近年の不透明な経済環境のなか、内製化を検討する企業が増えています。コスト削減や品質向上を目指す企業にとって、内製化は重要な経営戦略のひとつといえるでしょう。本記事では、内製化のメリット・デメリットを整理し、内製化か外部委託かを判断する基準や内製化を円滑に進めるポイントを紹介します。
内製化とは
内製化(insourcing)とは、外部に委託していた業務を自社の人材やリソースで実施するように切り替えることを指します。例えば、製造業であれば、製造工程や製品開発、設計、品質管理、さらには間接業務に至るまで、さまざまな業務領域で検討されます。
内製化の反対は、外部委託(アウトソーシング、outsourcing)です。従来、多くの企業では専門企業の技術やノウハウを活用し、自社のコア業務に経営資源を集中させるため、外部委託を活用してきました。
内製化が注目される背景
近年、外部委託の課題が指摘されるようになったことは、内製化が注目される要因のひとつです。外部委託では、社内へのノウハウ蓄積が進みにくい場合があり、品質管理の徹底にも課題が生じることがあります。また、急速な市場変化への対応に時間を要する可能性もあることから、戦略的な内製化の検討を進める企業が増えつつあります。
内製化の目的
内製化の主な目的は、業務効率化とコスト最適化にあります。内製化により、仕様変更や業務改善の判断を自社で迅速に行えるようになり、業務プロセスの効率化が進めやすくなります。長期的には外部委託コストの削減も期待できます。また、社内へのノウハウ蓄積や品質管理の強化といった競争力の向上を目的に取り組む場合もあります。このような目的から、企業は、内製化と外部委託を戦略的に選択し、不透明な経済環境への対応力を高めているといえるでしょう。
内製化のメリット
内製化のメリットは以下の通りです。
外部委託コストが削減できる
内製化の初期段階では人材採用や設備投資などの費用が発生しますが、長期的な視点では外部委託コストの適正化が期待できます。また、業務プロセスの改善を重ねることで、さらなるコスト効率の向上も実現できるでしょう。
業務スピードを迅速化できる
内製化により、外部委託時に発生していた調整プロセスが不要になります。仕様変更や改善要望に対して、自社判断で即座に対応できるようになり、業務効率の大幅な向上が見込めます。特に、緊急対応が必要な場合、見積もり取得や契約変更などの手続きを省略でき、スピーディな問題解決が可能です。
社内にノウハウを蓄積できる
内製化により、製造プロセスや品質管理のノウハウを自社の特性に合わせて蓄積できます。こうした知見は、自社ならではの業務改善や製品開発に生かせ、独自の技術競争力の向上につながるでしょう。
セキュリティリスクが低減する
内製化により、情報セキュリティの管理レベルが向上します。機密情報の管理を自社内で完結できることで、情報漏洩のリスクを減らすことができます。また、セキュリティインシデントが発生した際も、社内で即座に対応が可能となり、被害を最小限に抑えることができます。
状況変化に対して柔軟に対応できる
内製化することで、市場環境や事業状況の変化に応じて、柔軟に業務内容を変更・改善できるようになります。顧客ニーズの変化に素早く対応できるだけでなく、業務プロセスの最適化も自社のペースで進めることができます。変化の激しい現代のビジネス環境においては、この機動力は大きな強みになるでしょう。
内製化のデメリット
内製化にはメリットもありますが、デメリットもいくつか存在します。
初期投資や固定費の増加
内製化には設備の導入、システム環境の整備、オフィススペースの確保など、さまざまな費用が発生します。また、これまで変動費だった外部委託にかかる費用が人件費という固定費に変わることで、経営の機動性が低下する可能性があります。景気変動の影響を受けやすい体質になることに考慮が必要です。
製造業で固定費については、以下の記事でくわしく解説しています。
>> 製造業で固定費削減が必要な理由と方法、注意点について解説 <<
人材確保・育成のハードル
適切な人材の確保と育成は、簡単ではありません。特に専門性の高い業務の場合、必要なスキルを持つ人材の採用は困難を伴います。また、採用後も育成には相当の時間とコストが必要です。人材市場の需給が逼迫している昨今では、期待する水準の人材を確保できない可能性や、育成に想定以上の時間がかかるリスクを考慮に入れる必要があります。
品質・技術力の維持管理の難しさ
外部の専門企業と比べると、社内での技術力や品質の維持に課題が生じやすくなります。技術革新の速い分野では、継続的な設備投資や人材育成が欠かせず、経営体力が問われます。また、少人数での運営となる場合、十分なクロスチェック体制を構築できず、成果物の品質維持が難しくなります。
内製化を判断する基準
外部委託していた業務を内製化するかどうかの判断に悩むことは少なくありません。まずは、次の基準で判断するといいでしょう。
自社のコア業務かどうか
その業務が自社の競争力や製品品質に直結するコア業務であるかどうかを見極めることが重要です。例えば、製造業における基幹的な製造工程や、製品の特徴を生み出す重要な設計工程などが典型的な例です。一方で、定型的な間接業務や、自社の強みとは直接関係のない工程は、必ずしも内製化の必要はないでしょう。
コストと体制構築の面で実現可能か
内製化には相応の経営資源の投入が必要です。人材の採用・育成にかかるコストや設備投資、運用コストなどの総額と、内製化による品質向上や生産性改善の効果を比較検討します。また、必要な人材の確保が可能か、技術力を維持できる体制が築けるかといった、実現可能性の評価も重要です。業務によっては、外部委託のほうが効率的な場合もあります。
内製化を効果的に進めるためのポイント
目的と評価指標の明確化
内製化を始める前に、「なぜ内製化するのか」という目的を具体的に定義します。業務効率化や品質向上、技術力強化など、自社にとって優先度の高い目標を設定します。これに基づき、品質指標や生産性、技術習熟度といった具体的な評価指標(KPI)を設定し、定期的な効果測定を行うことが必要です。内製化の効果を客観的に把握でき、改善の方向性を見出すことができるでしょう。
リスクを抑えた段階的な移行
内製化の進め方にはさまざまな方法がありますが、段階的に進めることはリスクを抑えるために有効な方法といえるでしょう。まずは製造工程の一部や特定の製品ラインに限定して小規模な試行を行います。この過程で発生する課題を丁寧に洗い出し、品質基準の確立や必要な設備の検証を進めます。その後、試行の成果を確認しながら段階的に範囲を拡大することで、リスクを最小限に抑えた移行が可能になります。
emoji_objects 内製化のメリット・デメリットを理解して自社に合った判断をしよう
内製化は、業務効率化とコスト最適化だけでなく、企業の競争力強化につながる重要な経営判断だといえるでしょう。内製化と外部委託は、どちらが優れているというものではありません。メリット・デメリットを理解したうえで、自社の状況に合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
缶バッジは、内製化しやすい分野の製品といえるでしょう。バッジマンネットでマシンやパーツをそろえれば、自身で魅力的な缶バッジの製造も可能です。
バッジマンネットでは、缶バッジビジネスだけでなく、製造の悩みに対するお役立ちコラムを多数掲載しています。お困りの際はぜひ、ご覧になったうえでお気軽にご相談ください。