近年、アニメ業界において「IPビジネス」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、その具体的な意味やビジネスモデルについては、十分に理解していない方も少なくないでしょう。本記事では、アニメ業界におけるIPビジネスの基本的知識から成功させるためのポイントまでを幅広く解説していきます。

アニメ業界におけるIPビジネスとは

IP(Intellectual Property)とは、知的財産のことで、人間の創造的活動から生まれる無形の財産を意味します。

アニメ業界におけるIPには、アニメ作品そのもの、キャラクターのデザインや名前、ストーリーや世界観、音楽、ロゴなどがあります。これらを総称して「IPコンテンツ」と呼ばれることがあります。

IPは、著作権や商標権といった法的な保護を受けています。IPの所有者が、これらの権利を活用して展開するビジネスを「IPビジネス」と呼びます。IPビジネスには、自社が直接収益を得る方法だけでなく、他社からの利用料で収益を得る方法もあります。

アニメ業界におけるIPビジネスの特徴は、その多様性と拡張性にあります。一つの作品から、放送権販売、グッズ製造、ゲーム化、実写化など、多岐にわたる収益源を生み出すことができます。

日本のアニメ産業市場

日本のアニメ産業は、IPビジネスの成功により着実な成長を遂げています。

一般社団法人日本動画協会の「アニメ産業レポート2023」によると、2022年の日本のアニメ産業市場は約2.9兆円に達し、2013年からの10年間で約2倍になりました。

この成長を牽引したのが海外市場での展開です。海外売上は、この10年間で約6倍に成長し、約1.5兆円まで拡大して今や全体売上の約半分を占めるまでになりました。国内市場と並ぶ重要な収益源として、日本のアニメ産業のグローバル市場での成長を象徴していると言えるでしょう。

参考: アニメ産業レポート2023 サマリー(日本語版) | 日本動画協会 

IPビジネスがアニメ業界で注目される3つの理由

アニメ業界でIPビジネスが注目される理由は主に以下の3点です。

多様な収益源の確保

アニメ作品は、作品そのものだけでなく、実写化や関連グッズ、ゲーム、イベントなど、幅広い展開が可能です。一つの作品から複数の収入源を生み出すことができます。新たに大規模な制作をせずとも、既存の作品の活用だけで収益を上げられます。

ファン層の拡大

人気のアニメ作品は、コアなアニメファンを超えて幅広い層に訴求力を持つことができるでしょう。原作を見たことがない人でも、魅力的なキャラクターグッズやゲームに惹かれることがあります。さらに、デジタル配信の普及により、この訴求力は国境を越えて広がっています。

異なるメディアやプラットフォーム、そして国や地域を通じて、新たなファン層を世界中で獲得できる可能性が大きく広がっています。

長期的な価値の創出

人気のアニメ作品は、放送や公開終了後も長期にわたって価値を保ち続けます。定期的な新商品やサービスの展開、続編や関連作品の制作により、ファンの関心を獲得し続けることが可能です。一つのIPを長期的に活用でき、継続的な収益獲得の機会を得られるでしょう。

アニメ業界におけるIPを活用したビジネスモデル

アニメ業界では、IPを活用したビジネスモデルとして、主に以下の3つの方法があります。

コンテンツ販売 

IP所有者が作品やグッズを制作し、消費者に直接販売することで収益を得る方法です。

例えば、アニメ作品のテレビ放送権や配信権の販売、マンガや小説などの出版物の販売、そしてサウンドトラックの販売が挙げられます。特に、デジタル配信の普及により、グローバル市場へのアクセスが容易になり、コンテンツ販売の可能性が大きく広がっています。

ライセンス販売 

IP所有者が他社に使用権を与え、その対価として間接的に収益を得る方法です。他社がアニメ作品を活用して商品やサービスを提供し、その売上の一部がIP所有者に支払われます。

例えば、キャラクターグッズの製造・販売ライセンス、他社製品とのコラボレーション商品のライセンス、キャラクターを使用した広告・プロモーションのライセンスなどがあります。

ライセンス販売の利点は、IP所有者自身が製造や販売を行う必要がないことです。他社との協力を通じて幅広い商品展開と作品の露出が可能になり、効率的に収益を拡大できます。

ライセンス販売については、以下の記事で詳しく解説しています。

ライセンスビジネスのメリットや注意点を解説 グッズ活用で宣伝効果向上も!

