有名タレントによる大口の寄付がニュースに取り上げられたりもしている、ふるさと納税制度。

一般に広まったのは、東日本大震災によって地域への寄付に対する人々の意識が高まったことがきっかけだと言われています。実際、東日本大震災の復興のために集まった寄付金は、全国で 650 億円を超えるそうです。

そこから現在、ふるさと納税による寄付を受け付けている自治体は、全国で 1788 自治体にまで増えています。

ふるさと納税を受け付ける自治体は増え、地方からの参加も目立つ

ふるさと納税によって、一般の人々が地方自治体を応援する気持ちが形になり、人々の地域に参加している実感も高まっています。

特に地方では、若者に興味を持ってもらうキッカケづくりにふるさと納税が活用されている面もあり、返礼品として「釣り」の体験を提供するなど、実際に訪れてもらえる仕掛けも実施されてきました。

昨今ではさらに、ふるさと納税の返礼品を一覧から選んで寄付できるインターネットショッピングのようなウェブサイトも活用されていますが、さまざまな地方のものがあふれるサイトの中で、缶バッジの存在が見過ごせなくなってきています。

ふるさと納税缶バッジで、ご当地アニメを応援しよう


缶バッジはこれまで数々の自治体でふるさと納税の返礼品として提供されており、若者のふるさと納税への足がかりにもなっているようです。

事実、若者に人気のコンテンツの聖地では、そのコンテンツのキャラクターを缶バッジにして返礼品として提供しています。

一例として、静岡県沼津市では、地元が舞台の作品「ラブライブ!サンシャイン!!」とコラボしたオリジナル缶バッジを制作し、ふるさと納税 1 万円以上の寄付者の中から希望者に先着でプレゼントするなどしてきました。

10代20代に人気のアイテム缶バッジで、若い層にもふるさと納税を知ってもらう

「ラブライブ!」シリーズは、学校で結成されたアイドルグループが主人公のストーリーで、2013 年にアニメ放送が始まって以降、ゲーム、ライブ、ミュージカルと、さまざまなメディアで展開されているメディアミックス型コンテンツの代表作です。

その中で「ラブライブ!サンシャイン!!」は、沼津市の海辺の町の学校で結成された 9 人のアイドルグループ「Aqours」の物語で、グループ結成から今年で 7 周年を迎えます。

ライブ活動も盛んに行っており、2018 年にはNHK紅白歌合戦へ出場、今年は 2 度目となる東京ドーム公演を果たしました。

アニメの世界だけでないメディアミックスコンテンツだから、キャラクターの出身地がより現実味を帯びてくる

「ラブライブ!サンシャイン!!」はこれまでに、沼津市の観光大使を務めたり、観光情報の動画から地域の花火大会のポスターにまで頻繁に登場してきたことから、キャラクターの出身地である沼津に親近感を持つファンも多くいるはずです。

実際、アニメ・マンガの情報やニュースを提供しているメディア「アニメ!アニメ!」が 10代 20代 を主な回答者として今年行った「ご当地アニメといえば?」と題したアンケート調査でも「ラブライブ!サンシャイン!!」が第 4 位にランクインしています。

沼津のまちとコラボしたオリジナル缶バッジやアクリルスタンドなどのキャラクターグッズはふるさと納税返礼品として提供され、ファンの応援に応えるようにそれらが高い需要を維持してきたのは当然と言えるのかもしれません。

ふるさとゆかりのキャラ缶バッジで、若者に愛されるコンテンツを育てる


昨今では、その地域にゆかりある武将や特産品に特化したふるさと納税返礼品のキャラクター缶バッジも登場しています。

天下分け目の関ヶ原の時代を生きた武将である丸毛兼利(まるも かねとし)のゆかりの地である岐阜県輪之内町では、地元を舞台としたアニメ「丸毛戦記」のキャラクターを缶バッジにしました。

丸毛兼利は信長、次いで秀吉に仕えて従軍し、1589 年に今の輪之内町にあった福束城(ふくつかじょう)の城主に任じられ、関ヶ原の戦いの前哨戦で活躍した武将です。

今は平和なまちにも確かに、戦国時代の英雄が暮らしていた

「丸毛戦記」は週刊少年ジャンプ手塚賞受賞した渡辺浩行氏作のオリジナル作品で、関ヶ原合戦前の武将の思惑などの人間ドラマも描かれています。

渡辺氏は地域の歴史的ヒーローを漫画やアニメにして子どもたちに伝えることを自ら行政に呼びかけており、「丸毛戦記」においてもコンテンツを通じて地域の子どもにアニメを教えるワークショップを開催したりもしています。

地域にゆかりある偉人がいても、郷土カルタなど子どもたちが触れるツールは限られていましたが、今やアニメや動画で人間味あふれる魅力あるキャラクターとして楽しまれ、ふるさと納税の返礼品缶バッジになったりと、時を超えて多彩に地域を盛り上げているようです。

地域を守ってきた歴史的英雄を、子どもたちにとって楽しみやすいツールで伝えていく

他にも、高知県室戸市は、オオグソクムシなど地域を代表するもの約30種をキャラクターにした缶バッジセットを返礼品として提供しており、缶バッジ一つ一つへのデザインのこだわりや完成度の高さは目を見張るほどです。

室戸市は人口 1 万 2 千人弱で、高知県でもトップの消滅可能自治体なのだそうですが、ふるさと納税額に関しては今年の総務省の発表によれば約 19 億円で、全国ランキングで 88 位を誇ります。

マグロをはじめとする海の幸、フルーツやサツマイモなどの農作物も室戸市の返礼品として注目されてきましたが、若い世代の定番アイテムである缶バッジをはじめ、子どものいる家庭でのふるさと納税の楽しみ方も考えられているようです。

缶バッジからゲームまで、ふるさと納税で楽しめるコンテンツは広がる


ふるさと納税は一見すると、金額が 1 万円を超えたりして若い層に手が届きにくいように思われている部分もあるかもしれません。

しかし実際は、上限があるとはいえ、納税した金額の 2,000 円を超える額の部分については翌年の所得税・住民税から控除が受けられるため、実質的には自己負担 2,000 円で、自分の欲しい返礼品をもらうことができるシステムになっています。

そうしたお得感も広まって、缶バッジを始め、フィギュアやゲームソフトなど、若者が欲しくなるふるさと納税返礼品が多く登場し、アニメや漫画の情報メディアにもふるさと納税の返礼品が掲載されるまでになりました。

ふるさと納税というと、生鮮食品などの食べ物の印象がまだまだ強いですが、私たちも缶バッジを通じて、若者や親子がふるさと納税をより楽しみ、ふるさととの距離を縮めることの役に立ちたいと思います。

参考資料
■ 黒田 成彦「平戸市はなぜ、ふるさと納税で日本一になれたのか?」KADOKAWA、2015年
■ 増田 寛也「地方消滅 – 東京一極集中が招く人口急減」中央公論新社、2014年