アッセンブリの作業を受託する事業者の多くが、人件費上昇や人手不足という課題に直面しています。発注元からの短納期要請や品質基準の厳格化など、対応に苦慮する場面も増えているのではないでしょうか。アッセンブリの作業内容は業界によって異なりますが、多くの企業にとって効率化とコスト削減は共通の経営課題となっています。本記事では、アッセンブリ業務を受託する企業向けに、現場ですぐに実践できる改善手法をご紹介します。


アッセンブリとは

アッセンブリとは、英語の「assembly(組み立て・集合)」に由来する用語で、複数のパーツや要素を組み合わせて一つの製品や成果物を作り上げる作業全般を指します。製造業だけでなく、物流、建設業、IT業界、広告・販促業界など幅広い分野で活用されています。

例えば、製造分野では精密機器の部品組立から完成品の検品・梱包まで、物流・販促分野では企業ノベルティやキャンペーングッズの制作、販促物のセット組み、DMの封入作業など、業界特性に応じた多様な作業が行われています。

アッセンブリは、最終製品の品質や納期を直接左右する重要工程であり、多くの企業のサプライチェーンにおいて欠かせない存在です。そのため、アッセンブリ作業を受託する企業には、発注元の厳しい納期・品質基準への対応と、継続的なコスト競争力の維持という、相反する要求へのバランスが求められています。


アッセンブリが抱える4つの課題

アッセンブリ現場が抱える4つの課題について解説します。

人手不足

最低賃金の継続的な引き上げにより人件費負担が増加する一方で、若手人材はもちろん、経験者の採用は年々困難になっています。季節変動の大きい受注に対して柔軟な人員確保が難しく、繁忙期には既存スタッフの残業で対応せざるを得ない状況が起こりがちです。さらに、熟練作業者の高齢化に伴う技術継承の問題も重なり、人手不足が品質維持を脅かすリスクとなっています。

品質管理の難しさ

アッセンブリ作業では、作業者の経験やスキルによって品質にばらつきが生じやすいという特徴があります。作業手順の標準化が不十分な状態では、品質チェックポイントが明確でないことに加え、不良品発生時の対応も統一されていないため、作業者による判断基準のばらつきが品質の不安定さを引き起こしがちです。

工場での品質管理については、以下の記事でくわしく解説しています。

短納期要求への対応

顧客からの納期要求は年々厳しさを増しており、突発的な受注への対応や生産計画の頻繁な変更を余儀なくされることも少なくありません。特に、小ロット案件では段取り替え時間の短縮が課題となっており、緊急対応による残業増加や在庫管理の難しさも相まって、生産現場の負担が増大しています。

多品種少量生産への対応

市場ニーズの多様化に伴い、多品種少量生産体制の構築が急務となっています。品種数と作業種類の増加は作業者の習熟度向上を妨げ、同時に治具(じぐ)や工具の種類増加による設備投資負担も発生します。段取り替え回数の増加、在庫管理の複雑化といった運用面での負担も重くなりがちです。

多品種少量生産については、以下の記事でくわしく解説しています。


すぐに実践できるアッセンブリの改善方法7選

アッセンブリの課題に対する具体的な改善手法をご紹介します。

1. 作業スペースの効率化

作業スペースを見直し、作業者の移動距離を最小限に抑えることから始めましょう。部品や工具は作業頻度に応じて配置し、使用頻度の高いものを手の届く範囲に配置することが重要です。わずかな動作の無駄を省くことで、大きな効率化につながります。また、作業台の高さを作業者の肘の高さに合わせることも、作業効率と疲労軽減の両面で効果が期待できる取り組みです。

2. 治具・工具の共通化

複数の工程で使用する汎用性の高い治具を開発し、作業ミスを防ぐための工夫を組み込むことで、作業効率と品質の同時改善が可能です。また、工具の共通化によって初期投資や維持費用の削減も期待でき、長期的にはコスト面でのメリットもあるでしょう。

