聖地巡礼は、漫画やアニメ、小説やドラマなどの作品の舞台になるなど、縁の深い場所をファンが巡って歩く行動を指します。近年は日本人だけでなく、海外からも国内の聖地巡礼を目的に来日する観光客が見られるようになりました。聖地巡礼は地方の活性化の一手段となり、新たなビジネスチャンスとなります。しかしその一方で、聖地巡礼に訪れた観光客と地域住民のトラブルも少なくありません。ここでは聖地巡礼の基本的な知識から経済効果、成功例と注意点などを解説します。
聖地巡礼とは?
初めに「聖地巡礼」という言葉の意味と現在の聖地巡礼ブームについて解説します。
聖地巡礼の概要
「聖地巡礼」は、もともとは宗教上の聖地・霊場などを信者が参拝して回ることを意味する言葉です。そこから転じてファンの間の俗語として、アニメやドラマ、映画の舞台となった地を巡ることを指すようになりました。聖地巡礼がブームになったのは、2005年「聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヶ所めぐり」発行がきっかけと言われています
また聖地巡礼と類似した言葉としては以下のようなものがあります。
- コンテンツツーリズム
映画、テレビドラマ、アニメ、ゲーム、音楽、漫画、雑誌、書籍、小説などの情報作品の舞台を訪れる観光を示します。
- アニメツーリズム
アニメや漫画の作品の舞台となった土地や建物などを訪れる観光を示し、上記のコンテンツツーリズムに含まれると考えられます。
聖地巡礼が注目されている背景
推し活ブームなど個人的に好きなものを熱心に応援する傾向が強まっているなかで、聖地巡礼はよりその対象に近づける行為として人気が高まっています。
愛する作品好きな作品の舞台となった場所で、登場人物の気持ちによりそいたい、一体感を味わいたいといった気持ちを具体的な行動にする方法であるととらえられます。また聖地を訪れ、SNSに情報を発信することで、同じ思いの人たちと同じ感動を共感できるので、より満足度が高まることになります。
近年、アニメで描かれる背景や風景が非常にリアルなものとなり、現存する建物や街並みが登場しているケースも少なくありません。ドラマや映画のロケ地巡りに見られたファンの行動が、アニメでも可能となったことも一因です。
聖地巡礼ビジネスでは街や地域全体をブランド化し、地方創生につなげるケースが多く見られます。アニメの聖地巡礼はドラマなどに比べると息が長い傾向があり、持続的な観光資源として有望です。なかには数十年にわたってファンが訪れるという場所もあります。
日本のアニメや漫画はクールジャパン・コンテンツとして世界的に人気が高く、聖地巡礼を目的に来日する外国人観光客も増えています。そのため、聖地巡礼はインバウンド需要の一角としての価値にも期待されているといえます。
キャラクターマーケティングの手法については、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
聖地巡礼による経済効果
聖地巡礼ブームによる聖地登録数や観光客の増加、経済効果について解説します。
聖地巡礼と地域活性化
「聖地巡礼マップ」を運営するディップによると、聖地は2021年4月時点で全国に5315ヵ所となり、14年4月時点の2478ヵ所から倍増しています。
聖地巡礼では作品の舞台となった場所そのものが地域資源となり、さらに地元商店街、お祭り、食文化、歴史、自然といった聖地以外の地域資源への興味につながる可能性があります。
またインバウンド効果として、聖地は「神社仏閣」「日本的な街並み」「日本食」との親和性が高いため外国人観光客の興味を引きやすいという特徴があります。
観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向」によると、2019年に「映画・アニメ縁の地を訪問」した訪日外国人は4.7%で、訪日外国人数の全体から換算すると、約147万人が聖地巡礼をしています。さらに訪日外国人へのアンケート調査でも、「次回したいこと」として、10.2%が「映画・アニメ縁の地を訪問」をあげています。
聖地巡礼の影響
東海4県の中で4割のアニメの聖地巡礼スポットを誇る静岡県では、聖地が多い地域の観光案内所の利用者がアニメ放映前の約9倍になったとも言われています。さらに『君の名は。』の舞台となった岐阜県飛騨市では、その経済効果が253億円に上るとされます。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で低迷した旅館がアニメの舞台と酷似していたことで予約が殺到した例もあります。
