製造業における不良対策は単なるコストの削減に留まらず、企業の競争力と存続を守るための重要な活動です。不良の発生を放置し続けると生産性の低下を招き、大きな経営リスクの要因となりかねません。この記事では製造業における不良対策について品質不良によるデメリットや、発生する原因、具体的な取り組み方について解説します。

製造業における品質不良とは?

初めに製造業における品質不良および発生することによるデメリットを解説します。

製造業における品質不良の定義

品質とは、製品やサービスが顧客の要求事項を満たす程度を表すものです。製造業の品質を示す要素として、具体的には以下があげられます。

  • 製品が本来備えている機能や性能がある
  • 設計や仕様を満たしている
  • 使用上の安全性が担保されている

品質不良とは、上記の要素をまとめた品質基準を満たしていない場合を指します。

工場の品質管理については以下の記事でくわしく解説しています。

工場での品質管理と品質保証の違いや缶バッジ生産における品質について解説

製造業における品質不良によるデメリット

◾️コスト増加

  1. 廃棄によるロス
    品質不良品は販売できないため廃棄処分する必要があります。製品製造に使用した材料費や加工するためにかかった人件費や設備費もムダになります。廃棄するためには廃棄物処理業者に依頼する費用がかかります。

  2. 再生産費用
    品質不良品の廃棄を補うために再生産する場合、材料費や加工費が発生します。また生産計画の変更が必要になる可能性もあります。

  3. リコール費用
    市場に出荷された製品に品質不良が発見された場合にはリコールが必要です。リコールには、以下の多大なコストが発生します。

    ・製品回収費用:販売済みの製品を回収するための費用
    ・製品交換費用:回収した製品を良品と交換するための費用
    ・広告宣伝費用:リコール告知の費用
    ・顧客対応費用:リコールに関する顧客からの問い合わせに対応するための費用

  4. 顧客対応費用
    品質不良品を購入した顧客からのクレーム対応には、担当部署の人件費、返金・返品費用や場合によっては補償費が発生することもあります。

ロス削減については以下の記事でくわしく解説しています。

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◾️ブランドや企業に対する信頼の低下
不良品によるクレームの増加は上記で示したコストが発生するだけではなく、ブランドや企業に対する顧客・社会からの信用を低下させます。特に安全上の問題がありリコールを実施する必要が生じた場合には、より売上や競争力に与える悪影響は深刻になるでしょう。一度失墜したイメージを回復するにはかなりの時間を要します。

◾️社内士気の低下
不良品が頻発すると従業員の士気にも影響します。製造現場の雰囲気が暗くなるとモチベーションが下がり、生産性低下を招く恐れがあります。

◾️法令違反によるリスク
製造業においては法令により製品の安全性が求められています。不良の内容によっては、法令違反として罰則を受ける可能性があります。

製造業で不良が発生する原因

製造業で不良が発生する主な原因を紹介します。

ヒューマンエラー

人間のミスによる不良です。製造現場ではさまざまな作業工程があり、それぞれのプロセスでミスが発生する可能性があります。ヒューマンエラーの具体的な例は以下のとおりです。

  • 部品の取り付け間違い
  • 手順書の見落とし
  • 検査ミス
  • 計算ミス
  • 不注意によるミス
  • 疲労によるミス
  • 集中力の低下
  • 経験不足
  • 教育・訓練不足

製造業におけるヒューマンエラーについては以下の記事でくわしく解説しています。

製造業におけるヒューマンエラーとは? 缶バッジ製作現場での事例や対策も解説

材料不良

材料自体に問題があるために発生する不良です。材料に欠陥があったり規格外であったりする場合では、完成品に不良が発生する可能性があります。

材料不良の具体的な例は以下のとおりです。

  • 材料の成分が不適切
  • 材料に傷や汚れがある
  • 材料の強度が不足している
  • 材料の寸法が誤っている
  • 材料の腐食
  • 材料の劣化

作業工程の問題

作業手順や工程、ルール、設備などに問題があるために発生する不良です。作業手順が誤っていたり設備が故障していたりする場合、製品に不良が発生する可能性があります。作業工程の問題の具体的例は以下のとおりです。

  • 作業手順書が誤っている
  • 工程におけるルールの不備
  • 設備の故障・調整不足
  • 作業環境の不備
  • 工具の精度が低い
  • 作業員のスキル不足

製造業における不良対策について

製造業において参考となる不良率と対策を紹介します。

目指すべき不良率の目安

不良率の一般的な目安としてよく用いられるのが「3シグマ」「6シグマ」です。

  • 3シグマ:1000個の製品を製造した場合、不良製品が3つ未満で発生する割合(99.7%)
  • 6シグマ:100万個の製品に3個の不良品が発生する割合(99.9997%)

自動車など安全性が厳格に求められる製品では6シグマ、玩具などでは3シグマが目安とされます。製造内容によって目安が異なるため、自社の事業に適正な目安を設定する必要があります。

不良率を下げる対策

不良率を下げるためには、原因の特定と対策の実行が不可欠です。以下、5つの重要な対策とその詳細を説明します。

◾️原因の把握と周知
工程ごとの不良発生率を分析し、不良発生箇所を特定します。また不良品の詳細な分析から不良の原因を追求し、さらに統計的手法を用いて不良発生の傾向を分析し再発に備えます。

その後分析結果を従業員に共有し、共通認識を醸成しましょう。改善策を示し、従業員が改善活動に参加できる環境を整備することが大切です。

◾️ツールやシステム導入
人為的ミスを減らすために検査や測定を自動化する設備を導入するのも効果的です。ロボットによる作業を導入することで、作業精度と安定性を向上させます。

