山下ほたるさんは、愛知県一宮市の老舗企業「株式会社マスター」が大きな期待を寄せるデザイナー。
「一宮三岸節子記念美術館」のメインキャラクター「せっちゃん」の生みの親でもあり、看板製作や絵本執筆など精力的に活動しています。
一宮で育った山下さんは「地元の人達から愛される企業でデザイナーとして地域に貢献したい」という志を抱き、昨年(令和3年)11月には、夢のひとつだった個展を開催。
「あきらめないで夢を叶える」山下さんの生き方に感銘を受けた、母校、一宮市立中部中学校からの依頼で講演会も行われました。
今回は、山下さんが作品を作る上で大切にしている「あったかい、やさしい」気持ち、個展での缶バッジ活用法についてお話をお伺いしています。
展示されているのは「作品」にのせて贈り続けた、大切な家族への感謝の気持ち。
バッジマンネット:
山下さんにとって初めての個展とお伺いしています。今回のテーマについて教えてください。
山下:
個展のテーマは「家族、大切な人」家族の温かさを感じていただいて、ほっこり、ぽかぽかした気持ちをお届けできたらと思っています。
私が絵を描く上で一番大切にしている「あったかい」「やさしい」が最も伝わりやすいので、「家族」をテーマに選びました。
今回の個展では、私が9歳の頃から「母の日」や「父の日」に贈り続けてきたイラストや紙工作などを展示しています。
バッジマンネット:
展示されているのは、ご家族に贈った本物のプレゼントなのですね。どんなご家族なのか教えて頂いてもよろしいでしょうか?
山下:
家族構成は父、母、弟、私の4人です。特別なことはない普通の良い家族だと思います。
私は「言葉」で気持ちを伝えるのがあまり得意ではないので、家族への感謝の気持ちを「作品」に乗せて伝えてきました。
もちろん、プレゼントを贈った時には、いつか展示しようなどとは全く考えていなかったです。
すぐに洋服に付けたくなる「可愛い缶バッジ」は個展でも大人気。
バッジマンネット:
家族との繋がりが希薄になるなかで、大切な人に思いを寄せるきっかけになりそうですね。今回の個展では、どのように缶バッジを利用されているのでしょうか?
山下:
入口に「ご自由にどうぞ」と書いて缶バッジを置いているのですが「可愛い!」という声をたくさん頂いてきました。
すぐに洋服につけてくださる方もいらっしゃるのでとても嬉しいです。
250個ほど作りましたが、半分くらいはすぐになくなってしまいました。
缶バッジは、数が多くても簡単に制作できるところが良いと思います。
バッジマンネット:
その場で洋服につけてもらえると作り甲斐もありますね。今後のアーティスト活動で缶バッジを活用される予定などはありますか?
山下:
販売するというよりは、最初の取り掛かりの要素として、缶バッジはすごく使いやすいのではないでしょうか。
サプライズ感もありますし、缶バッジを眺めるたびに幸福感に浸ることができるかもしれません。
「夢に向かって頑張ることの大切さを生徒たちに伝えてほしい」母校からの講演依頼。
バッジマンネット:
今回は、山下さんの母校、一宮市立中部中学校の川口校長先生からもお話をお伺いしています。卒業生である山下さんとの出会いについて教えてください。
川口校長:
山下さんと初めてお会いしたのは、昨年(令和3年)の成人式です。
コロナ禍の影響もあり、成人式は、それぞれの中学で開催することになったのですが、実行委員として取りまとめ役をしていたのが山下さんでした。
成人式での仕事の様子などから、とてもしっかりした印象だったのを覚えています。
その後、新聞に掲載された「三岸節子の生涯 絵本に」という記事を読んで「成人式で取りまとめ役をしていた山下さんだ!」と気が付いて、すぐに美術館に向かいました。
勤務先の「株式会社会社マスター」や「三岸節子記念美術館」での活躍を知り、生徒たちに「夢を持って頑張っている先輩の話」を聞かせてあげたいと公演を依頼した次第です。
バッジマンネット:
生徒のみなさんの反応はいかがでしたか?
川口校長:
「自分のやりたいことを諦めない大切さを学びました」「夢を叶えようとする先輩の姿に感動しました」など生徒たちからは大好評でした。
特に、最近はコロナ禍で、大人たちの間でも、思い通りに物事が進まず、頑張っても仕方がないという諦めムードが漂っています。
そういった状況であっても、目標を持ってコツコツ頑張り続けることの大切さを生徒たちにどうしても伝えたかった。
山下さんには本当に感謝しています。
本来であれば、個展の初日にお伺いしたかったのですが、修学旅行と日程が重なってしまいました。
今日は最終日ですが、こうして山下さんの初めての個展に来ることができて嬉しいです。
大好きな絵を通じて、世界中に「やさしさ」と「あたたかさ」を伝えて行きたい。
バッジマンネット:
講演会で山下さんの話を聞いた母校の後輩たちも勇気が湧いたのではないでしょうか。山下さんは幼い頃から絵の勉強をされていたのですか?
山下:
絵を描き始めたのは2歳で、ずっと絵を描いているような子供でした。中学1年生の時、母の紹介で梅津諭さんの絵画教室に通い始めました。
絵を教わるというよりも、とにかく好きなように自由に描かせてもらったという感じでしょうか。
梅津さんは、夫婦で似顔絵を中心としたアーティスト活動をされていて、日本だけでなく海外でも広く活躍されてきました。
梅津さんご夫婦が、私の原点であり「いつかそんなふうになりたい」という目標にもなっています。
バッジマンネット:
目標とする人が身近にいらっしゃるのですね。山下さんのアーティスト活動のテーマや今後の展望などあれば教えてください。
山下:
海外に行ってみたいと思っています。そして、世界中の人に「やさしさ」と「あたたかさ」を届けたい。
私は、他のアーティストの方の作品でも、上手い下手は関係なく、伝えたい想いや感情が溢れている作品に強く惹かれます。
これからも、表現方法にこだわらず、気持ちが伝わる作品を届け続けていきたいです。