また、埼玉県が舞台の『らき☆すた』では、モデルとなった鷲宮神社にアニメ放映後の初詣客が年々増加しました。2014年の発表では4年連続で47万⼈が参拝し、日本政策投資銀行の試算によれば10年間での経済波及効果は約31億円に上るとされています。
聖地巡礼やオタクの経済効果については、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
聖地巡礼スポットの成功例
作品のファンをうまく取り込み聖地巡礼スポットとして成功している地域の例を紹介します。
水木しげるロード『ゲゲゲの鬼太郎』
鳥取県境港市の水木しげるロードとは、JR境港駅前から本町商店街のアーケードまでの約800メートルの区間のことです。道路沿いに水木ワールドでおなじみの139体の妖怪ブロンズ像を設置し、商店街に誘導されるしかけとなっています。
鷲宮神社『らき☆すた』
埼玉県鷺宮町は、関東最古の神社である鷲宮神社の門前町として発達しました。アニメ化にあたり鷲宮神社をはじめ春日部市周辺において綿密なロケハン(ロケーション・ハンティング)が行われたことで、聖地として知られるようになりました。
当地では「鷲宮町に来て良かった」と思えるお土産になるようなものを提供できないかと考え、神社を訪れるファンに向け、グッズの販売と併せてイベントを開催しました。
岐阜県飛騨市『君の名は。』
岐阜県飛騨市では映画の公開にあわせ、海外へのプロモーション費用や、ホームページやパンフレットなどを多言語対応のものへと変更する場合の補助金を出しています。
映画でのワンシーンの画像を入れた独自ポスターの制作、SNSと映画名と連動させることで公開前から話題となっていました。公開日直後から飛騨市に「聖地巡礼」での訪問が増え、さらに海外公開により台湾や香港、韓国、中国、アメリカなどからの来訪者が増加したことで、地域活性化の大きな効果が得られています。
聖地巡礼スポットとして成功させるには?
聖地巡礼スポットとして打ち出してうまく集客するためのコツやポイント、注意点などを紹介します。
作品の世界観とファン心理の理解
地域全体が対象となる作品の世界観とファン心理を深く理解することで、共感が得られ地域としての魅力を伝えられます。作品への愛が地域への興味につながっているのを意識しなければなりません。
地元住民との連携
地元住民の理解と協力を得ることで、トラブルを回避しながら巡礼者の受け入れや地元経済への貢献がスムーズになります。地元住民自体が作品を知らない場合でも、「来てもらえて嬉しい」という気持ちから、温かい交流が生まれて成功した例は多数あります。
しかし一方で、制作会社や地域が想定していない場所に観光客が訪れたり、マナーの悪い一部の観光客が地域住民と衝突したりといったトラブルが発生することも少なくありません。こうしたトラブルを起こさないためにも、事前の準備や案内、対策をしっかり検討することが大切です。
企業だけでなく行政と協力する
地域振興や観光資源としての聖地を活かすために、企業だけでなく地元行政とも連携を図ることで幅広い活動が可能となります。公共施設へのイベント案内掲示や、市区町村の公式SNSでの情報発信などが一例です。
ライセンスの確認
地元の個人商店などでは、ライセンスについての知識がない場合もあります。制作会社や関連団体との協力や許可を取得し、法的な問題を回避することが重要です。
ライセンスビジネスや版権キャラクターについては、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
作品にちなんだグッズやキャンペーンの展開
事例にもあったようにグッズや関連イベント、キャンペーンの開催は聖地としての知名度を高め、リピーター獲得にも有効です。特にご当地のみで入手できる限定グッズはファンを引き寄せ、収益を増加させるのに役立ちます。ファン自身が作品の一部となる、いつでも作品を体感できる聖地としての経験を提供することが、多くの「巡礼者」を引き寄せます。
聖地巡礼効果をビジネスチャンスにつなげよう
聖地巡礼の目的地になると、国内外から熱烈なファンが集まり、地域に注目が集まります。そのままの風景が地域にとって経済効果をもたらす要素となり、そこから多種多様なビジネスチャンスが広がります。
聖地巡礼で訪れた作品ファンにとっては、そこでしか手に入らないグッズの購入も大きな楽しみです。聖地巡礼して歩くファンに向けて、アレンジの幅が広くサイズ的にも価格的にも手に取りやすい缶バッジがおすすめです。
バッジマンネットが扱う高性能なマシンや品質の高いパーツであれば、美しいデザインにより作品の世界観を再現し、巡礼者の気持ちをきっと満足させられます。聖地巡礼をビジネスチャンスにつなげたいとお考えの際は、ぜひご活用ください。