私たちの生活に広く浸透しているコーヒーは、実は石油に次いで世界で2番目に多く取引されるもっともポピュラーな貿易商品であり、実は日本は世界第3位のコーヒー大量消費国でもあります。
そんなコーヒーは大人が楽しむ「嗜好品」というイメージが強いものの、茨城県つくば市に拠点を構える「株式会社トライブ」には小さな子連れの親子が多く来店するのだそうです。
子どもとコーヒー。一見、相反する組み合わせの裏には缶バッジの存在がありました。そこで今回は 株式会社トライブ 代表取締役の小池康夫さんにお話を伺います。
パン屋からヒントを得た、“子どもが楽しめる”店づくり
「つくば市で店を始める際にリサーチを行ったところ、このエリアには30代〜50代の子育て世代が多いんですよ。パン屋さんを見ていると、子ども目線の高さの棚に、子どもが喜ぶような商品を並べていますよね。それをうちでもやろうと考えたんです」
「子どもは親の買い物に付き合っていると、退屈してしまいます。そこで、コーヒー豆を購入する子連れのお客様が来店したら、缶バッジのガチャガチャをやってもらおうと思ったんです。子どもが缶バッジに夢中になっている間に、親御さんにゆっくり豆を選んでもらうというわけです」
小池さんが子ども達を中心とした店づくりを行うのは、親子のふれあいの時間が減っていることを危惧したからでした。
総務省のデータによると、共働きの子育て世帯の数は2000年には557万世帯でしたが、2016年には690万世帯と25%も増加しています。
さらに子ども達も時代を経るごとに忙しくなっており、小学校高学年になれば塾、中学生になれば部活、高校生になると受験、そして大学生になると家を出て一人暮らしをするようになり、小さかった子どもがあっという間に大人になってしまうでしょう。
そう考えれば、親子が手を繋いで時間を過ごせる時間というのは、あまり多くありません。親子が過ごせる時間が短くなっている現代だからこそ、親御さんがコーヒー豆を買う時間ですら、親子が一緒に楽しる時間にしたい。そうした考えのもと、缶バッジは導入されました。
長期的な缶バッジ運用で親子孫3代で通えるコーヒー豆専門店をつくる
缶バッジの運用方針に関して伺ったところ、小池さんは、缶バッジを長期的な目線で運用していると話していました。
「当店のお客様は子連れの方も多いですが、地域の高齢者の方も大勢いらっしゃるんです。ご高齢のお客様が来店された際、親子が缶バッジで盛り上がっている姿を見て、次回、お孫さんを連れて来店される方もいらっしゃるんですよ」
「コーヒー屋というと、なんとなく敷居が高く、子連れでは入りにくい雰囲気がありますよね。だからこそ、店内に子どもがいる状況が日常になれば『子どもと一緒でもいいんだ』という雰囲気が生まれるんです」
「店をオープンしてから10年ですが、10年経つと、缶バッジで喜んでいた小さな子どもが、気が付いたら大学生になって、彼女ができて、『俺、昔ここでガチャガチャやってたんだよ』なんて話をしていることもあります」
「そしてさらにその先、子どもが生まれて、親子孫の3代で店に通ってくれるようになるかもしれません。そんなことを考えながら缶バッジを運用していますね」
店内の雰囲気づくりに缶バッジを有効活用してきた小池さんですが、実は、家庭や職場など「店の外」での宣伝活動にも缶バッジが役立っているそうです。
「お子さんは缶バッジを手にすると、カバンに付けるのですが、それが結果的にうちの宣伝になるんですよ。この前のお客様は、子どもをプールに連れて行った際、他の子どもも当店の缶バッジを付けていたそうで、『トライブ行ってるんだね!』とトライブの話で盛り上がったみたいです」
「そうやって話が盛り上がると、当店に来たことがない方も『トライブって何の店?』と興味を示します。そうやって、私の目が届かない店外で、いかに当店の話題を作り出すか、という点では缶バッジの強みを感じずにはいられません」
コーヒーブームによって、街に様々なスタイルのコーヒー屋が立ち並ぶようになった昨今。
そんな中、缶バッジ等を活用して、コーヒーとは対極に位置する「子どもたち」を中心とした店作りを行う株式会社トライブの試みは、他の産業でも応用できるかもしれません。