また、データに基づいた品質管理を実現するためには、品質管理システムの導入が有効です。不良発生の情報を記録・分析し、再発防止に役立てることが可能です。

◾️作業標準化
ムダな工程を排除し、作業をシンプル化することで不良率を低下させます。特に不良発生率の高い工程については、可能な限り見直しを実施するとよいでしょう。作業手順の明確化やマニュアル化をして、誰でも同じ品質で作業できるよう図ります。

また、作業の誤りを防ぐために、ダブルチェックを徹底するのも重要です。チェックポイントを明確化し、確認作業における責任者を明確にしましょう。

◾️教育
品質管理に関する基礎知識やスキルを習得するための研修を実施します。新入社員研修や定期的な研修を実施し、品質意識を向上させることで、不良率を低下させる狙いです。

◾️コミュニケーションとフィードバック
上司と部下、同僚同士が積極的にコミュニケーションを取ることで問題点を共有し、不良品発生の改善策の検討へとつなげられます。改善活動については適切にフィードバックして、現場のモチベーションを高めるようにしましょう。

缶バッジ製作における不良とその対策

ここでは缶バッジを例にあげて、缶バッジ製作における不良の観点と対策を解説します。

缶バッジ製作における不良とは

缶バッジ製作における不良は、大きく分けて以下の5つの種類に分類できます。

◾️印刷の発色

  • ぼやけ:印刷がぼやけていて全体的に鮮明さが欠ける。
  • にじみ:インクがにじんでデザインが不鮮明になっている。
  • 色ムラ:印刷の色が均一ではなくムラがある。
  • 色あせ:印刷の色が本来の色よりも薄くなっている。

◾️レイアウトなどのデザイン

  • 図柄のズレ: 図柄が中心からずれて印刷されている。
  • 図柄のゆがみ: 図柄がゆがんで印刷されている。
  • 図柄の向き: 図柄が正しい向きに印刷されていない。
  • 文字の誤字脱字:文字に誤字脱字がある。

◾️本体

  • 傷や擦れ:本体に傷や擦れがある。
  • へこみ:本体にへこみがある。
  • サビ:サビの発生が見られる。

◾️仕上がり

  • 仕様との不一致:仕上がりが設計内容と一致していない。
  • ピン: ピンが曲がっている、留め具が緩い、固い。
  • 透明フィルム:透明フィルムに傷や汚れ、よれがある。

◾️パーツ

  • サビ:パーツにサビがある。
  • 安全性:パーツが安全基準を満たしていない。
  • 耐久性:パーツが耐久性に欠ける。もろい。

缶バッジ製作の不良対策

◾️印刷品質の見極め
缶バッジの印刷に適した用紙および素材にマッチしたプリンターを選択する必要があります。用紙の厚さや表面加工によって印刷結果が異なり、またプリンターの性能や設定で仕上がりが大きく変わります。印刷の色味や濃度、ムラやズレがないかをこまめな確認が大切です。

◾️不良の出にくい設計やデザイン
曲面を持つ缶バッジの特性を考慮したデザインを設計します。細い線や文字は潰れやすく、また濃い色は印刷ムラが出やすいため、デザインに適した印刷性能であることが求められます。また、シンプルなデザインにする、図柄が欠け落ちないよう配置するといった点も考慮します。

◾️パーツの吟味
耐久性があり、またサビや腐食に強い素材を選択することが大切です。適切に保管された供給元から調達し、自社での保管にも十分に配慮します。劣化を防ぐために古いパーツから使用していくといったルールも必要です。

缶バッジのパーツはデリケートでサビやすいため、品質管理体制が整っている業者を選ぶことが非常に重要です。製造に支障が出ないよう納期を守る業者であるのはもちろん、アフターサービスが充実している業者を選ぶと安心です。

◾️製造設備
特に重要なのが缶バッジマシンの性能です。できるだけ精度の高いマシンを使用し、作りたい缶バッジに合わせた設定にします。円滑な事業運営のためには、定期的なメンテナンスも必要です。

高品質の維持のためには熟練した作業者を配置するのが理想的ですが、作業手順を明確にしたり教育・訓練を徹底したりすることで不良発生を抑制できます。

◾️保管状態のチェック
サビは缶バッジの大敵です。防錆のためにパーツは乾燥した場所に保管し、防錆剤を使用しながら湿度管理を徹底します。長期間保管しないよう適正在庫を心がけ、古いものから出荷する管理体制を整備します。

◾️生産プロセスの最適化
生産プロセスの最適化は製造品質管理において有効で、作業手順を見直しムダな作業を省きます。作業手順を標準化し、品質管理のためのチェックポイントを設けます。

品質管理に関するルールを定め、作業に関連する全従業員に周知および徹底します。また、作業者のスキル向上のために研修し、不明点を即時確認できるようマニュアルを作成します。

製造業の不良対策を徹底して信頼性の強化を

製造業において、製品不良はなんとしても排除したい課題です。改善するためには各現場の課題を洗い出し、それぞれのポイントから具体的な方策を実施していく必要があります。缶バッジ製作においては高品質なマシンとパーツの利用も重要です。シンプルな工程だけに、その選択によって不良の発生率は大きく影響されます。

缶バッジ製作で不良対策にお悩みの際には、高性能なマシンと徹底管理された高品質なパーツを提供するバッジマンネットをぜひご利用ください。