3.作業手順の見える化

写真や図解を活用し、誰にでも分かりやすい作業手順書を整備するといいでしょう。品質管理の重要ポイントが明確になるため、作業者の経験レベルに関係なく一定の品質を確保できます。さらに、完成品の「出来栄えの見本」を作業場に常設し、良品と不良品の境界線となる事例を実物で示すことで、作業者の判断基準を統一することが可能です。このような取り組みは、不良率を低減させ、手直し工数の削減につながるでしょう。

製造業の不良対策については、以下の記事でくわしく解説しています。

4. 作業者の多能工化

各工程で必要なスキルを明確にし、作業者が複数の業務をこなせるよう段階的な研修を実施することで、繁閑に応じた柔軟な人員配置が実現できます。熟練作業者の指導のもと、基本作業から徐々に難易度の高い工程へと習熟度を上げていくことで、着実なスキルの定着が図れるでしょう。これにより、人件費の最適化だけでなく、作業者のスキルアップを通じた職場全体の生産性向上が期待できます。

5. 在庫の適正管理

必要最小限の在庫水準を設定し、先入れ先出しの徹底と定期的な棚卸しを組み合わせることは、適正な在庫管理の基本です。在庫管理の効率性を高めるため、保管場所を明確に区分けする「ロケーション管理」や、一定の在庫水準に達した時点で発注を行う「定量発注方式」といった手法の導入が有効でしょう。過不足のない在庫水準を維持することが、在庫管理の適正化につながります。

在庫管理の方法は企業規模や業態によってさまざまです。くわしくは以下の記事で解説しています。

6. 不良防止の仕組みづくり

不良品が発生した際の報告ルートと対応手順を明確に定め、類似不良の再発防止に向けた情報共有の仕組みを整えることで、継続的な品質改善につながります。さらに、生産開始前のミーティングで重点管理項目やチェックポイントの基準を共有することで、現場全体での品質管理の意識を高められます。

7. 運営コストの見直し

照明や空調の運用ルールを見直し、使用していないエリアの電源オフを徹底することで、エネルギーコストを削減できます。また、消耗品の使用基準を設定し、在庫管理を徹底することで、無駄な発注や紛失を防ぐことが可能です。このような細かな取り組みの積み重ねが、全体的な経費削減につながるでしょう。


アッセンブリの効率化を成功に導くポイント

具体的な目標管理の実施

各工程の目標を数値で明確に設定し、日々の進捗を全員で共有することで、改善活動の効果が明確になります。定期的な振り返りと実績の確認により、チーム全体で改善の方向性を確認しながら、継続的に改善活動に取り組むことができるでしょう。

改善活動の定着化

現場での実践的な指導と定期的な改善提案の機会を設けることで、作業者一人ひとりの改善意識を高めることができます。小さな改善から始めて成果を積み重ねることで、自発的な品質向上や効率化の取り組みが定着しやすくなります。

自動化・デジタル化への計画的投資

現場の地道な改善活動に加え、計画的な設備投資も重要な選択肢です。近年では、さまざまな規模や予算に対応した自動化・デジタル化ソリューションが登場しています。例えば、作業工程の一部自動化やAIやIoTを活用した品質管理システムは、人手不足解消と品質安定化の両面で効果を発揮するでしょう。ただし、設備投資を検討する際は、投資対効果を慎重に見極めることが重要です。まずは小規模な試験導入から始め、効果を確認しながら段階的に展開するといいでしょう。


emoji_objects アッセンブリの効率化はできることから着手しよう

アッセンブリ作業の改善とコスト削減は、大規模な設備投資だけでなく、現場レベルの地道な改善活動の積み重ねから始めることができます。まずは自社の課題を明確にし、できることから着手することが重要です。一度にすべての施策を導入するのではなく、優先順位をつけて段階的に実施することで、確実な成果につなげられるでしょう。また、中長期的な視点から、自動化やデジタル化への投資を検討することも必要です。

例えば、缶バッジのアッセンブリでは、マシン選びが効率化の重要なポイントとなります。バッジマンネットでは、各種マシンとパーツをワンストップで取り揃えており、ビジネスの規模や目的に合わせてお選びいただけます。缶バッジビジネスや製造における悩みに対するお役立ちコラムも多数掲載しています。お困りの際はぜひ、ご覧になったうえでお気軽にご相談ください。