作家やクリエイターと呼ばれる人たちは、20歳までに体験したことを源泉に生涯のコンテンツをつくっていくのだと言います。
デジタル世代の子どもたちは、映画、テレビ、本などを通じて、様々な物語が身体に染み付いているのに、実際にそういったドラマのような物語を全く経験したことがなく、体験というものが圧倒的に不足しているのです。
人間は、生まれた時には大脳に1000億ぐらいのニューロンがあるのだと言われますが、大人になるとそれが160億ぐらいに減ってしまう。
重要なのは、情報伝達のためのシナプスが、脳の中のどういった部分とつながってコミュニケーションをとっているかということで、幼少期のニューロンが活発な時期に、どれだけ意味のある体験をさせるかによって、人格や本当の意味での賢さが決まってくるのだと言います。
以前から、絵本展や新作絵本の発売のタイミングなどで、絵本と缶バッジを組み合わせたイベントが数々開催されていましたが、そのイベントのアイデアはどんどん進化しています。
全国で絵本のイベントが再開された昨年は、絵本を楽しむことを中心に据えつつ、缶バッジのワークショップに輪投げ、お面づくり、クイズ、さらにおみくじ、エコバッグ作り、アリの観察まで、さまざまな遊び体験の場としてデザインされています。
シカゴ大学心理学部のシアン・バイロック教授は、「首から下」でしっかり物事を感じ取るようにすることが、最終的に脳を強くする大きな要因なのだと言いました。
そういった意味では、デジタルの圏外でどれだけ子どもに様々な体験をさせてあげられるかが、子どもの将来の人間性を決めていくのかもしれません。
これからの企業はモノではなく、「体験」を流通させていく。
モノ作りからコト作りと言われるように、これからの企業はモノではなくコト、つまりは体験を流通させていかなければなりません。
実は少子化が進んでいる現在も、児童書の売れ行きは好調なのだと言います。
KDDI総合研究所の「拡張する絵本の世界」という調査報告でも、ほかのジャンルの売上がすべて減少しているのに対して、児童書だけは売上が伸びていたと報告されています。
中でも絵本は売上をリードしており、2021年の数字では児童書の売上の 約35%を占めるほど揺るぎない人気を誇っています。
その成功要因として、地域の子どもたちに絵本に触れる機会を増やすために学校や書店、図書館などの枠を超えて地域の人々が協力し合っていることが大きいと考えられているのです。
小さな子どもの感覚を刺激する絵本は、色合いや質感、本の大きさなどにもこだわってつくられているため、手にとって触ってみる楽しみが大きく、デジタル化の中でも紙ならではの良さが大切にされてきました。
そういったこともあって、絵本は缶バッジづくりや輪投げのようなアナログなイベントと組み合わせやすいのかもしれません。
現在、これまでは当たり前に参加していた地域のお祭りや様々な行事などに参加する人がどんどん少なくなり、リアルに物事を体験するための、様々な機会がどんどん少なくなってきています。
しかし、SNS上では、ワールドカップが放送されれば「サッカー祭り」、村上春樹の小説が発売されれば「春樹祭り」、ジブリが地上波で再放送されれば「ジブリ祭り」などといった感じで、場所はリアルからデジタルへ移行しつつも、人々は常に新しい祭りを求めている。
そういった意味では、これまで地域のお祭りと呼ばれていたものは、地域の人たちだけが楽しむための場所ではなくなっていくのかもしれません。
これまで、お祭りと呼ばれていたものは、SNSで繋がった人たちがリアルで顔を合わせるソーシャルコミュニティの場、企業が創り出すコト化と上手くシンクロしながら、新しい体験の場を作り出していくのでしょう。
人々が昔からお祭り好きだったのは、そこに良い波動が生まれるからです。
たくさんの人が集まり、綺麗な服を着て、歌って踊れば、よどんだ空気はすべて吹き飛んでしまいます。
波動やバイブス(振動)と呼ばれるものは、リアルの世界にしか存在しませんが、リアルの場で目に見えない波動を感じるからこそ、そこにストーリーが生まれ、子どもの五感も活発になっていく。
これまでは、綺麗な服を着て、歌って踊っていた祭りから、一緒に絵本を読んだり、缶バッジをつくったり、エコバッグをつくったりして、波動をつくりだす新しい祭りの形が、これからどんどん生まれていくのかもしれません。
イベントや祭りがなくなることで、地域の伝統が途絶えると心配する人たちが増えています。
でも、きっと、伝統というものは、それが本当に消えかかった時に、新しい形にデザインされて復活していくのでしょう。
商品を売る前に缶バッジで魂を満たす。
近年では、スーパー、イオンモール、そしてアマゾンなどといったように、買い物がただ必要なものをカゴに入れるだけの作業になってしまったことで、買い物をすること自体がすごく退屈なものになってしまいました。
最近、「買い物すること自体が楽しかったのはいつか?」と聞かれても、なかなか思い出すことができません。
スターバックスを世界に広げたスターバックス・インターナショナルの元社長、ハワード・ビーハーはかつて「バーガー・ショップは客の腹を満たす。いいコーヒーハウスは魂を満たす」と言いました。
絵本展のイベントを行い、そこで缶バッジやエコバッグ作りなどの創作が行われれば、自然とそこに良い「氣」のようなものが生まれていきます。
良い氣が生まれれば、そこに良いストーリーが生まれ、そのストーリーに合わせて、商品やサービスも循環していくのです。
一昔前のマーケッターは、人間の脳の構造を理解し、どうやったら商品を手にとってくれるかを考えて、戦略を考えていきました。
しかし、20世紀が脳を満たす時代であったのに対して、21世紀は、商品を売るために、体験を通じて魂を満たしていく時代になっていくのかもしれません。
最近、欧米では「子どもが実際に手を動かすことが重要」という観点から、子どもに折り紙を折らせる親が増えているのだと言います。
折り紙の、一枚の紙が形あるものに変化する様子や、自分の頭で考えながら、手を実際に動かして試行錯誤する体験などは、思考力や想像力を大いに育んでいくのです。
缶バッジも折り紙と同じように、実際に自分の手を動かしながら手軽に創作ができ、様々なイベントと組み合わせることによって、子どもの魂を満たすための重要なツールになることでしょう。
ぜひ、商品ではなく、五感を潤す体験を流通させるためのツールとして缶バッジをご活用いただければと思います。