「オタク」文化は今や日本だけにとどまらず、コミックマーケットなどの大型イベントには外国人の姿も多くみられます。「オタク」「マンガ」は世界共有の言葉となり、市場は拡大傾向にあると言えるでしょう。
そうした社会状況をにらみ、オタク市場参入への検討を進めている企業担当者もいるのではないでしょうか。今回はオタク市場への販路拡大の可能性を探るための、参考となる情報を紹介します。
「オタク」とは?
初めにオタクとはどのようなものなのか、基本的な知識を解説します。
オタクに関する基本情報
「オタク」とは、一般的には特定のモノに対して強いこだわりや熱狂的な気持ちを持つ人を指します。サブカルチャーの熱烈なファンとして、情報発信や創作活動しているケースも多くみられます。
「オタク」の語源は1980年代初期の秋葉原で、愛好家が集まるイベント会場発とされます。
「オタク」がやや揶揄的なイメージを持っていた過去の時代に比べ、最近では「オタク」という言葉に対する抵抗感が薄れてきているようにも感じます。二次元、三次元問わず特定のモノに執着している特殊な人々といった捉え方から、いわゆる「リア充」との距離が狭まり、特定の分野に強く興味関心を持つという意味で「オタク」が使われている場合も少なくありません。
特に若い世代では「オタク」と呼ばれることに抵抗のない傾向がみられます。
背景にはコスプレイヤーのアイドル化など「オタク」ジャンルが拡大したことや、「健康オタク」「美容オタク」など、「オタク」という言葉を使用する幅が広がったことがあると考えられます。
オタクの属性は?
矢野経済研究所が2017年に実施した調査によると、18~69歳までの男女のうち、何らかの形で「オタク」に属するとされるのは、19.9%もいて、5人に1人はオタクという結果でした。また、2030年にはオタク人口比率が30%を超えると推測されています。
オタクの属性は10代~20代の若い世代が中心で、男女比はほぼ半々です。ジャンルとしてもっとも多いのはアニメで、次いで漫画、デジタルゲーム、アイドルと続きます。
コロナ禍によりオタク市場にも、影響がありました。アニメ・アイドル関連は、コンサート、イベントの自粛によりコロナ発生前よりも落ち込みが目立ちます。一方で、在宅が増えたこともあり、プラモデルやフィギュア、模型などが上昇しています。
今後はwithコロナに移行しつつあることで社会が落ち着きを取り戻し、規制の撤廃も進むなか、アニメ・アイドル市場も回復が見込まれます。特に映像配信は、世界市場での盛り上がりもあり、アニメ・ゲーム市場の拡大が続くと予測されます。
オタクの経済効果
「オタク」の活動による経済効果を解説します。
オタクはどんな活動をするのか
「オタク」の一般的な活動としては、以下のようなものがあります。
- イベント・ライブ参加
- グッズ収集
- 聖地巡礼
- 記念日を祝う
- 同人誌・関連作品を制作
最近ブームとなっている「推し活」は、「オタク」に近い意味として受け止められていますが、厳密には違いがあります。
- 推し活:特に好みのアイドルやアニメ・ゲームのキャラを応援する活動
- オタ活(オタク活動):アイドルやアニメ・ゲーム、その他愛好するものに関して、趣味として極めようとすること
オタク活動による消費金額
「オタク」の活動による経済効果をみていきます。1人当たりの年間消費金額は分野によってまちまちですが、人気分野である漫画やアニメ、デジタルゲームでは約3万円~5万円ほどです。アイドル分野に関しては消費金額が多い傾向にあり、10万円弱という調査結果が出ています。
また、分野別の市場規模については、コロナ禍の影響から回復傾向はみられるものの、まだコロナ前の水準に戻っていないところも多くあります。アイドル分野は個人当たりの消費金額も高く、声優や地下アイドルなどジャンルの細分化も進んでいるため、社会が平常の状態に戻ることで引き続きオタク文化の中心的な役割が期待されます。同様に行動制限の緩和により、首位を走るアニメ市場のさらなる拡大が予測されます。
今後注目される分野としては、個⼈や少数の国内外のクリエイターによって開発されるインディーゲーム関連に勢いがみられます。
2022年度以降はコロナ禍からの回復が一層進むと予測されますが、一方で物価高、円安の影響により「フィギュア」市場は縮小の可能性があります。
オタクビジネスの強み
ここでは「オタク」をビジネスの対象とすることのメリットを解説します。
・若年層が消費者としてメインとなる
