製造業における人手不足は年々深刻化しています。技術継承の遅れや生産性への影響により、多くの企業が対応に苦慮している状況です。本記事では、製造業の人手不足の現状を統計データからひも解き、人手不足の原因や具体的な対策を紹介します。


製造業における人手不足の現状

日本の生産年齢人口(生産活動を支える15〜64歳の人口)は1995年をピークに減少を続けており、この人口動態の変化は産業界全体の人手不足に大きな影響を及ぼしています。

製造業においても、例外ではありません。経済産業省「2024年版ものづくり白書」によると、製造業の就業者数は2022年の1,044万人から2023年には1,055万人へと増加を示しているものの、中小企業では人手不足感が強まっている傾向がみられます。

長期的な視点から見ると、2002年以降、製造業界では若年就業者の減少と高齢就業者の増加という構造的な変化が進んできました。近年はこの傾向が横ばいで推移しているものの、人材育成面での課題が浮き彫りになっています。6割以上の事業所が「指導する人材が不足している」と報告しており、指導者不足により技術やノウハウの継承が滞る状況が続いています。

このように製造業の人手不足は、生産年齢人口の減少という社会構造の変化に加え、技術継承の停滞という業界特有の課題が重なり、深刻な状態が続いているといえます。

参考:
2024年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)|METI/経済産業省


製造業の人手不足が起こる主な原因

製造業における人手不足の背景には、複数の要因が存在します。

根強い「3K」のマイナスイメージ

製造業に対する「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージは、特に若手層や女性求職者の採用を妨げる大きな要因となっています。確かに立ち仕事や重労働、24時間稼働に伴う夜勤シフトなど、身体的負担への配慮が必要な環境は存在します。実際には多くの製造業で作業環境の改善が進んでいるものの、このネガティブなイメージの払しょくには至っていません。

技能伝承の難しさ

製造業の現場では長年、「見て覚える」という徒弟制的な技能伝承が主流でした。熟練工の持つ高度な技能やノウハウの多くは、言葉での説明が難しい暗黙知として蓄積されています。しかし、この伝統的な伝承方式は、体系的な教育を求める現代の社員、特に若い世代のニーズとかみ合わず、円滑な技能習得の妨げとなっています。新入教育に時間がかかるだけでなく、技能習得への不安から製造業を敬遠する求職者も少なくないため、人材確保をより困難にしています。

製造プロセスの属人化  

多くの現場では、作業手順や品質管理が個々の作業者の経験や勘に大きく依存しています。作業手順の標準化や、ノウハウのマニュアル化が進んでいないため、新人の育成に多くの時間と労力が必要となります。この属人化により、人員の柔軟な配置転換が困難となり、急な欠員や生産量の変動に対応できないという問題も発生しています。

デジタル化移行の遅れ 

「ものづくり白書」によると8割超の企業でデジタル技術が活用されており、製造業のデジタル化は着実に進んでいる状況がわかります。しかし、その取り組みの多くは個別工程の改善にとどまり、製造工程の全体最適化や新たな事業機会の創出までには至っていません。このため、多くの工程で依然として人手への依存が続いており、人手不足の解消を困難にしています。デジタル化の遅れは労働環境の改善機会を逃すことにもなり、人材確保をさらに難しくしているといえるでしょう。


製造業の人手不足を解消するための方法

製造業における人手不足を解消するための具体的な解決策を紹介します。

処遇・労働環境の改善

製造業の人材確保には、従業員が働きやすい環境づくりが重要です。技能レベルを可視化し、それに基づく体系的な人事制度を整備することで、従業員の成長と処遇を適切に連動させることができます。また、製造業特有の身体的負担の軽減や、夜勤を含むシフト勤務における柔軟な働き方の導入など、働きやすい職場環境の整備を進めることで、熟練工の長期的な確保と若手従業員の定着率向上が期待できます。

技能継承の仕組み作り

ベテラン社員が持つ高度な技能やノウハウを確実に次世代へ引き継ぐため、技能継承の仕組みづくりが不可欠です。デジタル教材やマニュアルを整備することで、従来の「見て覚える」方式から脱却し、効率的な技能伝承を進められるでしょう。暗黙知の可視化により、技能習得のスピードアップも期待できます。

多能工の育成

一人の作業者が複数の工程を担当できる多能工の育成は、人手不足への即効性の高い対策として注目されています。体系的な教育プログラムの整備により、作業者のスキル範囲を効率的に拡大することができます。複数工程に対応できる人材が増えることで、人員配置の柔軟性が高まるでしょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化

製造業のDXは、人手不足の解消と生産性向上に役立ちます。製造工程全体への取り組みには多大な投資と時間を要しますが、効果を見極めながら段階的に改善を進めるといいでしょう。例えば、人手不足が特に課題となっている工程や、標準化しやすい作業から段階的に自動化を進めることで、取り組みの効果を実感しやすくなります。自動製造装置だけでなく、IoTセンサーによる設備の遠隔監視やハンドスキャナーを活用した検品など、あらゆる工程でDXソリューションがあり、投資規模に応じてさまざまな選択肢があります。

ただし、その効果を最大限に引き出すためには、デジタル人材の確保や現場のデジタルリテラシー向上にも取り組む必要があります。自社での対応が難しい場合は、DX支援会社といった外部の知見を利用することも一案です。政府や自治体による支援・補助金制度もあるため、積極的な活用をお勧めします。

経済産業省の施策や補助金情報は下記から確認できます。

新たな人材層の活用

製造業の人材確保には、従来の採用層にとらわれない柔軟な人材戦略が効果を発揮します。女性が活躍できる職場環境の整備や、豊富な経験を持つシニア人材の活用、そして外国人材の戦略的な採用は、人材採用の幅を大きく広げられるでしょう。


emoji_objects 製造業の人手不足解消には業界特有の課題解決が不可欠

製造業の人手不足は、単なる採用強化だけでは解決できない構造的な課題です。DXによる業務効率化、計画的な人材育成、そして多様な人材の活用を組み合わせた総合的な取り組みが必要です。特に、自動化機器の導入による「職人技」に依存しない標準化された生産体制の構築が、今後の製造業における人手不足解消のカギとなるでしょう。

例えば、缶バッジ製造業界では、自動缶バッジマシンの導入により、人手不足の解消と品質の安定化を同時に実現しています。熟練工の技能に頼らない自動化された製造工程により、人材育成の負担を軽減しながら、一定の品質を保った製品を効率的に生産することが可能です。

バッジマンネットでは、各種マシンとパーツをワンストップで取り揃えており、ビジネスの規模や目的に合わせてお選びいただけます。缶バッジビジネスだけでなく、製造の悩みに対するお役立ちコラムを多数掲載していますので、お困りの際は、ご覧になったうえでぜひお気軽にご相談ください。