日本の俳句と似ていると言われるツイッター。
そんなツイッター社には「短い言葉にこそクリエイティブ性が宿る」という考え方があり、その哲学は140文字(半角英数字の場合は280文字)という字数制限によく現れています。
これまで様々なお客様にインタビューさせて頂いたところ、皆様が口を揃えて「盛り込める情報量が限られている小さな缶バッジに、いかに強烈なメッセージ性を込められるかが重要だ」と仰っていたことが印象的でした。
よく考えてみると一度に盛り込むことができる情報量が限られているという点において、ツイッター、俳句、缶バッジにはそれぞれ共通点があると言えるのではないでしょうか。
そこで今回はツイッターと俳句の視点で、「短いメッセージ」について考えてみたいと思います。
140文字の字数制限があるツイッターと、五・七・五の合計17文字で構成される俳句は、本当に重要なメッセージを伝える上で意図的に字数制限を儲けています。
限りなく無限に情報を盛り込むことができるブログなどとは異なり、限られた条件の中で何かを表現しなければならない時、私たちは最も大切なメッセージを厳選するはずです。それゆえ、結果的にそこに残るのは直接的な「本音のメッセージ」だけになります。
SNSマーケティングの世界では「ツイッターは炎上しやすいSNS」として認識されていますが、それは無駄な表現が削ぎ落とされ「本音」がストレートに表現される場だからに違いありません。
ツイッターは短文であるがゆえ誤解を生んだり炎上しやすいSNSである一方、分かりやすくストレートな表現が多いことから拡散性が高く、シンプルかつ強いメッセージ性を伴ったツイートは広く拡散される傾向にあります。
実際、2019年には次のようなメッセージがツイッター上で広く拡散されました。
このように無駄を削ぎ落としたシンプルかつ奥深いメッセージが、社会的テーマと相性が良いのは、何もツイッターだけではありません。
ベトナム戦争を機にアメリカで活発化した反戦運動の際に、平和のシンボルとして広く認知されるようになった「ピースマーク」は缶バッジによって社会に広く認知されるようになったものでした。
盛り込む情報量を絞りこみ、低コストで広範囲に拡散させることができる缶バッジは、大昔からある「アナログ版ツイッター」のような存在だと言えるのかもしれません。
これは俳句に関しても同じことが言えます。俳句と言えば、小難しい言葉選びを強いられるというイメージを持ってしまいがちですが、実際のところ、俳句では突飛な言葉は原則タブーとされ、難しい熟語や故事来歴を並べることは良しとされません。
むしろ子どもでも分かるシンプルで平坦な表現を使うことが良い俳句だと考えられています。
ここで注目すべきがアメリカのトランプ大統領のツイッターです。
ツイッター上での過激な発言によって度々ニュースで話題となるトランプ大統領は、賛否両論あるもののアメリカ国内では高い支持を受けており、その理由に挙げられるのが小学生ですら容易に理解できる「発言の分かりやすさ」です。
アメリカのタブロイド紙「The Globe」が2016年に行った調査によれば、トランプ大統領が普段使う英語はアメリカの「小学4年生レベル」のシンプルなものだと言います。
それゆえアメリカ国内では「我々の大統領は幼稚だ」と嘆く声も少なくないようです。しかし誰もが難しい言葉を理解できるとは限りませんし、むしろ小学生でも理解できるシンプルさこそが多くの支持を集める要因だったことは間違いありません。
情報発信手段が多種多様になり、なおかつ一度に限りなく多くの情報を届けられるようになった時代において、シンプルで強いメッセージの存在感は今後ますます強くなっていくに違いありません。
そんな時代に皆様は、缶バッジの小さな丸の中にどんなメッセージを収めますか?