自動車のデザイン(外観)には人それぞれ好みがありますよね。
それは、単純にセダンやSUVといった分類ではなく、ヘッドランプやドアパネルの形状、あるいは後方に伸びあがるボディーラインなど、場合によっては他者に理解してもらい難い細かなこだわりの部分です。
これらは自動車の『気に掛けられにくい』マニアックな部分ではありますが、自動車メーカーの最新技術を駆使して実現したものや、明確な理由があってのデザインです。
それでも、こうした分かり難いデザインが持つ魅力や共感が購入の後押しになる事は珍しくありません。
自動車のデザインの理解を深める為に秀逸なWebサイトが『MAZDA(http://www.mazda.co.jp/beadriver/design/?link_id=sbnv)』です。
ここには自動車のコンセプトや開発者の想い、採用されている最新技術が分かりやすく紹介されています。
ではなぜ自動車メーカーが内部情報とまで言えるデザイン起源や開発者の想いなどを伝えようとするのか。
それは開発・生産を担うメーカーの想いや考え方を知ることがその車の魅力を感じる事ができるはずなのに、これまでの販売店頼りでは多くの過程を経由し煩雑する情報によって、顧客へ正確に伝わりにくいからでしょう。
しかし、こうした細部の魅力を販売店が積極的に顧客へアピールまたは認識させる事は困難で、『デザインの良さを一番アピールできる角度』とともに展示車を前に事細かに説明するほかありませんが、これは現実的ではないようです。
こうしたアプローチはメーカーWEBサイトやSNS、あるいは雑誌といった媒体で不特定に訴えるしかありません。
自分の感じた“魅力”を浮き彫りにさせる
東京都美術館では世界の名画や現代作家による作品に出会うだけでなく、学芸員・研究者による講演会や出店作家による作品案内など作品の魅力を深堀できるイベントを数多く行っています。
そしてその中でも際立った特色を持つものとして、東京藝術大学と共同開催の『とびらプロジェクト(http://tobira-project.info)』があります。
『とびらプロジェクト』が過去に行った活動は素晴らしいものばかりですが、我々が注目したのは缶バッジを使った活動です。
皆さんは、美術館にある作品を真に理解しようとした事はあるでしょうか?
『とびらプロジェクト/イロイロとび缶バッジ(http://tobira-project.info/category/いろいろ缶バッジ)』では東京都美術館の展示物を鑑賞した後に、プロジェクトメンバーからの説明と自らが感じた鑑賞時の印象をもとに、缶バッジで自分が感じた魅力を表現するワークショップを開催していました。
缶バッジを製作しながらプロジェクトメンバーからの補足説明を交え、作家・作品に対する理解を深めるというものです。
これを見る限り参加者はそれぞれ違った魅力を感じており、より作家・作品に対する理解を深めています。
鑑賞時には『作品がなんとなく好きだ』『有名だから観てみたかった』程度の興味しかなかったとしても、作者のこだわりや作品に対する思いを感じ取る事で理解が深まり、その作品に対する思いは大きく変化するはずです。
そして今まで気付いていなかった未知なる魅力を発見する事もでき、自分が作品のどういった部分に魅力を感じるのかも明確に意識できるようになるでしょう。
缶バッジの上という限られたスペースに、自分の感じた魅力を表現する。
その行為は作品や作者を好意的に捉え、それを支持するという意思表示になります。
そして、このワークショップの体験者は作家や作品だけでなく、主催した東京都美術館のファンになったことでしょう。
自動車の魅力を伝え理解させて虜にする
自動車メーカーのWebサイトを見ればデザインに関する細部のこだわりを感じる事が出来ます。
しかしこれはWebサイト訪問者でなければ知り得ない事実かもしれません。これは非常に深刻な問題です。
多くの場合は自動車の全体像でデザインの評価をするかもしれませんが、『この自動車のこの部分のデザインが好き』という内に秘めた好みは誰もがきっとあるはずです。
そうしたこだわりは自動車メーカーの意図する部分であり、もっと広く知られるべき事実ではないでしょうか。
『とびらプロジェクト』のように自動車の魅力をピックアップして顧客に伝える事が出来るなら、その意味は非常に大きいです。
新しい魅力を発見し理解してその自動車を好きになってもらえるはずです。
少なくとも、積極的にこうした企画を行う企業には好印象を抱いてもらえることでしょう。
カタログスペックだけを見て自動車を検討する時代は終わっているはずです。
燃費や居住性、そして価格なども自動車を検討する場合に重要なポイントですが、細部に宿るこだわりのデザインを伝え理解してもらうことこそ、開発に携わった人達の想いが込められた真の魅力を理解してもらうことになります。
小さな好きを認識する。新しい細部の魅力を発見する。これらを多く集める事が自動車購入への後押しになるはず。
そして販売店側としても顧客の趣向を把握できるチャンスです。
『とびらプロジェクト』の活動は多くのファンを獲得する為の模範的なお手本となるのではないでしょうか。