あるセミナー主催者が、年収2500万円以上の保険営業の人たちを対象に調査を行いました。
この調査によれば、何か学んだことを実践する人は約20%ほど、さらに、それをゴールまでやり遂げられる人はその中の20%ほどいなかったのだと言います。
つまり、何かをやろうと思い立って、最後までやり遂げられる人は4%ほどで、96%の人たちは途中で諦めてしまったり、具体的な行動すらしないまま終わってしまっているのです。
「思考は現実化する」の著者であり、アメリカで成功した人たちを徹底的に調査したナポレオン・ヒルが行った調査もあります。
彼は、人が何か目標を掲げた時、諦めるまでに何回トライしたかという平均値を調査したところ、諦めるまでの平均回数は1回未満だったのだそうです。
会社、学校、子育てからスポーツまで、「明確な目標を持とう!」、「最後までやり遂げよう!」という言葉で溢れていますが、実際は、ほとんどの人が、自分の達成したい目標を達成できずにいます。
よく、目標を紙に書くと目標の達成率が高まると言われます。
実際、2015年にドミニカン大学カリフォルニア校の心理学者のチームが行った調査によれば、目標を紙に書き、尚且つ、その目標を誰かに報告する義務を必要とする環境を作れた人は、そうでない人に比べて、明らかに目標達成率が高かったのだそうです。
目標を紙に書くことの大切さは、孫正義、イチロー、本田圭佑など、子供の頃に書いた日記などがよく引き合いに出されますが、実際は、経営者という目標達成の意識が高い人たちでさえ、目標を紙に書いている人は、数%しかいません。
恐らく、多くの人が目標を紙に書いたり、目標を誰かに報告することを躊躇してしまう理由は、恥ずかしさと、こんな目標は自分には達成できるわけがないという本音の部分がどこかにあるからなのでしょう。
別に紙でなくても、文字でなくても、自分の目標を何か物理的なものに描くという方法はたくさんあります。
例えば、文字ではっきり自分の目標を書くのが恥ずかしいのであれば、自分の目標をイラストで表現し、それを缶バッジにして、カバンなどにつけて持ち歩けば、間接的に誰かに自分の目標を報告していることになり、何かを成し遂げる力が強くなります。
将来、ハワイに住みたいのであれば、自分が想像するハワイのイメージを缶バッジに描いて持ち歩く。何かお金を貯めて買いたいものがあるのであれば、それを実際にイラストで描いてみて、缶バッジにしてカバンにつけておく。
よく、自己啓発の本などには、自分が欲しいモノの写真などを見る頻度の高い場所に貼ると、脳がそのイメージを実現させるために、行動の具体的な思考回路を作っていくのだと書かれています。
確かにそれも一つの方法なのでしょうが、教科書を読んで何かを暗記するよりも、自身の解釈も踏まえて、自分の言葉にして暗記した方が、記憶に定着しやすいのと同じように、自分の目標をイラストで表現した方が、具現性が高まるのかもしれません。
目標とは、それを紙に書いたり、イラストなどで表現してはじめて、その目標を所有することができます。
何らかの自分の表現方法で表現してはじめて、目標に触れることができるのです。
目標の本気度を「量」から「質」への変化させていく。
行動、思考、言葉の中で、唯一人間だけが持っているものが「言葉」であり、この言葉をどう使うかが、目標達成には非常に大切になっていきます。
オノ・ヨーコは「1人で見る夢は夢でしかない。しかし、誰かと見る夢は現実だ」と言いましたが、最初にご紹介したドミニカン大学の調査にもあったように、自分の目標を紙でなくても、何かしらの形で表現し、それを周りに共有していくことが、目標達成のスピードを早めるのでしょう。
自分が何をしたいか分からないという場合は、とにかく自分が思いつく限りのことを紙に書いたり、イラストで描いて缶バッジにするなどして、他人や世の中にどんどん共有していくことで、自分のやりたいことが明確になっていきます。
はじめは、非現実的な目標であったり、具体性が乏しいものだったとしても、数をこなし、他人と共有しながら考えを深めていくことで、「量」はいずれ「質」に変換されていく。
創造性が求められる仕事においては、量が質に転換されていくというのは、当たり前の認識です。
ピカソは2万点以上の作品を残し、エジソンは2000個以上の発明をして、ヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソンは200個以上の会社を立ち上げることで、量を質に転換しています。
最近の芸術の学校では、作品の質だけではなく、作品の量も評価する学校もあるのだと言います。
とにかく目標は頭の中にあるだけでは、実際に目標を所有していることにはならず、何か形あるものに表現してはじめて、目標を自分のものとして所有することができるのです。
本当の意味で人を動かすのは、大きな情熱や大きなモチベーションではなく、目標を紙に書く、自分の将来のイメージをイラストで表現するなどの「小さなモチベーション」の積み重ねなのです。
何か目標を叶えるためには、何か具体的な行動を通じて、自身のアイデンティティを変化させていかなければなりません。
缶バッジに自身の目標を描き続け、カバンなどにつけて、さりげなく他人と共有し続けることで、いつの間にか自身のアイデンティティが少しずつ変化し、目標達成に少しずつ近づいているという実感を持てるはずです。
大抵の人は、どれだけ論理的で科学的な根拠をあげられても、行動に移すことができません。
上手く行くかどうかに関わらず、行動できるかどうかが、差別化につながる時代です。
小さな缶バッジに、あなたの大きな夢を描いてみてはいかがでしょうか。