「オタク」人口はすでに全世代に広く拡大していますが、特に若年層は幼い頃からデジタルや配信サービス、細分化されたアイドル、ゲーム、キャラクターに親しんでおり、成長とともに消費力が増していきます。「オタク」が一般的なものとなると同時に、好きなモノには惜しみなくお金を使うスタイルが浸透することで、ビジネスとして将来的な展望が期待できます。
・ジャンルが幅広い
「オタク」のジャンルは人の数だけあるとも言えます。ニッチな分野であっても、世界規模でみれば相当数の需要が見込めるため、未開拓の分野を見出し、自社の得意分野にできる可能性が広がります。
・次々に新しいジャンルが開拓され属性も拡大する
上記とも重なりますが、新しい技術の登場とともに「オタク」のジャンルも拡大していきます。例えば、インターネットも一般化することで、若者文化から全世代な文化へと変化してきました。新しいジャンルが開拓されれば、そのぶんビジネスチャンスも生まれます。
・「推し活」ブームによる後押し
「推し活」ブームによって、自分の好きなモノを堂々と楽しむ意識が体現されました。みんなと同じよりも自分だけの「推し」を探すといった、個人的な好みを重視する風潮が強まっているのも「オタク」ビジネスへの追い風と言えるでしょう。
・世界的なオタク文化の広がり
「オタク」が世界的なワードとして知られるようになり、日本はその聖地として注目されています。日本発のクールなグッズの販路を拡大することで、商機が得られます。
ECプラットフォームの整備により、小規模な事業者でもチャンスをつかみやすく、アイデア次第で幅広い事業展開も可能です。
オタク市場参入を成功させるポイント
オタクビジネスを展開していくうえで、留意すべきポイントを解説します。
・オタク文化への理解
「オタク」は単に「好き」な人たちではなく、非常に強いこだわりを持った消費者です。世界観を重視し、愛情の対象を貶める、傷つけるようなことは絶対に避けなければなりません。商品を企画する際にも、企業的な押し付けではなくオタク文化に寄り添う姿勢を意識するといいでしょう。
・高品質であることを重視する
「オタク」の精神を満足させるために、消費者の厳しい品質視点を満たす必要があります。「オタク」はただ消費(購入)するだけでなく、大切に保管・陳列もします。例えば、購入したけどすぐに錆びてしまうといった缶バッジでは、すぐに製造元が特定され、SNSでの拡散につながり製造企業のイメージダウンなります。
細心の注意を払い、高品質な商品を追究していく必要があります。
・著作権侵害に注意
版権キャラクターなどを扱う際に販売元となる場合には、必ず提供元を確認、連絡することが重要です。商品化にあたっては、契約条件を確認し、逸脱のないよう対応します。
版権キャラクターグッズに関しては、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
企業が版権キャラクターを起用する際に知っておくべきこととは?
ライセンスビジネスのメリットや注意点を解説 グッズ活用で宣伝効果向上も!
また、無料でダウンロードできる『eBook』
にもお役立ち情報が多数ございます。缶バッジの製作、販売にご興味がある方は、ぜひご覧ください。
・「限定もの」の強みを活かす
オリジナリティを大切にすることで、特別感を付加し、ビジネス上の強みとなります。自社の得意分野を活かした商品制作を行うことで、より高品質なアイテムを提供できるでしょう。さらにオリジナル商品の注文を個別に受け付けるサービスなど、対応に工夫をして差別化を図ることも大切です。
・ターゲット層の研究をする
「オタク」と一口に言っても、その在り方はさまざまです。自社ビジネスの対象について、どのようなお金の使い方をするのか、あるいはグッズの楽しみ方にはどのようなスタイルがあるのかなど、ターゲット層の研究をすることで、よりニーズに沿った商品提供が可能となります。
オタク文化はニッチ市場を切り崩す手がかり
「オタク」は今では世界から注目される日本発の文化となりつつあります。また国内では昨今の推し活ブームによってさらにすそ野が広がっており、年代層を問わず個人的な好みやこだわりを追究する人が増加中です。オタク市場に欠かせないのが、オリジナルのグッズです。自分だけが手にできるグッズは、オタク心をつかみます。
数あるオタク向け商品のなかでも、缶バッジは事業に取り入れやすく、オタクビジネスへの参入を容易にするアイテムです。比較的導入コストをかけず、多種多様な缶バッジを製作できます。オタク市場に参入を考えているのであれば、ぜひご活用ください。