ノウハウ販売

キャラクターデザイン手法の指導、メディアミックス戦略のコンサルティング、海外展開のサポートなどにより収益を得る方法です。新規参入企業や中小制作会社にとっては、成功経験のある企業から知識を得ることで、効率的に自社のIPビジネスを展開できるメリットがあります。

アニメ業界におけるIPビジネスの成功事例

IPを効果的に活用することで大きな成功を収めた事例を紹介します。

「鬼滅の刃」のメディアミックス戦略

「鬼滅の刃」は、マンガ、アニメ、映画、ゲーム、グッズなど多岐にわたる展開で成功を収めました。その鍵は、各メディアの特性を活かしたコンテンツ展開と戦略的なリリースにあります。テレビアニメ放送終了後に動画配信を行い、その後劇場版を公開し、さらにマンガの最終巻を発売するといった段階的な展開が行われました。この戦略は、各メディアでの成功が他のメディアの成功を後押しする好循環を生みだしました。

さらに、獲得した人気を背景に、多くの企業がコラボ商品やキャンペーンにキャラクターを起用したことで、IPの露出が拡大し、新たなビジネス機会の創出につながりました。

「ポケモン」のグローバル展開

「ポケモン」は、ゲームやアニメ、カードゲーム、グッズなど、多角的な展開で世界的な成功を収めています。成功の要因は、巧みなローカライズ戦略にあります。各国の文化や嗜好に合わせてコンテンツを調整しつつ、世界中で統一されたデザインや世界観を維持する一貫したブランディングを行っています。さらに、新しいキャラクターや物語を継続的に追加することで、コンテンツの鮮度を保ち、長年にわたって世界中のファンの興味を惹きつけ続けています。

アニメ業界でIPビジネスを成功させるためのポイント

アニメ業界においてIPビジネスを成功させるためのポイントを解説します。

魅力的なキャラクターとストーリー作り

魅力的で独自性のあるキャラクターの開発が成功に不可欠です。共感を呼ぶストーリーと長期的な展開を見据えた世界観の構築も欠かせません。これらの要素がそろうことで、ファンの心をつかみ、IPの価値を長期的に維持できるでしょう。魅力的なキャラクターとストーリーは、グッズ展開やメディアミックス戦略の源泉となり、ビジネスの可能性を大きく広げます。

独自の魅力を際立たせるブランディング戦略

作品固有の魅力となるキャラクターや作品世界を効果的に伝えるブランディング戦略は欠かせないポイントです。競合との差別化は、長期的なIP価値の維持につながるでしょう。この戦略を成功させるには、まずターゲット層の綿密な分析が重要です。年齢層や興味に応じてメディアを選択し展開することが可能になります。

デジタル技術の活用も見逃せません。VRやARによる没入型コンテンツやメタバース内のイベントなどは、ファンに新しい形の体験を提供し、作品との絆を深める機会となります。

グローバル展開のためのローカライズ戦略

海外市場での成功には、適切なローカライズ戦略が不可欠です。グローバル展開を視野に入れ、言語や文化的背景に配慮したローカライズ戦略の立案が求められます。各国の規制や慣習に合わせたコンテンツ調整と、現地パートナーとの協力が効果的な手段となるでしょう。

権利管理と法的保護の徹底

権利管理と法的リスクへの対応は欠かせません。商標登録などの法的な権利保護を確実に行い、IPを保護することが重要です。また、ライセンス先の選定やガイドラインの策定など、適切な管理体制を整えることで、トラブルを未然に防ぐことができます。多岐にわたる利用形態や関係者間の調整が必要となるため、専門家のアドバイスを受けながら対応するといいでしょう。

アニメ業界のIPビジネス成功には魅力的なコンテンツと適切な戦略が重要

アニメ業界におけるIPビジネスは、一つの作品から多様な収益源を持続的に確保できる有望なビジネスと言えるでしょう。魅力的なコンテンツ作りはもちろんのこと、効果的なブランディングやグローバル市場の可能性を見据えた戦略が重要です。

IPビジネスの展開において、グッズは重要な役割を果たします。その中でも缶バッジは、手軽さと親しみやすさから、ファンの支持を集める人気アイテムの一つです。「バッジマンネット」でマシンやパーツをそろえれば、自社で魅力的な缶バッジの製造も可能です。