1993年のJリーグ誕生から28年目を迎えた2020年。
当初10チームでスタートしたJリーグは現在、J1、J2、J3を合わせて全国で55クラブにまで増加し、全国の都道府県の数「47」で割ると1都道府県あたり1つ以上のクラブが存在する計算です。
しかし、まだJリーグクラブが存在しない県もいくつかあり、滋賀県もその一つに挙げられます。
そんな滋賀県では2000年ごろから滋賀県初のJリーグクラブ誕生を目指す動きが強まり、2005年に滋賀県サッカー協会が「滋賀FC」を設立しました。その後、クラブ合併などを経て、現在はレイジェンド滋賀FCとしてJリーグ昇格を目指し地域リーグで活動しています。
レイジェンド滋賀FCではコロナ禍の影響でクラブ活動に影響が出る中、認知度向上を目的に缶バッジを活用した取り組みを初めました。
そこで今回は、一般社団法人レイジェンド滋賀代表理事の山内義博さんと、企画・広報の田村教さんに詳しくお話を伺ってきました。
バッジマンネット:
レイジェンド滋賀FCさんは現在、アマチュアリーグのチームとしてJリーグ昇格を目指して活動されていますが、現在のレイジェンドの位置付けはどのようになりますでしょうか?
山内:
簡潔にお伝えすると、日本サッカー界にはピラミッド図と呼ばれるものがあって、大きく分けて6つのカテゴリに分けられます。
上から順番に、J1、J2、J3のいわゆるプロリーグと呼ばれる3つのリーグ、その下にJFL、地域リーグ、都道府県リーグと呼ばれるアマチュアリーグ3つのリーグ、計6リーグによって構成されています。
我々、レイジェンド滋賀が現在活動しているのは「地域リーグ」と呼ばれるアマチュアリーグです。今後はJFLを経てJ3への昇格を目標に動いています。
バッジマンネット:
ありがとうございます。サッカーチームによる缶バッジ運用というところで、Jリーグ昇格を目標とするレイジェンドさんでは缶バッジはどのような役割を果たしているのでしょうか?
山内:
現在は主にチームの認知度向上を狙って缶バッジを活用しています。というのも、我々アマチュアチームにとって認知度向上は非常に重要な課題なのです。
地域リーグは試合において入場料をとっておらず、選手もお金をもらわずにプレーしているという性質があります。収益源といえば、スポンサー収入、U15などの下部組織からの育成収入、そして会員様からの寄付が主な収益源となっています。
また、我々の場合は協賛企業やスポンサー企業から「雇用協賛」という形で協賛していただいていて、我々のチームでプレーする選手の8割はこうした協賛企業に雇用していただいています。また、試合用ユニホームや練習着などの提供もしていただいている状態です。
滋賀県の地元のサッカーチームとして、地域とともに成長し、地域から支えられるサッカーチームを作る上で認知度向上は欠かせません。
バッジマンネット:
認知度向上を図る上で缶バッジはどのように活用されているのでしょうか?
田村:
クラブに寄付をしてくださる会員様に会員証をお配りしているのですが、従来のカード型ではなく缶バッジ型の会員証をお配りしているんです。
カード型の会員証だとポケットにしまってしまう方が少なくないんです。でも、缶バッジなら服やカバンに付けてもらえますよね。つまり、多くの人が集まる会場で会員様を可視化する役割として缶バッジを活用しているんです。
缶バッジを付けていれば、会員様と非会員様とが一目瞭然なので、こちらから会員様に気軽に話しかけることができます。先ほど認知度向上が重要とお伝えしましたが、認知度というものは目に見えないものですよね。でも、缶バッジ型の会員証を持っている人が会場に増えれば、それは我々のファンが増えていると言えますよね。つまり、ファンの可視化の意味でも缶バッジを有効活用させていただいています。
バッジマンネット:
ファンの可視化とは興味深い視点ですね。確かに、単に会場にいるだけでは、その人がチームのファンなのか、付き合いで1日だけ参加しているのか分かりかねますよね。「缶バッジを付けている人=ファン」と定義づければ、PR活動のKPIとして活用することができそうですね。
ちなみに、会場以外でも缶バッジの活用例はあるのでしょうか?
田村:
これは現在検討中のアイデアなのですが、今後は法人向けに缶バッジマグネットの提供を考えています。
どこの企業にもホワイトボードがあると思うのですが、書類などをホワイトボードに貼り付ける時に使うマグネットを協賛企業様などに提供しようと考えています。レイジェンドのデザインを施した缶バッジマグネットを提供して「社内広告」として活用できないか検討中です。
レイジェンドのデザインが施された缶バッジマグネットがホワイトボードに貼ってあれば、会議のたびにレイジェンドのロゴが目に付きますよね。そうすれば単純接触効果でチームに対して愛着が湧くかもしれません。地元のサッカーチームですから、次第に週末に試合を観に行ってみようかと思っていただけるかもしれない、そうしたことを考えています。
バッジマンネット:
それは非常に興味深いアイデアですね。一般企業の広告が施された缶バッジだとなかなかハードルが高いかと思いますが、地元のサッカーチームであるレイジェンドさんのデザインであれば、法人にとって受け取りやすいですよね。
お話を伺っていると、レイジェンドさんは缶バッジを使って周囲の方々を巻き込むアイデアを得意としているようですね。
山内:
いくつかあるJリーグ昇格の条件の一つに、「観客動員2000人」という指標があるのですが、これは地域リーグに所属するチームにとってすごく大きな数字なんですよ。
この数字を達成するには、自分たちだけの力ではどうしても限界があります。だからこそ、地域の方々を巻き込んで一緒に成長しなければならないのです。レイジェンドが地元にどのような良い影響を与えられるのかをしっかりと伝えていかないと、地域から支えられるチームにはなり得ないと思っています。
バッジマンネット:
地元のサッカーチームが地域に貢献するというと具体的にはどのようなものを想定されているのでしょうか?
田村:
サッカーに限らず、スポーツの世界には「スポーツツーリズム」という概念がありますよね。サッカーの場合だと、地元で試合をすると観客の約1割がアウェーの土地からやってくるんですよ。
例えば、数千人のお客さんがお越しになった場合、その1割の数百人が滋賀から離れた場所から足を運ぶことになります。そうすれば当然、地元の公共交通機関、会場周辺のお店やホテルが使われ、サッカーが地域の観光資源の役割を果たすことになると思います。
バッジマンネット:
確かに、今後着々と認知度を向上させることによって客足は増えるでしょうし、客足が増えれば会場周辺の経済に影響を与え、地域の観光資源として機能することになりますね。
最後に今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか?
田村:
私はサッカーは一つの「祭り」だと思っているんですよ。一般的に祭りは年に一回しかありませんが、サッカーの場合、年間に7試合すれば年に7回祭りが開催されることになります。これは街にとってもすごく重要な催し物になりうると思うのです。
祭りというものは、やる人と観る人が揃って初めて完成するもの。サッカーはプレイする人のものという考え方が日本では根深いですが、あの盛り上がりは観ている人のお陰なのです。いかに「盛り上がり」を作るか。試合が開催できないコロナ期間中に、しっかりと次なる戦略を練りたいと思います。