買い物の話になると「インスタで見つけた」という声があちらこちらで聞かれます。

20代を中心に、好きな作り手やインフルエンサーなどの「人」からモノを買うようになってきている流れにおいて、フェイスブックはついにこの夏、「Facebook Shop」「Instagram Shop」を公開すると発表しました。

これまでのオンラインショップからまた一歩、フェイスブックやインスタでECに参入する事業者は増え、ビジネスの選択肢はますます広がりそうです。



インスタグラムには、ライブ・ショッピング機能もつくという。リアルにやり取りをしている作家を自分の手で支えることができたという喜びも得られるだろう。

何かを買おうという気持ちになるのは、インスタグラムのような世界中の人がアクセスできるオンライン・プラットフォームに変わりつつあります。

店舗を売り場とするところから、「人」が「売り場」なろうとしている…そんな今思うことは、これからさらにテクノロジーが進歩する5年先、10年先まで生き残ることができるのは、どんな「人」なのかということです。



日本では、5人に1人が使用しているインスタグラム。この夏、本格的にECへのサポート体制が整う。

例えば、オックスフォード大学の発表した「2033年まで生き残る職業」のリストでは、トップに「コンサルタント」「聖職者」「美容師」などの職業がランクしています。

こうした職業が生き残る理由には、ルーティン作業でないことや、予測を立てにくい仕事内容であること、などがあげられています。

その2つの要素を踏まえて考えると、SNSプラットフォームの中での生き残り術は、今日本の商店街などで起こっていることと似ているのではないか、ということです。



商店街も、一種のプラットフォーム

地方に始まった商店街のシャッター街化はすでに都心にまで及んでいますが、寂れてしまった商店街でも生き残っている業態があり、顕著なのは「スナック」「洋品店」「理美容店」の3つなのだそうです。

例えばスナックでは、一般的に出されるお酒の種類は多くなく、基本はウーロンハイかビール。インテリアのデザインに凝っているわけでもありませんから、差がつくのは「人」の部分です。

馴染みのお客がいるスナックには名物ママがいるように、これらの業態は「人」でやっているお店が多く、訪れるお客の多くはその時々のコミュニケーションを楽しみにやってきます。



スナックは、地域住民の夜の社交場として地域の中でのコミュニケーションを増やす。それもあってか、スナックの軒数が多い地域ほど、刑法犯認知件数が少ないと言われる。

コミュニケーションの価値は測ることが難しいですが、「役に立つ」と「意味がある」の軸で考えた時、「役に立つ」というレベルで社会が文化的に満たされると「意味がある」へと価値がシフトするものなのだそうです。

実は缶バッジも、「意味がある」を支える方向へとシフトしていて、例えば個人店を営む方が、自分の気持ちや世界観を伝えるツールとして缶バッジを活用しています。



缶バッジとしての機能より、込められた「ありがとう、また来てね」という意味が大事

今の世の中、「ちょっと変わったお店がある」ということがSNSで広まると、それを見ていろいろな人がお店に訪れます。

しかし、そうしたユニークな個人店は全国展開するコーヒーチェーンのような、万人が「ステキ」と思う店ではありません。

「自分とは合わない」と思われてしまう可能性も高いのですが、店主は訪れた人にガッカリした気持ちで帰ってほしくはないので、缶バッジをお土産にプレゼントしているのです。



誰にでも合う商品を置いているお店ではなくても、缶バッジによってお店に来た人みんなを喜ばせる手段を持つことができる


お店に置いてあるものが全てのお客さんの役には立たなくても、見に来た多くのお客さんが嬉しい気持ちになれるということ。

どんな人でも受け入れるSNSのプラットフォームと同じで、缶バッジは子供から大人にまで受け入れられ、また、その中で個々人の世界感を共有することができます。

そして、例えば人気タレントを集めた映画なのになぜか大コケしてしまうように、逆説的ですが、多くの人の好みに合わせようとするほどぼやけて、人々から得られる反応は薄くなるものです。



SNSも缶バッジも、みんなが自分を表現できるプラットフォーム

コンビニのない街はあれど、美容院やスナックのない街はありません。

アナログでもデジタルでも生き残る方法は、替えの効かない状態でいるしかないのです。

SNSも缶バッジも、多くの人につながるプラットフォームとして、個々に特有の世界観を伝え、その人のビジネスを支えるものになっています。