映後の参拝客数が3倍近く増加したといい、またテレビ放送以来の10年間での経済波及効果は約31億円に達すると算定されています。
映画『君の名は。』を含む複数のアニメ映画の舞台になった岐阜県では、その経済波及効果が253億円に達したとされました。飛騨市の計算では、2016年に訪れた聖地巡礼者数は3万6,000人、観光スポット「古い町並」を訪れた観光客数は前年比13%増にもなっています。
十六総合研究所の調査結果では、アニメ映画『ルドルフとイッパイアッテナ』『君の名は。』『聲の形』に関する岐阜県への聖地巡礼者は約 103 万人、岐阜県での消費額は 230 億円と算定されています。
観光庁の「訪日外国人の消費動向」2022年調査によると、海外からの観光客のうち5.3%が映画・アニメ縁の地を訪問、約95%が満足との回答が見られます。また8.7%が「次回したいこと」としてあげており、今後の来日時に期待されます。
訪日外国人客数自体は2023年9月には2019年同月の96%まで回復しており、さらなる増加が見込まれることから、聖地巡礼に訪れる外国人も増えると見られます。
雇用の増加
観光客が増えることで宿泊施設、飲食店、物品販売、案内など多くの雇用創出が期待されます。この先、インバウンド効果が高まれば多言語に対応する人材雇用も進み、国内外国人の起用もあり得るでしょう。
埼玉県久喜市商工会鷲宮支所の資料によると、『らき☆すた』テレビ放送以来の10年間での経済波及効果により誘発された雇用者数は約316名です。
またアニメ映画『ルドルフとイッパイアッテナ』『君の名は。』『聲の形』に関する岐阜県の雇用効果は2,811人で、どの地域でも聖地巡礼による雇用効果が生まれていることがわかります。
特産品やコラボグッズの販売促進
楽天グループ株式会社アド&マーケティングカンパニーの分析によると、“聖地観光によりその地域への愛着が醸成された結果、作品愛が強化され旅行後のグッズ購入につながる”傾向が見られるとされています。
地域観光への貢献はもちろん、聖地巡礼によりファン化の深度が高まり、グッズ購入増につながる可能性があります。
聖地巡礼をするファンはもともとその土地への興味・関心が高いため、訪問先での特産品を購入するということもあるでしょう。また聖地巡礼をする人だけではなく、「地域への愛着」という下地があるアニメの舞台居住者は、アニメ作品のファンになりやすく、グッズを購入する可能性が高いと考えられます。
コラボグッズ製作においては、その土地らしい商品を提供することで、思い出作り、土地への愛着をうながす役割を果たしながら販売促進につながることが期待されます。
聖地巡礼スポットの成功例
聖地巡礼目的の観光客をうまく誘致し経済効果をあげた事例を紹介します。
『君の名は。』で一躍有名になった岐阜県飛騨市
岐阜県飛騨市は、『君の名は。』の舞台となった図書館内を条件付きで撮影できるようにしたり、撤去されていたバス停の標識を再設置したりするなどして、積極的にファンを呼び込みました。こうした地元の歓迎ムードは、訪れる人に伝わり地域のファンづくりに貢献します。
市をあげた取り組みにより聖地巡礼の経済効果は253億円に上ったとされます。
『けいおん!』電車が走る滋賀県犬上郡豊郷町
『けいおん!』の舞台である滋賀県犬上郡豊郷町では、観光案内所で同作のオリジナルグッズが販売されています。この商品は全国に向けて一般販売されていないため、ご当地限定として聖地巡礼の誘因効果を高めるのに大きく貢献しました。
京阪電気鉄道と系列の叡山(えいざん)電鉄では、楽器型の硬券記念切符を販売したところ、6,000セットが2時間半で売り切れました。これらメディアや関連グッズによる経済効果は、380億円と言われています。
『ガールズ&パンツァー』オリジナルグッズで成功した茨城県大洗町
『ガールズ&パンツァー』の舞台となった大洗町では、官民連携の取り組みにより観光客を呼び込んだだけではなく、土地の魅力が引き出されたことで移住者も増えるという結果となりました。地元限定のオリジナルグッズにより集客力を強化し、さらに地域性への共感を引き出したのが成功の要因と言えるでしょう。
聖地巡礼ブームの今後
2016年に設立されたアニメツーリズム協会では、2018年版より毎年「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を選定、オフィシャル化することで国内外に積極的に情報を発信しています。選定した地域にアニメ聖地88認定プレートとご朱印スタンプの設置を進めており、聖地巡礼を促進する好材料になると思われます。
国でも観光立国としての戦略としてアニメツーリズムを推進しています。
インバウンド効果への期待もあり、聖地巡礼の活性化や地域・企業による商品やサービス・イベント創出は今後も促進されていく見通しです。
「推し活」ブームに見られるように、個人消費のカテゴリとして趣味に関する分野は成長が続いています。くわえて、「モノ」よりも「コト」に価値を見出す社会的な流れもあり、聖地巡礼ブームはまさにそうした意識の表れとなって続くことが予測されます。
聖地巡礼ビジネスへの参入で経済効果を獲得
聖地巡礼に関連したさまざまな経済効果が生まれています。プライベートの楽しみを大切にする傾向が強まるなかで、聖地巡礼に行く人はこれからも増え続けることが予測されます。海外からの来日観光客も戻りつつあり、聖地巡礼の市場の拡大にも期待がかかります。
事例にあるように聖地巡礼で訪れた作品ファン向けの施策として、グッズ販売は非常に高い効果をもたらします。聖地巡礼に向けたビジネスとしてグッズ開発を検討するのであれば、アレンジの幅が広くサイズ的にも価格的にも手に取りやすい缶バッジがおすすめです。
しかし、巡礼者の気持ちに寄り添い、満足度を高めるためには高品質なグッズでなければなりません。バッジマンネットが扱う高性能マシンや品質の良いパーツであれば、作品ファンにも納得できる缶バッジの製作が可能です。聖地巡礼の経済効果を自社でも獲得したいとお考えの際には、ぜひご活用ください。